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なぜ言えない? 報酬公開できぬ経営者たちの“ヒ・ミ・ツ”

秘密が生み出す疑惑と不信の連鎖

2010年4月1日(木)

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 前回のコラムで、「ひょっとすると、賃金をたくさんもらいすぎて、お金のためだけに働くようになってしまったトップの存在が、いちばんの問題なのかも」と書いたが、どうやら経営者たちの中には、「もらいすぎているかもしれない」とひそかに思い、世間に非難されるのを恐れている人たちがいるようである。

 すでに報道されている話ではあるが、金融庁は「2010年3月期から、1億円以上の報酬を得ている役員の氏名と金額を個別に開示するよう上場企業に義務付ける」と発表した。金融危機を境に株主による経営監視が厳しくなっていることを受け、財務状況にそぐわない「お手盛り支給」を一掃するのが狙いだそうだ。

 ところがこれに経済界が強く反発している。
 日本経団連の御手洗冨士夫会長は、「費用総額や内部統制の仕組みもすでに開示しており、必要にして十分だ。プライバシーや個人情報まで開示する必要はない」と語り、反対の立場を強調。全国銀行協会の永易克典会長(三菱東京UFJ銀行頭取)も、「役員報酬の総額は既に開示してあることから株主・投資家の経営上のチェックも受けている」とし、個別報酬の開示に慎重な認識を示した。

「本当のことは言えない」が本心なのか

 また、東京証券取引所グループの斉藤惇社長も、「冷静になって相当慎重に議論してからでないと、取り返しがつかなくなるようなことも起こるかもしれない」と発言し、

役員報酬を開示する目的をはっきりさせる必要がある。
単に金額を見て、社会的な批判や後向きのアクションが起こるとすれば、それはあまり好ましいことではない。
投資家向けに行ったアンケート調査でも、この情報の有用性について必ずしも明確なコンセンサスがあるようには思えなかった。
日本の経営者の報酬水準は高くない。
個人情報の保護が強調される中、個別の報酬まで開示させるのは矛盾がある。

 などの“反対する理由”を記者会見で挙げた(資料)。

 確かに、目的ははっきりしたほうがいいだろう。だが、それ以外の反対する理由がちっとも理解できない。少なくとも私の感覚と理解度では無理だ。

 社会的な批判って、どんな批判なのか。公開すると、「え~、そんなにもらっているのか!」と世間に批判されるほど、要するに世の中の人が想像している以上に、たくさんもらっている、ということなのだろうか。

 後ろ向きなアクションって、いったい何だろう。「高すぎるからもっと下げろ!」ということだろうか。あるいは、米国で公表を義務付けた結果、「あそこの会社の役員はうちの会社よりも報酬が高い」と賃上げを要求する役員が増えたケースもあったそうだが、そのようなことを危惧しているのか。

 明確なコンセンサスがない? 政府ではなく株主から要求されれば、反対することなく素直に従うということだろうか。

 日本の経営者の報酬は高くない? だったら何ら隠し立てすることなく、「僕たちは、これだけしかもらってないんです」と開示すればいいではないか。

 個人情報保護って? ん? 窃盗集団に狙われちゃうとか、そういうこと? もっと具体的に言ってくれないとよくわからない。

 どうにも釈然としない理由ばかりで、経営者たちが反対すればするほど、秘密にしようとすればするだけ疑心暗鬼になってしまう。

 「何か、やましいことがあるんじゃないか」と疑いの目でみてしまうのだ。

コメント47

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「なぜ言えない? 報酬公開できぬ経営者たちの“ヒ・ミ・ツ”」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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