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「通勤できる人は募集していないんですよ」

沖ワークウェル《前編》

  • 高嶋 健夫

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2010年6月3日(木)

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 この連載でも何度となく触れてきたように、情報通信技術(ICT)の発展は障害者の就業環境を劇的に変化させた。ICTを活用することでコミュニケーションが円滑になり、情報の共有化も進んだ結果、障害のある人が本来持っている能力を発揮し、活躍できる場が大きく広がった。

 ICTを活用した究極の就労形態が、「在宅勤務」いわゆる「テレワーク」と言えるだろう。今はどこに住んでいてもパソコンとブロードバンド(高速大容量回線)さえあれば、わざわざ会社に通勤しなくても、自宅にいながらにして多くの仕事がこなせるようになっている。それゆえ、テレワークは障害者の雇用機会拡大の切り札となる新しい就労形態として期待されているのだ。

 とはいえ、課題も残されている。家にいる社員の仕事ぶりをどのように管理・評価するか、あるいは孤独感を感じないようにどのようにケアし、モチベーションを高めていくか。そうした人事管理上の難しさから、テレワークの推進に二の足を踏む企業も多い。

 そんな中、「障害者のテレワーク」に事実上特化した異色の経営を行っているのが、沖電気工業の特例子会社、沖ワークウェルだ。5月現在、全従業員55人のうち44人が障害者で、全体の約65%に当たる36人(健常者1人を含む)が在宅勤務者という社員構成になっている。同社の取り組みから、テレワークの可能性と普及に向けた課題を探る。

 JR田町駅にほど近い東京・芝浦。沖電気のグループ企業が集中立地する同社ビジネスセンターの一角に建つ「2号館」に、沖ワークウェルの本社がある。といっても、オフィスは2階のワンフロアだけ。見回しても社員は数人しか確認できない静かなオフィスだ。なるほど、確かに“誰も会社に来ない会社”のようだ。

 同社は沖電気工業の障害者雇用のための特例子会社として2004年4月に設立。ウェブサイトの作成、データ入力などのパソコン関連作業、ポスターなどのグラフィックデザイン制作や名刺作成を主な業務にしている。44人いる障害のある社員の内訳は、上肢・下肢に障害がある人35人、視覚障害者1人、知的障害者5人、内部障害者3人。このうち、33人の肢体障害者と2人の内部障害者がテレワーカー(在宅勤務者)だ。

 これらテレワーカーの居住地域は、北は東北から南は九州まで全国に分散している。首都圏在住者が3分の2を占めているが、そのほかは、宮崎県に6人、鹿児島県、大阪府、兵庫県、長野県、静岡県、福島県に各1人などとなっている。

全社員が揃うのは年1回の懇親会だけ

 これらの在宅社員を含めて、全社員が顔を合わせるのは、年に1度、東京本社で開催する社員懇親会の時だけ。首都圏在住以外の社員は、これとは別に地域別の懇親会が年1回開かれるが、それでも年2回しか会社の幹部や同僚たちと直接顔を合わせる機会はないという。

 通常のテレワークでは、週に1度とか、少なくとも月に1度くらいは「出社日」を設定し、社員と会社の役員・管理職、あるいは社員同士がお互いに顔を合わせるようにしている企業が大半だろうと思われる。出社日は「会社との絆」を確認するための大切な業務と考えるのが一般的だ。ところが、沖ワークウェルではそうした一定の出社を義務付けるような決まり事は一切ない。

 会議や打ち合わせなど日常業務のために誰かが特別に出社することも、「最近ではよほどのことがない限り、まずありませんね。そもそも出社する必要性がないんです」。立ち上げの時から同社の仕組み作りと運営に参画し、5月21日付で新社長に就任した津田貴さん(取材時点の肩書きは取締役総務部長)は、何事もないかのように平然とこう断言した。

 「当社では、通勤できる人は募集していないんですよ。雇用対象にしているのは、通勤が困難な重度の障害者だけ。そうした人たちに働く場所を提供することが、私たちの企業ミッションだと考えているんです」。同社をゼロから作り上げ、同日付で勇退して「統括コーディネーター」に就任した前社長の木村良二さんは、笑顔でそう語った。

実用性を優先し、音声通話に絞る

 社員数が100人に満たない中小規模の会社でこれだけ多数のテレワーカーを抱えているところは、障害者雇用という枠を外して考えても日本ではまだ珍しい存在だろう。しかも、社員にはほとんど会社に来ることを求めない。そんな夢物語のような雇用形態が本当に可能なのだろうか。

 それを実現させたのが、同社が独自開発した「ワークウェルコミュニケータ」と名付けた在宅就労支援システムだ。長年培ったテレワーカーの管理ノウハウをベースにして、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の助成金と沖電気本社の研究開発部門の技術支援によって実用化したものだ。

 その特徴をひと言で表現すれば、「音声に特化した多地点・双方向のコミュニケーションシステム」である。在宅の社員のパソコンと会社のサーバー・パソコン群をブロードバンド(高速大容量回線)で常時接続することで、多地点をつなぐ安価な音声コミュニケーションシステムを実現させた。

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