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会社に尽くすかどうかは“お金”次第?

春闘が置き去りにしたもの

2010年3月25日(木)

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 今年の春闘は、不気味なほど“静か”だった。

 主要企業の経営側が3月17日に一斉回答した春闘で、組合側の要求がほぼ通ったのは、「最低限の要求」である定期昇給の確保だけ。ベースアップ(ベア)は見送られ、ボーナスの満額割れも相次いだ。

 かつての春闘といえば、従業員がいるから会社がある、会社のために従業員がいるわけじゃない、とばかりに、赤い腕章をつけ、組合幹部が徹夜で交渉に臨んだものだった。私も新卒社会人になったときなど、ストライキや腕章を付けることを組合から指示され、戸惑ったのを覚えている。自分も組合員になっているにもかかわらず、「組合の活動って、参加しちゃって大丈夫なのかな?」などと心配になるほど熱かった。

 社会保障制度が充実した今、組合の存在意義自体が薄れてしまった、ということもあるのかもしれないし、非正規社員やパートが増え、“株主様”から「組合の存在は株価にマイナス」などと言われてしまえば、熱く戦うだけ損、とも言える。これだけ不景気が続けば、定昇だけでも確保できれば、「仕方がない」と大人の対応をとったほうがいいのかもしれない。

 でも、もう少し熱く闘って欲しかった。

 だって大手で“最低限の要求”しか通らなければ、定昇の制度すらない中小企業では1円たりとも上がらない可能性が高まるわけで。日本の労働人口の7割程度が中小企業に勤める人で占められていることを考えれば、もうちょっと闘ってくれてもよかったんじゃないか、と思うのだ(私は連合と縁もゆかりもないけれど)。

 “お金がすべて”とは思わないし、私たちは金儲けのためだけに働いているわけでもない。目の前の“お金”だけに奔走していると、「働くこと」の真理を見失ってしまうこともある。

 とはいえ誰だって、できればたくさんもらいたい、と思っているし、厳しい状況で企業を支えてくれているのは政府でも社会でもなく、そこで働いている従業員だ。ほんのちょっとでも上げてくれれば、不景気“気分”も改善されたかもしれない、と思うのだ。

 そこで、今回は“賃金”と人間の“気持ち”について、考えてみる。

“高所得者”の賃金満足度が高い、というわけではない

 仕事によって得られる賃金が労働者の幸福感や精神状態に影響を与えることは、古くから世界各地で多くの研究者によって実証されてきた。

 ボーナスが出たときの高揚感。昇進して給料が出たときの満足感。誰もが一度は経験したことがあるだろう。「いつもよりもお金がある」というだけで心が大きくなり高級な店に飲みにいくこともあるだろうし、将来的に賃金が上がると約束されるだけでも安心感を得ることができる。

 そんな「お金で気分は左右される」という、当たり前といえば当たり前のことが、人種、国籍、文化に関係なく、学術的にも示されたのだ。

 ところが、である。賃金に関する研究が広まり蓄積された結果、興味深いことがわかってきた。

 「賃金の絶対的レベル」が、私たちが常識的に考えるほど最重要事項ではなかったのだ。労働者が得た賃金の総額と、その賃金に関する満足感との関係は、“おおむね正の相関がある”けれど、かなり関係が弱いことが明らかになった。

 つまり、世の中の“高所得者”と呼ばれる人たちの賃金満足度が高いかといえば、そんなことはなかった。賃金がさほど多くなくとも、賃金に満足している人がたくさんいて、たくさん賃金を得られれば、賃金に関する満足感が高まるとは限らなかったのである。

 「1000万円稼ぐと、人はそれで満足するかといえばそんなことはない。次は2000万円欲しくなり、2000万円稼げば3000万円欲しくなる。人の金に対する欲求は絶対にとどまることがない」といった発言を、ある新進の企業家がしていたが、“慣れる”という人間の習性は、お金にも当てはまるらしい。しかも、もらっている所得が高額であればあるほど、“金のため”だけに働く人が多くなることも同時に明らかになっている。

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「会社に尽くすかどうかは“お金”次第?」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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