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「チーム・スワン」が会社の声価を高めた

日立製作所《前編》

  • 高嶋 健夫

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2010年5月20日(木)

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 こと「組織の中で働く」という視点で考えると、「人事管理に最も困難を伴うのは聴覚障害のある人たちではないだろうか」――障害のある当事者を含めて、障害者雇用に関わっている企業人や専門家に取材すると、こうした意見をよく耳にする。

 障害者の実情に詳しくない人には、これは意外な見解に感じられるかもしれない。耳は不自由でも、目は見えるし、自由に歩くこともできるので、手話や筆談でカバーし合えば、仕事に大きな支障は生まれないように思えるからだ。

 確かに、一般に「人が得る情報の9割は目から入っている」などと言われる。IT(情報技術)が進化した昨今では、重要な社内情報はイントラネットで共有され、業務上のやり取りもメールで自由にできるようになっているから、目が見える聴覚障害者が特別に不利となる場面は少ないはず。緊急の連絡も、携帯メールで対応できる。車いす使用者のように電車通勤ができないといった移動に伴う障壁(バリア)もない。

 ところが、「聞こえない」ということは、日常的な社内コミュニケーションに深刻な問題を生む。会議に出ても、たとえ手話通訳があったとしても、微妙なニュアンスまでは伝わらず、話し合われている内容が十分に理解できないことも多い。特にブレーンストーミングのような自由な討議の場だと、丁々発止のやりとりに追いついていけない。普段の職場の中でも、同僚たちが何気なく交わす簡単な会話や雑談が分からない。

 こうしたインフォーマルなものを含めた「日常的な情報」が十分に入ってこないことが、実は、「組織で動く」うえで大きなバリアになってしまうのだ。

 聴覚障害の本質とは、「コミュニケーション障害」であると理解されている。白杖を持っている視覚障害者や車いす使用者とは違って「外見からは分からない障害」であることが、周囲の人たちの誤解を生むこともあり、問題をいっそう複雑にし、“情報の孤島化”を加速する。せっかく企業に就職しても、周囲に溶け込めないまま、孤立感を深めていく聴覚障害者が実は多い、とも言われているのだ。

 今回は、日立製作所をケーススタディの場として、そうした「コミュニケーションの壁」に立ち向かいながら活躍する聴覚障害のある社員の姿を追う。

 ろうの人(聴覚障害者)たちのコミュニティの間では、日立製作所はたいへん評判のいい会社の1つである。ろう者に対する独自の接客対応・情報提供サービスを展開していることがよく知られており、「聴覚障害者に理解のある会社」という声価がすっかり定着しているのだ。

 そんな高い評価の原動力になっているのが、「チーム・スワン」と名付けられた「手話案内サービス」の専門チームの存在だ。聴覚障害のある社員による、聴覚障害のある顧客のための営業(販促支援)部隊である。

 スワンとは、「日立を手話(SyuWa)で案内(ANnai)する」という意味。2005年6月、当時横浜にあったショールーム「日立ユビキタススクエア横浜」に誕生し、同ショールームを拠点に、聴覚障害のある消費者向けの手話案内サービスを提供してきた。

聴覚障害のある社員が結成した営業部隊

 チーム編成は、男性6人、女性3人の計9人。毎月1回、日立ユビキタススクエア横浜で地デジ対応の薄型テレビやハードディスク・DVD録画機の機能説明など、手話による新製品紹介のプレゼンテーションを実施。そのほか、新製品の展示即売会など自社の販促イベントや「国際福祉機器展」などの一般の展示会での販促・接客支援活動を展開。さらには、全国各地の特別支援学校(ろう学校)での児童・生徒たちとの交流会など、CSR(企業の社会的責任)活動にも積極的に取り組んできた。

 ユニークなのは、その編成・運営方法。専従スタッフはチームリーダーの男性社員1人だけ。残りのメンバーは、日立グループの各社・各部門に点在する聴覚障害のある社員に声をかけて選抜した。つまり、それぞれが本業を抱えながら、普段の仕事と並行して「チーム・スワン」の仕事を担当するという横割りのプロジェクトチーム方式で編成したのである。

 運営面でも、どのような手話サービスを提供するかは、企画の立案から実際の展開まで、すべてメンバーとなったろうの社員たちに思い切って任せた。相手の反応がその場でビビッドに伝わってくるエンドユーザーとの触れ合いの場は、聴覚障害のある社員たちに大きな刺激を与えることになった。そのことが結果的に、彼らのやる気を引き出し、ろうのコミュニティに対する「日立の顔」としての自覚と責任、やりがいを促し、チームの活動を活性化することに大いに役立った。

 こうして、「チーム・スワン」の活動は次第に日立グループ全体に広く知れ渡るようになり、翌2006年7月に開催した独自イベント「日立u VALUEコンベンション」では、同チームの呼び掛けに応じてメンバー以外の社員たちも応援に参加。ろうの社員29人と手話のできる健聴の社員13人の合計42人の一大部隊が編成され、聴覚障害のある来場者にきめ細やかな手話案内サービスを実施した。

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