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JAL問題で露呈した、日本の経営者人材の枯渇

“ギリギリの判断”ができる「経営のプロ」が日本企業を変える

  • 岡島 悦子

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2010年4月22日(木)

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 日本航空の破綻は、想像以上に日本に大きな衝撃をもたらしたと私は考えている。前年には学生の就職人気ランキングにも上位に顔を出し、経営環境は厳しいながらも、企業としては超一流と認識されていた会社である。危機が叫ばれるようになって以降、そんな会社から驚くほどの実態が次々と伝えられるに至ったことは、日本のビジネスパーソンにとっても大きなショックだったと思う。だが実は私には、その後の日本航空の動きにも、ショックは続いていた。

 法的整理に向かった日本航空の再生は、企業再生支援機構の手に委ねられることになった。そして、その難しい再生の先導役のCEOに就任したのが、京セラ名誉会長の稲盛和夫さんである。この人選に関しては、マスメディアも含めて異論はほとんど出なかった。交通インフラ産業の経験がないことは指摘されたが、それほど大きな声にはならなかった。

 あれだけの債務超過の会社、あれだけの機構の資金、さらには政策投資銀行の資金までもが入り、しかも説明責任も出てくるとなれば、そうそう引き受けられる人はいないことはわかる。政財界から厚い信頼があり、まったくのゼロから京セラという世界的企業を作り上げた実績を考えれば、この方以上の適任者はいらっしゃらないと私も思う。

なぜ、もっと候補者が出なかったか

 だが、それを承知で敢えて言わせていただくならば、人材ビジネスを生業としている立場、かつ数々の再生局面の企業に経営者をご紹介してきたプロの立場から申し上げれば、これほどの大変な再生が、今年78歳になられた大先輩にお任せするしかなかったのか、という思いはやはり消えない。

 限られた時間軸の中での意思決定とは言え、これほどの複雑かつ大型な再生案件ならば、もっと数多くの候補者が、中にはもっと若手の候補者が数多くリストアップされるべきではなかっただろうか。

 これが米国ならば、再生経験豊富なターンアラウンド・マネジャー、航空業界出身の経営コンサルタント等、経験業種・職種・年齢・性別・国籍の多様な属性のプロがリストアップされ、各選択肢の賛否が議論されただろう。経営課題の優先順位と再生の時間軸を考慮した上での最適な経営者(あるいは経営者の組み合わせ)はどういうタイプなのかの議論と精査が、もう少しじっくりとなされてもおかしくなかったのではないか、と思うのだ。

 再生には体力も気力も必要である。ましてや日本航空となると、その大変さは想像を絶するものではないだろうか。40代、50代でも経験豊富な候補者がいたならば、選択について異なる見方も生まれたかもしれない。それでもその上で「やはり稲盛さん」ということであれば、納得度はさらに増したと思う。しかし、それはできなかった。なぜなら、日本には、日本航空の経営を任せられるような候補者がほとんどいなかったというのが現実だからである。

 日本には「経営のプロ」が育っていない。日本航空の破綻は、はからずもそんな日本のお寒い現状を、世界に知らしめることになったのではないかと私は思っている。もちろん、稲盛さんという世界に誇る経営者がおられたことは事実である。しかし、他には説得力のある候補者がまったく出てこなかったのだ。悲しいかな、これが日本の現状である。そしてそれは、日本にとって極めて危ないこと、なのである。

コメント58件コメント/レビュー

40代50代の人材が育たないのは、年功序列の人事制度が原因で、日本の大手企業では30代にマネージメントを学べる環境が無いからに他ならないと思います。経済的な環境や部課長制や権限の曖昧さのシステムの問題でないと思います。(2010/04/28)

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40代50代の人材が育たないのは、年功序列の人事制度が原因で、日本の大手企業では30代にマネージメントを学べる環境が無いからに他ならないと思います。経済的な環境や部課長制や権限の曖昧さのシステムの問題でないと思います。(2010/04/28)

1990年代前半に33歳のGreg BrennemanがPresident and COOとして低迷していたコンチネンタル航空を見事に立て直した話と対象的ですね。経営のプロになるには、若いときから実際に経験を重ね、自分のマネジメントスタイルを確立するしかないのではないでしょうか。(2010/04/27)

この視点はとても大切だと思います。ただ;■社外経営者が偉業を成し遂げた例は多くありますが、財務内容が悪化した企業の立て直しは、まま処方箋が作りやすい上に、社内のしがらみがない分、実行も容易なアドバンテージがありますよね。で、センセーショナルな成功事例に目を奪われがちですが、それら成功事例の"ハロー(光背)効果"や社外経営者のアドバンテージ効果を調整した上で、生え抜き経営者との能力比較を記事にしてもらえたらなと思うのです。■経営者労働市場出身の米経営者が必ずしも経営の立て直しやその後の運営に成功していないとする論文がHBRなどにも出ていますが、それら実証研究に対するキチンとした反論も聞いてみたいです。・ちゃんとした学術研究の成果も踏まえて客観的に述べていただけると、一読者としては納得できるからです。今後を楽しみにしてます。(で)(2010/04/27)

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三品 和広 神戸大学教授