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「駅伝制」を欠く企業が抱える潜在リスク

歴史上の帝国の「知恵」を、今風に解釈すると・・・

2010年4月16日(金)

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「経営レンズ箱」はこちら(2006年6月29日~2009年7月31日まで連載)

 早くも旧聞に属する話題になってしまうけれど、今年も正月の箱根駅伝は、なかなか面白かった。

 往路を制した東洋大学が、復路優勝の駒沢大学の猛追をかわして、2年連続の総合優勝を遂げたのだが、コース同様、各チームとも山あり谷あり、様々なドラマが起こった。山下りの6区で転倒してしまった中央大学の選手が、起き上がって快走、区間トップとわずか4秒差まで盛り返したり、あるいは、出雲・全日本と合わせて駅伝3冠を狙っていた日本大学が、外国人選手の11人抜きの快挙にもかかわらず、シード権外に沈んでしまったり。私自身、(種目もレベルも全く違ったけれど)中学・高校生の頃は陸上競技少年だったので、ついつい長時間にわたって、テレビ中継を見てしまう。

 よく知られているように、駅伝という競技自体は日本発のもので、1917年に(現在の箱根駅伝の共催者でもある)読売新聞社が主催した「東海道五十三次駅伝競走」がその始まりだとされている。それが、今では国際競技になり、海外でも次第に「EKIDEN」という言葉そのままで通用するようになってきた。

駅伝の原点は「帝国の情報伝達」制度

 ただ、「陸上競技ではない、本来の駅伝」の歴史は、もっともっと古い。

 駅伝というのは、そもそも広い範囲を統治する帝国(国家)が、軍事や国家運営のための情報伝達を目的として構築した制度のことだった。

 まず、重要地点間を最短距離で結ぶ道路を整備する。そのうえで、一定の距離ごとに「駅」を置き、通信使が馬を乗り換えたり、次の通信使に交代したりできるように、馬や交代要員あるいは駅の建物を維持し続け得るシステムも併せて作り上げる。例えば「駅」周辺に住み着き、その維持の任に当たる公務員の制度を作ったり、周辺住民に税の免除と引き換えに、その任に当たらせたり、といった具合だ。また、宿などない時代、公務出張者は、駅で宿泊の便宜を与えられる。

 もちろん、この直線的な道は、通信や公務旅行に用いられるだけではなく、一朝事あった時は、軍が移動する軍事道路となる。

 日本においては、大化2(646)年の「改新の詔」に、(公文書のやり取り、公務旅行の支援のために)“駅馬、伝馬をおけ”と記されている由で、日本の(本来の)駅伝の歴史は律令制度の時代に遡る。

 これは、漢に始まり、隋・唐にも伝わった中国の制度を真似たものだろうが、その実行はなかなか徹底していた。古代交通史の木下良氏の著書(『道と駅』大巧社、『事典日本古代の道と駅』吉川弘文館など)によれば、佐賀県吉野が里遺跡近辺で発掘された古代の道路は、広い部分では幅16メートルもある直線道路で、佐賀平野を16キロメートルにわたって、まっすぐ横切っている。東京都の国分寺、府中近辺でも、幅12メートルに及ぶ道路跡が発見されているとのことで、遠く律令時代に、高度な土木技術を使って、随分と立派な道路が、しかも計画的に国内各地に建設されていたということになる。

 また、当初の制度では、約16キロメートルごとに駅を置く、とされていた。兵庫県の山陽道沿いでは、発掘調査の結果、縦横80メートルの塀を廻らし、その中に複数の建物を擁する駅の遺構も確認されているという。

 ヨーロッパ・中近東の大帝国も、中国よりさらに古い時代から、同様の制度を持っていた。

 星名定雄氏の『情報と通信の文化史』(法政大学出版局)を読むと、古今東西の様々な駅伝制度の話が出てきて、興味深い。古代エジプト、オリエント、アケメネス朝ペルシア、アレクサンダー帝国、そしてローマ帝国と「通信、旅行、軍事」を支える駅伝制度は綿々と伝えられたそうだ。

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「「駅伝制」を欠く企業が抱える潜在リスク」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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