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中国の寡占支配が招くレア・アース供給危機

2012年に日本の成長産業の命運が決まる?

  • 谷口 正次

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2010年5月7日(金)

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 2010年3月17日、アメリカでコロラド州選出の下院議員であるマイク・コフマン(Mike Coffman)が、「RESTART=Rare Earth Supply-chain Technology and Resources Transformation Act of 2010 H.R.4866」という法案を議会に提出した。

 法案の要旨は次のようなものである。

レア・アース(希土類元素:REE)は中国が97%の市場を占有しているばかりか、2012年には中国の輸出余力がなくなる恐れがあり、米国の国家安全保障上非常に危険なことである。米独自のサプライ・チェーンを構築するため、早急に連邦政府主導でREE政策の実行機関を設け、横断的なワーキング・グループを編成するべきだ。

 アメリカがREEの供給障害を国家安全保障上の問題として真剣に心配し始めたわけである。なぜなのか。

 次のような理由をRESTART法案の中で述べている。

(1) REEがなければ、レーダーとかソナーのシステム、高精度誘導兵器、巡航ミサイルそしてレーザーといった多くの近代高性能兵器が作れなくなり、国防上由々しき問題。
 
(2) 次世代自動車のモーターとバッテリー、高効率電球、太陽光パネル、風力タービンといった再生可能エネルギー技術にはREEが不可欠。輸入石油依存度を減らすという米国のエネルギー政策上の問題。

原鉱石の輸出を禁止した中国

 REEは、化学的性質が似ている17種類の希少金属元素からなる。これらは、軍需産業に必要なだけではなく、“先端産業の魔術師”とも言われ、主として日本に技術的優位性がある成長産業にはなくてはならないものである。

 例えば、ハイブリッド電気自動車に搭載するハイブリッド・バッテリーには、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ディスプロジウム(Dy)、テルビウム(Tb)、ランタン(La)、セリウム(Ce)。コンピューターのハードディスクや携帯電話、カメラには、ネオジム、プラセオジム、テルビウム、ディスプロジウム。エネルギー効率が高い照明には、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、テルビウム、ランタン。光ファイバーには、ユウロピウム、イットリウム。光学ガラスには、ランタン、セリウム、ユウロピウム。こんな具合である。

 これらREEの需給が次第にタイトになってきており、関連業界では危機感が広がっている。中国は、原鉱石の輸出は既に禁止しており、精製して高純度のレア・アース酸化物(REO)あるいはレア・アース・メタル(REM)にして輸出している。

 輸出は政府の割当制で、割当量の推移を見ると、年々減少して2005年を1とした場合、2009年は0.6に減っている。一方、中国の内需が2005年の3万8000トンから急増して2007年には7万トンになり、その後も増え続け、2012年には13万5000トンになると予想されている。

 しかし、もともと希少資源であるため、鉄鉱石や銅鉱石のように大規模に採掘するようなものではないので、大幅な増産は期待できない。しかも、採掘・精製に際しての環境汚染が問題になっている。従って、2012年には世界のREO総需要18万5000トンに対して約5万トンの不足が予測されている(米モリコープ・ミネラルズ=Molycorp Mineralsによる)。この5万トン分を中国以外で生産できなければ、日本をはじめとする輸入国はハイブリッド電気自動車も風力発電タービンも作れなくなる。

 ただし、中国はマーケットを支配していても埋蔵資源量では、世界の30%強を占めるに過ぎず、資源としてはアメリカ、豪州、カナダ、グリーンランド、南アフリカにもある。しかし、問題は2012年までに生産開始できるかということである。今のところ、米国カリフォルニア州のマウンテン・パス(Mountain Pass)とオーストラリアのマウント・ウエルド(Mount Weld)の2鉱山が2012年後半を目指して開発準備を進めているが、「実際の生産開始は2014年になるだろう」とも言われている。

安売りでマーケットを席巻

 それでは、埋蔵量は世界の30%に過ぎない中国が、コフマン下院議員が指摘するように、どうやって世界の97%のマーケットを握ったのか。

世界のレア・アース酸化物(REO)生産量推移(1950~2006)
(出所:USGS=アメリカ地質調査所)

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