これまでのあらすじ
ヒノハラの社長、団達也のシンガポール大学時代の親友、ジェームスは上海の投資会社で新しいスタートを切っていた。イギリスのエジンバラ投資会社をクビになり、上海を新天地に選んだのだ。
上海では、やはり大学の同窓であるリンダが「李団有限公司」という自身の会社を立ち上げ、達也との自動車部品ビジネスを実現するための準備をしていた。
リンダは、アメリカの大手電子部品会社UEPCにいたが、ASEANがこれからの世界の中心になると考え、ここを本拠地にしていた。
達也のビジネスモデルは、「金子順平が開発した製品を日本で量産し、上海にあるリンダの会社に輸出。リンダは親戚一族のルートを使って、中国の主要メーカーに販売する。資金はジェームスの会社に出資を頼み、3年後をメドに株式公開する」というものだった。
上海 ジェームスの事務所
ソブリンリスク。それは外国国家に対する融資におけるリスクのことだ。つまり外国の政府や政府関係機関が発行する国債や政府保証債などの債券を買っても、その国家が破綻してしまえば、これらの債券は紙くずになってしまう。ユーロ圏では為替リスクはなくなった。だが、その分、ソブリンリスクが増大して牙をむいた。
ドイツは国債の空売り禁止、金融取引への新たな課税など金融規制を一段と強化すると表明し、アメリカでも金融規制改革法案が可決され、金融機関の高リスク事業を制限する方向がはっきりしてきた。
欧米での金融規制強化の流れが、投資家のリスク回避姿勢に拍車をかけた。たしかに規制をすれば経済が立ち直るわけではない。だが、国家は企業とは違うのだ。企業は破綻すれば、法的に処理して、それで終わる。
だが、国家はそうはいかない。破綻国家のまま存続しなくてはならない。そこには、貧困という無間地獄が待ち構えている。
そしていま、世界経済は歴史的転換点のまっただ中にある。
(いまは様子を見るしかない。それにしても、日本は大変だな)
と、ジェームスは考えている。
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