「すべては倉庫番が知っている」

vsアマゾン、物流で挑む楽天の算盤勘定

世界に類を見ない「分散型」の体制を目論む

バックナンバー

2010年5月18日(火)

1/3ページ

印刷ページ

 楽天が物流インフラの整備に本腰を入れる。

 約8000坪の倉庫スペースを千葉県市川市塩浜に確保した。物流不動産開発のプロロジス(東京都港区)が所有する汎用型物流施設「プロロジスパーク市川I」の4階で、アマゾンジャパン(東京都渋谷区)の「アマゾン市川フルフィルメントセンター」とは目と鼻の先だ。

 今年3月に100%出資で設立した物流子会社の楽天物流が新センターの運営に当たる。同社は5月中に倉庫業および貨物利用運送業の申請を済ませ、仮想商店街「楽天市場」の出店者を対象とした物流事業を開始する。

全国の出店者の物流をネットワークする

 これまで楽天は、物流機能をアウトソーシングやアライアンスで手当てしてきた。自社で在庫を抱えることも避けてきた。

 2008年5月には楽天市場の出店者のフルフィルメント(注文充足)を代行する「楽天物流サービス」を開始したが、その運営は楽天と業務提携を結んだ全国各地の協力物流会社への委託。

 自社で通販事業を運営する楽天ブックスにしても、出荷処理や在庫の所有は取次大手の日本出版販売(日販)に頼っているのが現状だ。

 しかし今後は新センターに楽天ブックスの物流機能を移管し、売れ筋の書籍に関しては楽天自身で在庫を所有する形に改める。

 そして新センターの配送エリアとなる首都圏では、注文を受けたその日のうちに消費者に商品を届ける当日配送を年内にも開始する。

 今後は市川と同様の機能を備えた自社センターを、大阪をはじめ他の主要都市にも展開し、当日配送エリアを拡大していく計画だ。

 さらには楽天市場に出店する約3万2000店の通販会社と全国の消費者を結ぶ、大規模なBtoC(企業−消費者間)物流のネットワークを整備する。

 アマゾンをはじめ従来のBtoC物流は巨大な物流センターに在庫を集め、自動化設備を駆使して受注から出荷までの作業を集中処理する体制を取ってきた。

 しかし、楽天市場の出店者は全国に分散している。しかも、地方の名産品やこだわりのあるニッチ商品を売り物とするロングテール型の小規模店が多い。

 身近に在庫を置いて常に商品と接していたいというニーズが強く、商流と物流を分離してしまうとマーチャンダイジングに支障を来しかねないとの懸念がある。

 そのためアマゾン流の中央集権型の物流インフラが、楽天市場には馴染まない。そこで従来とは全く異なるアプローチを採ることにした。

 大都市の大規模センターとは別に、ネット通販専用の中規模センターを全国に配置し、各拠点間を幹線輸送便で結ぶ分散型の物流ネットワークを整備する。その概要は以下の通りだ。

 まずネット通販会社を規模別に3つに区分する。楽天ブックスを含む大規模店は消費地の大型センターに在庫を置いて、楽天物流がフルフィルメントを処理する。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント1 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

大矢 昌浩(おおや・まさひろ)氏

1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部大学院修了。日経BP社発行「日経ロジスティクス」記者、流通専門誌編集長を経て99年、ライノス・パブリケーションズを設立。2001年4月に「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」創刊。同誌の編集発行人として現在に至る。2004年4月〜2007年3月、多摩大学大学院客員教授を兼務。



このコラムについて

すべては倉庫番が知っている

原材料の調達から工場での加工、店舗までの配送と、企業や産業のあらゆる活動を“裏方”として支える物流。ここからは、表層からはうかがい知れない経営や経済の動きが浮かび上がってくる。そこから見えてくる課題は、単なる物流改善に伴うコスト削減にとどまらず、企業に構造改革を促すテーマである。10年以上も物流業界を取材してきた筆者が、“倉庫番”だから知り得る日本企業の実像をリポートする。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン