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これって、本当に“命を守る”改正?

改正労基法をメディアが報道しない不思議

2010年4月22日(木)

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 「仕事と生活の調和を大切に。」というキャッチフレーズの下、改正労働基準法が4月1日から施行された。

 労働者の残業を減らすのが最大の目的とされる今回の改正には、有給休暇の取得を促進するとの期待もあり、企業の職場は働きやすいものへと“変わるらしい”。

 “変わる”と言い切らずに、“変わるらしい”と書いたのは、「本当に働きやすくなるのか?」と疑問に思うからだ。

 労働基準法といえば労働者を守る法律であり、働くだけでなく生きていくためにも大切な法律だ。にもかかわらず、これまでメディアは改正労働基準法についてほとんど報じていない。

 地方自治体などが自主的に企業の人事担当者などを対象とした勉強会を開いたりしているようだが、当事者であるビジネスパーソンには積極的に知らされてはいない。ともすれば、彼らを苦しめる方向に向かう可能性もあるのに、である。

 そこで今回は『改正労働基準法』について、考えてみる。

改正労働基準法の3つのポイント

 まず今回の改正のポイントは、次の3つに分けられる。

(1)月60時間を超える残業に対する賃金の割増率の引き上げ
(2)残業時間に応じた代替休暇の取得
(3)年次有給休暇の時間単位の取得

 これまではどんなに残業をしても一律25%以上だった賃金の割増率が、月60時間を超える残業については50%以上に引き上げられた。ちなみに改正されるのは残業時間のみで、休日労働の割増率(35%以上)や深夜労働の割増率(25%以上)は変更されていない。

 今回の改正の“目玉”とされているのが、(2)の代替休暇の取得だ。

 これは、残業時間の“対価”を、おカネではなく休暇としてもらう制度である。事業場内で労使協定が結ばれれば、60時間を超える時間外労働を行った労働者は、改正法による引き上げ分(従来の25%以上から50%以上に引き上げた差分に当たる25%分)の賃金を受け取る代わりに、有給休暇を取得することができる。

 例えば、時間外労働を月76時間行ったとしよう。60時間を上回る16時間に対する割増賃金のうち、今回の改正による引き上げ分(=25%)については、「16時間×0.25=4時間」分の有給休暇に代えられる。ただし、改正前からの割増率(=25%)分の賃金の支払いは依然として必要だ。さらに、労働者が実際に有給休暇を取得しなかった場合には、割増率50%の賃金の支払いが必要となる。

 この有給休暇で代替する制度を盛り込んだ背景について、厚生労働省は「残業代の支払い負担が増えることによって、事業が立ち行かなくなることを避けるため」としている。

 最後の(3)は、これまで1日単位が原則だった年次有給休暇の取得を、5日を限度に時間単位で分割して取得できるようにするものだ(ただしこれも事業所内で労使協定を結んだ場合に限られる)。

 時間単位での取得を可能にすることで、介護や子育てなどにうまく利用できれば、と考えたらしい。

 既にパナソニックや大日本印刷では、労使が有給休暇の時間単位取得で合意した。一方、トヨタ自動車では、「残業代は働いた分をきちんと賃金でもらうもの」として、労働組合側が代替休暇の取得を見送った。

 問題は、今回の改正が適用されるのは大企業だけである点だ。中小企業は今回の改正法施行の3年後をめどに適用を検討することになっている(中小企業かどうかは資本金の額または常勤の労働者の人数で判断される)。

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「これって、本当に“命を守る”改正?」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト