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無駄張りがない「規律ある経営」の限界

「抜け道」や「自由度」をどう担保していくか

2010年4月23日(金)

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「経営レンズ箱」はこちら(2006年6月29日~2009年7月31日まで連載)

 忙しさにかまけて、ついつい後回しにしてしまうのだが、きちんと時間をとって健康診断を受ける度に、その効用に感心させられる。特に、生活習慣から来る様々な「過剰」「無駄」の見える化と、そこからもたらされる「規律」のパワーだ。

 もちろん、様々な病気の早期発見につながるという直接的効用もあるが、中性脂肪や悪玉コレステロールといった健康リスクにつながる「過剰」や「無駄」が数値化され、過去数年のデータと比較して、その間の生活習慣の問題点が明らかになる。何よりも、「正常値」という名で許容範囲がモノサシとして示されているので、分かりやすいこと、この上ない。

 当然、医師からは“教育的指導”が行なわれ、少なくとも健康診断後しばらくの間は、鯨飲馬食を控えて運動量を増やす、軽い筋トレも取り入れて代謝を改善するといった具合に「規律ある生活習慣」を心がけることになる。きちんとした「規律」さえ保てば、存外に悪かった数値がスムーズに下がっていくことを何回も経験した。

 「正常値、許容範囲」というあるべき数値目標が、「規律」を生み、「規律」が健康体に向かわせてくれるというわけだ。

 まあ正直なところ、その「規律」とて、時を経るとついつい緩んでしまい、1年おき、あるいは2年おきに、元の木阿弥になって、また健康診断で事実を突きつけられる、というプロセスを繰り返しているのが、私の問題なのだけれど・・・。

強まる期間収益へのこだわり

 さて、言うまでもなく、個人にとってだけでなく、企業にとってもリスクにつながる「過剰」や「無駄」を防ぎ、筋肉質で健康な企業体質を作るということは極めて重要だし、そのためには「規律」が必要となる。

 多くの日本企業は、バブル後、3つの過剰(資産、負債、雇用)からの脱却に努めてきた。そして、ここ10年ほどの間は、過去の反省に基づき、無駄な投資(ヒト、モノ、カネ)を防ぎ、不採算事業をこれ以上作らない、という「規律」ある経営プロセス作りとその定着に腐心してきたと言えよう。

 中でも、投資決定のルールとプロセスは、長足の進歩を遂げた。ROI、ROA、IRR、EVA・・・アルファベットのオンパレードだが、こういったモノサシと数値目標が意思決定プロセスに組み込まれ、投資に対する「規律」は、ずいぶんと強まってきたように見受けられる。

 さらに、事業部門ごとに毎期の収支やキャッシュフロー目標をきちんと達成させるという意味で、コーポレート部門による「規律」を強めた企業も数多い。期間収益へのこだわりは強まる一方だし、予算策定へのコーポレートによる介入も増えた気がする。

 また、他企業のベンチマーキングも、多くの場合、「規律」強化につながった。生産・在庫・物流、研究開発、あるいは本社間接部門のコストマネジメント。様々な領域で、ベストプラクティスが探求され、それに追いつくために新たな「規律」が導入される。

 一般論で言えば、これはたいへん結構なことだ。「規律」の導入に当たっては、具体的な日々の仕事の中にそれを埋め込んでいくことが必要だが、これは「カイゼン」が得意な日本企業にとっては、ある意味、お手のものだったろう。「カイゼン」を経営の広い範囲に広げることで、「規律ある経営」を実現しようとしてきたと言ってもよい。

 しかし、ダイエットや運動療法同様、経営における「規律」も、一歩行き過ぎると大きなリスクを生じさせることになる。さらに、現在は、経営環境の不確実性が高まるとともに、海外競合企業の「戦略的投資」に押されるという状況が増えており、単純な「規律」導入の危険性はより一層大きくなっていることに、気づかなければならない。

カイゼンだけでは「革命」は起こせない

 クルマのEV(電気自動車)化、モジュラー化。消費財の「ど真ん中」マーケットの新興国シフト。環境、金融など数多くの分野での大きな規制・ルール変更。非連続な変化が起こりつつある分野は枚挙にいとまがなく、これらについては、将来予想がものすごく難しくなりつつある。

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「無駄張りがない「規律ある経営」の限界」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長