• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「クラウド」を手話でどう表現するか

日立製作所《後編》

  • 高嶋 健夫

バックナンバー

2010年5月27日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前編から読む)

 手話アニメーションソフトの開発、「チーム・スワン」による手話案内サービスの提供といった取り組みを通じて、日立製作所で聴覚障害のある社員のリーダー格になっている田中英之さん。彼が今、一番力を入れて取り組んでいるのが、「字幕放送」への理解の促進だ。来年7月に迫った地上デジタル放送への完全移行をにらみ、「テレビの字幕表示機能の必要性を、もっと知ってもらいたい」と、社内外に向けた啓発活動を続けている。

 字幕放送とは、ちょうど字幕付きの外国映画を見る時と同じように、ニュースやドラマなど様々なテレビ番組の日本語の音声を文字に起こして画面に表示するもの。クローズドキャプションと呼ばれる方式で送られるため、通常は画面に現れないが、字幕の受信設定を「入」または「オン」にすれば、すぐに表示される。

リモコンの「字幕ボタン」に託した思い

 現行のアナログ放送でも同じ機能はあるが、字幕放送を見るにはテレビ本体とは別に数万円もする専用チューナーが必要になるため、あまり普及していない。しかし、デジタル対応のテレビチューナーでは字幕受信機能が標準装備されており、視聴者は気軽に楽しむことができるようになっている。

 国や各放送局でも「情報バリアフリー」推進の一環として、音声ガイド(副音声)放送や文字データ放送とともに、こうした「字幕付き番組」の普及に取り組んでいる。制作コストの問題もあり、まだまだ字幕化される番組の数は十分ではないものの、これまでテレビの視聴に大きな制約があった聴覚障害者にとっては、間違いなく朗報と言える。

 ところが、である。デジタルデバイド解消の大きな一歩であるはずの字幕放送の重要性について、「世の中ではほとんど関心を持たれていないのが現状です」と田中さんは嘆く。家電メーカーや販売店の人たちにすら十分には認識されていない。それどころか、肝心の聴覚障害のある人や高齢者など恩恵を受けるユーザーの中にも、字幕放送に関する知識や情報を持っていない人が多いのだ。

画像のクリックで拡大表示

 田中さんは販促イベントなどでの手話案内サービスを通じて、字幕放送の利便性を消費者サイドに広報する一方で、消費者ニーズを探り出し、社内の関係部署に「人に優しいテレビの実現」を訴え、より字幕放送が利用しやすくなるようにユーザビリティー(使い勝手)を改良してもらう働きかけを粘り強く続けている。

 そんな啓発活動から、小さな製品改良も実現している。リモコンのボタン配置の工夫である。薄型テレビ「Wooo(ウー)」シリーズには「かんたんリモコン」と名付けたユニバーサルデザインに配慮した新型リモコンが採用されている。

 中央部の目立つところに「字幕」と表示した専用ボタンが配置されている。これは日立独自のアイデアだ。他社製品では、様々な付随機能の1つとして「メニュー」ボタンの操作で字幕設定を行うようにしていたり、独立した字幕ボタンがあっても「使用頻度の低い機能ボタン」としてリモコンカバーの内側に格納していたりするものがほとんど。

 田中さんの企画提案から生まれた成果の1つが、この「字幕ボタン付きのリモコン」なのである。

「周囲の日常会話が分からない」のが困る

 ところで、田中さんは普段、健聴者とはどのような方法で会話しているのだろうか。

 基本的には「読話」と「発語」である。つまり、相手の話は唇の動きを読んで理解し、自分は声を出して普通の言葉で話して伝える、というスタイルだ。ただ、相手の言葉が読み取りにくいこともあるし、自分の発した言葉が相手に聞き取ってもらえないことは当然ある。そこで、「筆談ボード」を用意し、必要な時にはお互いに筆談で言葉を補い合いながら話を進めるようにしている。

 今回のインタビューも、手話通訳は入れずに、事前に主な質問項目をメールで送っておいたうえで、筆談ボードを使いながら相対で行った。慣れてしまえばどうということもないが、何の制約もない健聴者同士が話をする場合に比べれば、やはり、お互いに神経を使うことは確かだ。

 そこで改めて「人とのコミュニケーションで苦労すること」を聞いたところ、このような“フェース・トゥ・フェースの対話”よりも、「周囲の人たちの日常会話が分からないことが、実は一番困る部分ですね」という答えが返ってきた。

「障害者が輝く組織が強い」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授