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米国最高首脳が今オウム実行犯に接見する理由

――医療保険改革法以降のアメリカとリチャード・ダンズィグの思惑

2010年3月30日(火)

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 3月21日(日本時間では22日の朝)、米国下院で「医療保険改革法案」が219対212、僅差の賛成多数で可決されました。極めて歴史的な出来事、はっきり言えばバラク・オバマ米大統領の当選以上に大きな意味を持つニュースです。アメリカは世界で唯一「国民皆保険」制度のない先進国でしたが、この法案可決によって、新たに3000万人以上のアメリカ国民が健康保険に加入できることになったのです。逆に言うなら、この原稿を書いている現在、何千万という人々が無保険の状態で老病死苦と直面しているという、日本であまり報じられない合衆国のもう1つの横顔が見えてくるのでもあるわけです。

 そんな報道のある中、今週のどこかの日に米国民主党政権の最高首脳が、小菅の東京拘置所にオウム真理教の実行犯たちを訪ねて、接見に来るという予定の情報が入ってきました。リチャード・ダンズィグ(Richard Danzig)。ビル・クリントン政権の海軍長官で、前回の選挙ではオバマ候補の安全保障担当顧問を務め、現在は新米国安全保障研究所長のポジションにあるアメリカの最高首脳が、オウムの、とりわけ科学者の幹部たちに2度目の接見にやってくるのです。その狙いは何か? 

 ダンズィグ氏は3月18日付け朝日新聞の「オピニオン 私の視点」欄(19面)に「オウムの組織 強さと弱さが不可分に同居」という長文の論考も寄稿しています。今回はこれを引用しながら問題を考えたく、話の取っ掛かりは大きな曲がり角に立つ米国の象徴的事件「医療保険改革法」から検討したいと思います。

「医療保険改革法」の光と影

 医療保険改革法に最後まで反対、抵抗した野党共和党は「同法廃止を掲げて11月の中間選挙に臨む」と挑戦姿勢を明確にし、オバマ大統領は「やれるものならやってみろ」とあくまで強気の構えです。

 ここで、でも皆さん「普通の日本人」の「常識的感覚」からして、ちょっと違和感を持ちませんか? 「自由と平等の国 アメリカ」と、私たち戦後生まれの日本人はお経のように聞かされて育ってきました。<アメリカは明らかな平等先進国、日本の制度は遅れた封建的なもの・・・>、そんなお題目を意識の下に持っている人がおられるかもしれません。少なくとも子どもの頃の私は、そんな印象を持っていました。

 逆に、保険がないために治療費の支払いが不能になって、加療途中なのに病院を追い出されるなんて話を聞けば、大半の日本人は「なんてひどいことを!」と思うのではないでしょうか? また、その救済制度である保険導入に反対する人など、言語道断と思われるのでは?

 ところがどうでしょう、実際には、医療保険改革法に賛成した民主党議員には脅迫が相次いでいる、と報じられています。FBI(米連邦捜査局)が乗り出すなど、にわかに緊張が高まっているという。大統領自身の身辺安全警護も厳重になっているに違いありません。エイブラハム・リンカーンやジョン・F・ケネディのような局面が発生しうる、実は現在が一番危ない時期であると認識すべきと思います。

 自由と平等の国のはずのアメリカで、誰しも平等に医療保険に加入できる法案が今可決されたばかりで、かつそれに賛成した議員の身の危険が案ぜられる・・・脅迫、はさておき、前ブッシュ・ジュニア(ジョージ・W・ブッシュ)政権の与党でもあった共和党側の反対の理由もまた、実は「自由」と「平等」に基づいている、そこから話をスタートしたいと思います。

 ポイントはアメリカの平等は「機会平等」だということにあると思います。

機会平等と自己責任?

 「誰しも平等に勉強するチャンス、仕事をするチャンスが与えられている。そこで何をするのも自由だ。結果的に成功すれば結構、失敗してもそれは自己責任だから仕方がない・・・」

 「医療保険改革法」に本気で反対する人たちは、そのように考えます。「自分たちは様々なリスクも冒しつつ、一生懸命働いて、今の生活を獲得した。そうでない、何もしないで怠けている連中にまで、どうして保険など与えてやる必要があるのか?」といった議論です。つまり「機会平等」と「自己責任」において反対するわけです。ブッシュ・ジュニア時代、自民党で言えば小泉純一郎政権期に進められた様々の諸改革も、この「機会平等」と「自己責任」を原則に進められました(政府には毎年米国から「改革要請」が来ますから、日本の政策も当然影響を受けます)。

 これに対して改革導入派も同じ原理に基づいて反論します。「従来、教育の機会均等が失われ、望む職業に就くことができないなどの差別があった。国民皆保険制度の導入は、医療を受ける機会の均等を、遅ればせながら導入するもので、アメリカ国民の歴史的勝利にほかならない」。

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