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episode:55
「たった三人のこの会社には、愚痴や弱音を聞かせられる同僚がいない。」

  • 阿川 大樹

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2010年5月25日(火)

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前回までのあらすじ

老舗 大日本鉄鋼に旭山隆児(あさひやまりゅうじ)が呼び戻され、第三企画室が設置され1年が過ぎようとしていた。独立した新会社オルタナティブ・ゼロでは旭山社長のもとで第三企画室室長 風間麻美(かざまあさみ)、次長 楠原弘毅(くすはらこうき)がそれぞれ忙しく働いていた。旭山はふたたび油壺でミーティングを開いた。

【登場人物の紹介はepisode:zeroをどうぞ】

 雨上がりの大岡川の桜並木は新緑に輝いている。

「つらい」

 狭い窓から緑の帯に挟まれた川を見下ろしながら、風間麻美は声に出してそういった。

*  *  *

画像のクリックで拡大表示

「ガレージ村で木工の職人も使ってもらえませんか」

「いずれはそういう時が来ると思っているけど、今はむずかしいなあ」

 楠原弘毅の不意の提案に、麻美は反射的に答えていた。

「どうしてもだめですか。山城さん、困っているみたいなんです」

 彼のいう「山城さん」とは、ギターのリペアをやっている山城ギター工房のオーナーのことだ。

「いったいどういうこと? 旭山さんに、ガレージ村のビジネスモデルから離れて、楠原君なりの別なアイデアを見つけろって言われたでしょう。それでミュージシャンの登竜門になるような〈日本のアポロシアター〉をつくるための調査をしているんじゃないの」

「ええ、もちろん、それはちゃんとやってます。それをないがしろにしているつもりはありません」

「じゃあ、なぜ」

 問い詰めている。やばいなあ。つい語気が強くなっている。

「この週末に、修理に出していたギターをやっと取りに行ったんです」

「あれ? それってずいぶん前の話じゃない?」

「部品が手に入らなかったというので、予定より時間がかかったのは確かなんですけど、それでも二か月前にはできたという連絡をもらっていました。ところが僕の方が忙しくなってしまって、全然、取りに行くことができなくて」

「ごめんなさい。ずっとガレージ村の準備を手伝ってもらっていたから」

「いえ、仕事ですから、大事なプロジェクトのスタートですから、それはしょうがないんです。ただ、情けないことに土日はぐったりしてしまうことが多くて、やっと洗濯だけ片づけて着る物を確保するのが精一杯って感じで」

 それは自分にとっても同じだった。

「とてもじゃないけど花小金井まで出かける元気がなくて……」

 申し訳ない。心の中でもういちど謝った。

「長い間、ギターがなくて寂しかったんじゃない?」

 柔らかく接しなくてはと言葉を選んだ。

「いえ、ギターはもう一本ありますから、弾く楽器に困るわけじゃないんですけど。で、この土曜日にやっと行ったんです。そしたら……」

 コーキ君の顔がゆがんだ。

 草食系の彼が感情をそんな形で顔に出したのは、初めてのことだ。

「どうしたの」

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