• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

職人が燈し続けた英知の灯

――ファラデーが見た「和ろうそくの科学」

2010年4月27日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 みなさんは「ロウソクの科学」をご存じですか?

 イギリスの生んだ大科学者マイケル・ファラデー(1791~1867)が1861年のクリスマス休暇に、ロンドンの王立研究所で行った連続6回の講演を書物に直したのが『ロウソクの科学』(原題『The Chemical History of a Candle』です。一般の読者向けに科学書として世界的、歴史的な不朽の名著で、日本でもファンは少なくありません。しかし、この中で日本の伝統的な職人の技を、ファラデーが科学者の観点から高く評価していたことは、必ずしも今日、日本国内で広く知られていないのではないかと思うのです。

 今回は、元来は「職人シリーズ1回目」として長崎で教会建築に先駆的な業績を残した棟梁建築家、鉄川與助氏(1879~1976)関する対論を予定していましたが、校正の日程から連休明け以降の掲載とさせていただくことにし、内容面はやはり同じ志向で、ファラデーのお勧めに従って日本の職人の英知を検討してみたいと思います。もし連休中にこの記事をご覧になる方がおられ、ご興味いただけ、かつお家にお子さんがおられましたら(私の雑文はどうでもよいので)、ファラデーの原著を親子で楽しんでいただければ嬉しいと思いながら、とり急ぎ新しい稿を準備してみました。

ファラデーが気づいた「和ろうそく」の工夫

 ファラデーは『ロウソクの科学』第六講の冒頭にこんなことを書いています。三石巌氏訳(角川文庫)から引用して紹介してみましょう。

第六講 炭素すなわち木炭・石炭・呼吸および呼吸とロウソクの燃焼との類似・結び

 この講演にご出席くださっておいでの一婦人が、かたじけなくもこの二本のロウソクを私にくださいました。これは日本からとりよせられたものであります。(中略)ごらんのとおり、このロウソクはフランス製のものよりも、もっと高度に装飾されております。その見かけから判断いたしますと、これはぜいたく品かと想像されます。ところでこのロウソクにはいちじるしい特徴があります。それはすなわち穴のあいた芯をもっていることであります。

(マイケル・ファラデー著 三石巌訳『ロウソクの科学』 pp.141、 角川文庫)

 ファラデーは「日本のロウソク」には「穴のあいた芯をもっている」という「いちじるしい特徴がある」と書いています。この講演が行われたのは1861年、日本は幕末期つまり江戸時代のことです。この年70歳になっていたファラデーが76歳で亡くなったのが明治元年のことですから、ここで言う「日本のロウソク」は間違いなく「和ろうそく」を指しているはずです。

 「和ろうそく」の「芯」に「穴があいている」という事実、皆さんはご存じでしたでしょうか? またそれがどうして「いちじるしい特徴」になるのでしょう?

 ファラデーは上の部分にすぐ続けて、以下のように記しています。

 これはアルガンが石油ランプに応用して、その価値を高めたみごとな工夫と同じものであります。

 (マイケル・ファラデー著 三石巌訳『ロウソクの科学』 pp.141、 角川文庫)

 アルガンが石油ランプに応用した工夫? それと同じものを、江戸時代の和ろうそくは持っていた?? 一体これはどういうことなのでしょうか?

そこで実際に和ろうそくを見てみることにしましょう。

和ろうそく各種(左)。確かに「穴」が開いている!(右)

 手作り和ろうそく各種の写真を示してみました(左)。これをひっくり返してみると・・・確かにどれも、穴が開いています(右)。ファラデーが指摘したのと同じ特徴が、21世紀の和ろうそくにも受け継がれているようですが・・・これがどういう役割を持っているのでしょうか?

コメント9件コメント/レビュー

非常に面白かったです。ただ、伝統通りの手作りを賛美する姿勢はちょっと考えどころですね。生産性の向上という発想そのものを持たなかったということですから。(2010/05/02)

「伊東 乾の「常識の源流探訪」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

非常に面白かったです。ただ、伝統通りの手作りを賛美する姿勢はちょっと考えどころですね。生産性の向上という発想そのものを持たなかったということですから。(2010/05/02)

「ロウソクの科学」は大昔に読みましたが、和ロウソクのことは忘れていました。ただ、和ロウソクのすばらしさを否定するつもりはありませんが、ちょっと腑に落ちない面もあります。拝読すると、空気の穴を空けることによって炎にゆらぎが生じ、「かぎろい」という効果を生んでいる、それがすばらしいのだということのようですが、実際にはロウソク立てに立てて使うはずですから、穴はもともと塞がれてしまうのが自然なのではないでしょうか。ロウソクしかなかった時代を想像すると、ロウソクの炎は揺らめきなどせずに静かに明るく照らしてくれるほうがありがたかったはずです。大切なのは火力が強いこと、つまり強い照度が得られることであって、和ロウソクはそれを、芯を太くすることによって実現したところにすばらしさがあるのです。芯が空洞になっているのは、芯の燃えかすを少なくするための知恵だと思います。ファラデーも「なんとよく燃えることでありましょう」とは言っていますが揺らぎがすばらしいとまでは言っていなかったと思います。(2010/04/30)

私はマイケル・ファラデーの『ろうそくの科学』を読んだことはありませんが、その著者名と書名を、懐かしく記憶にとどめています。というのは、子供の頃になんども繰り返し読んだ『心に太陽を持て』という本の中に、マイケル・ファラデーの少年時代のエピソードが紹介されていたからなのでした。マイケル・ファラデーは、少年時代には貧しくて、ずいぶんと苦労を重ねて学者になったのですよね。実はこの『心に太陽を持て』という本の中には、別の章で、パリの通りでひっくり返った馬を助ける日本人紳士のエピソードが出てきます。彼は、その行いを誇るでもなく、名乗りもせずに人ごみに消えてゆきます。ファラデーが敬意を払った日本人は、果たして今も健在なのでしょうか。でも、ご紹介いただいたご婦人の佇まいは、我々が最も誇りに思うべきものかもしれませんね。自分の仕事への姿勢も問われたような気がする記事でした。ありがとうございました。(2010/04/29)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

面白い取り組みをしている会社と評判になれば、入社希望者が増える。その結果、技能伝承もできるはずだ。

山崎 悦次 山崎金属工業社長