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教育に「2つの信念」を持てるか

新しい日本型中流社会と教育システム(その1)

2010年5月28日(金)

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「経営レンズ箱」はこちら(2006年6月29日~2009年7月31日まで連載)

 様々な場で、教育について議論し、考えさせられる機会が続いている。といっても、教育関係者と教育問題を語るというのではなく、ビジネスや行政のリーダーの方々と「これからの日本のあり方」について議論する中で、結果として、教育について多くの時間を割くというパターンだ。

 先週も、早稲田大学主催の「第一回CEOラウンドテーブル(早稲田会議)」という催しに参加し、論客ぞろいの経営者の方々と議論させていただいてきた。この場でも教育に関する論点に相当の時間が費やされた。「日本のあり方」についての種々の議論の場で、毎回同じようなことが起こり、「理系離れへの対応」から「観光立国を担う人材育成」に至るまで、実に多種多様な教育改革の話題が出てくる。

 こういった議論を通じて、私自身は教育について、(あくまで「日本のあり方」を考えるという文脈でだが)我々自身が「2つの信念」を持てるようになるかどうかが、最重要の視点だと考えるようになった。

 1つ目は、「教育が中流社会へのキップになる」と信じられるかどうか。そして、2つ目は、「教育が国の競争力拡大につながる」と信じられるかどうか。この2つは、コインの裏表のようなもので、相互にリンクしている。少し前までの日本では、この相互リンクの構造が実際に存在し、多くの人々はそれを信じることができていた。今からなすべきことは、この相互リンクの再構築であり、それに資する教育改革だと考える。

「昨日より今日。今日より明日」の感覚

 日本が抱える数多くの問題を解決していくうえで大事なのは、「一言で言えば、何を目指していくのか」をはっきりさせることだと思っている。

 問題点を数え上げ、それを解決していくためのチャレンジを考えていくことだけを繰り返していては、疲れてしまう。何より、民主主義社会の中で、痛みも甘受しつつ、構造的な問題を解決していくためには、「この先に何があるのか」について、多くの人が共有できるシンプルなイメージが必要だろう。

 本来は、これこそ政治の仕事だと思うが、それを待っていても仕方がないので、あえて挙げさせていただけば、私自身のその「一言」は、「新しい日本型中流社会構築」だ。

 ここで言う中流社会とは、社会において中位の所得を得る層が大多数を占める、という意味だけではない。自分自身が一定の努力(と若干の運)によって、より良い暮らしができる。自分の子供たちに、きちんと教育を受けさせれば、同様に努力と運次第ではあっても、自分の世代よりも良い暮らしができる。こういう「昨日より、今日。今日より明日が、良くなる」という感覚を多くの人が共有する社会が、私の「中流社会」の定義である。

 バブル崩壊の影響が日本の社会の広い範囲に及ぶより以前、具体的には1990年代初頭までは、上述したような「中流社会」感覚が、高度成長期から連綿と続いていたように思える。高度成長期に家計所得が目に見えて増えていったこと、その結果、消費が増加し、様々な耐久消費財が一般家庭に普及していったことなどから、前向きの変化実感が生まれ、それが将来への希望として共有されていた。

 もちろん、この背後には、日本が欧米先進国以外で初めて、工業化社会を作り上げたことがある。原料を輸入し、半製品や最終製品、中でもグローバル市場での競争力が高い工業製品を作り、輸出する。そして、そこで働く人々が付加価値の配分を受けて、より高い所得を得るようになる(当然、彼らが内需を生む原動力にもなる)。

 工業製品の中でも、電機や自動車といった分野は、関連産業の裾野も広く、その分野の競争力の強さが、幅広い層の国民の所得増につながる。非常に単純化したモデルだが、要は、これがこれまで日本の中流社会を成り立たせてきた根幹だといってもよかろう。

工業化は教育あっての成果

 そして、この工業化社会作りを可能ならしめた重要な要素が、教育の充実だ。工業化社会は、工場労働者として、そして、それを支えるホワイトカラーとして、「読み、書き、そろばん」を身につけ、やるべきことを規律正しく実行できる労働者を大量に必要とする。さらに、QC(品質管理)活動に代表される「カイゼン」型競争力を維持・向上していくためには、「自分で考え、分析し、解決策を提案する」能力がある人々が必要だ。

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「教育に「2つの信念」を持てるか」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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