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episode:53
「がんばったけど80点しか取れませんでした、というのは仕事ではあり得ない。」

  • 阿川 大樹

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2010年5月11日(火)

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前回までのあらすじ

老舗 大日本鉄鋼の3人だけの部署、第三企画室は新会社オルタナティブ・ゼロとして独立した。旭山隆児(あさひやまりゅうじ)は社長、風間麻美(かざまあさみ)は第三企画室室長、楠原弘毅(くすはらこうき)は次長だ。風間のプロジェクトは、オートバイの整備をするガレージ村。そこにやってきたカメラマン進藤は、風間の元彼だった。

【登場人物の紹介はepisode:zeroをどうぞ】

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「飛ばしすぎるなよ」

 旭山隆児はバルコニーから京浜工業地帯を見ている風間麻美の背中に声をかけた。

 ガレージ村が本格的にスタートして、風間のエンジンは全開になっている。部下が輝いているのを見るのはうれしいものだ。けれど彼女がつくため息を聞く回数も増えている。息を止めて全速で泳いでいる心が、水面で酸素を求めているようだ。

 東の景色を見ていると、西に傾いた太陽が照らし出す建物のコントラストが美しい。

「すっかり定位置を取られちまったな」

 そういうと振り返った風間が笑顔を返す。

「すみません。バルコニーは旭山さんのとっておきのリラックススペースでしたね。旭山さん、最近、タバコおやめになったんですか?」

「特にやめるつもりはないが、値上げに備えて減らしてる」

 話を合わせたがそれは正確ではない。以前ほど身体がタバコを求めなくなったのだ。

「健康的でいいじゃないですか」

「まあな」

 高校生の時からタバコを吸っている。習慣性があってやめるのが難しいといわれているタバコを、身体が求めなくなっている。それがほんとに健康的なのかどうかわからない。なんにせよ、時間は人の心も体も変える。自然にできるところは自然にすればいい。

「久しぶりに野毛、行くか」

「絶好のタイミングでわたしが断れない誘いを……」

「抜け駆けすると楠原が怒るかな」

「彼、近ごろ、オフィスに居着きませんからね。ちょっとふっきれて自分の方向が定まったみたいで」

 ガレージ村のスタートのために駆り出されていた手伝いから解放されて、彼は彼で湾岸の物件を探しに飛び回っている。

「日本のアポロシアターを作りたいんです」

 楠原はそこに戻っていた。

 一週間の「出社禁止」からそろそろ一年になる。

 ガレージ村も、その時、風間がバイクで千葉に出かけたことから始まっている。楠原も散々迷いながら、結局、元に返って音楽を基本に据えてみることに落ち着いたようだ。

コメント3件コメント/レビュー

仕事は100点しかない。理想はそうかもしれないが、現実にはありえない。まるで査定を低くする大義名分のようだ。(2010/05/13)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

仕事は100点しかない。理想はそうかもしれないが、現実にはありえない。まるで査定を低くする大義名分のようだ。(2010/05/13)

毎週楽しみにしています。先週はお休みで残念でしたが、1年を越えての展開楽しみにしてます。私も昨年39歳の誕生日に40歳までに何かするという目標を立てたのですがあと3ヶ月で40歳になります。先のコメントされた方と同じく最後の発言にドキリとしてしまいました。周りやアイデアはどんどん変わって終始動いているのに自分が動かないんですね・・・はぁ(2010/05/11)

最後のセリフにドキッとします。そんなことはしょっちゅう、いや、毎日思ってるものでして・・・。(2010/05/11)

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