「岡島悦子の「経営のプロが足りない」」

米国でなぜメガベンチャーが登場するか

「経営のプロ」活用を仕組み化してベンチャーが世界的規模の企業に

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2010年5月27日(木)

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 JALの再生問題で改めて気づかされることになった、日本には「経営のプロ」が足りないということ、しかし、その一方でカルロス・ゴーン社長による日産の再生に代表されるように、その存在意義を認識している人は日本では決して少なくない、という話をした(関連記事:「 JAL問題で露呈した、日本の経営者人材の枯渇」「日産が日本人に建て直せなかった理由」)。では「経営のプロ」とはどのような人たちなのか。どう育てられているのか。第3回、第4回では、「経営のプロ」市場先進国である米国のケースを取り上げて解説してみたい。

企業経営に特化したスキルを持つプロフェッショナル

 ここでまず「経営のプロ」について改めて定義をしておきたい。「経営のプロ」とは、経営メンバーやそれをサポートするプロフェッショナルとして、その企業の経営課題を抽出し、経営資源を采配し、経営課題の解決をすることで確かな結果を出す人のことである。既にいくつかの企業を成功裏に導いた経営実績があり、その知見の汎用性が高く、他の企業での課題解決においても高い成功確率を想定できるという意味で、プロフェッショナルなのである。

 従来の日本企業に多く見られた既存のビジネスを成長させる「調整型のリーダーシップ」ではなく、ゼロベースから事業を立ち上げ拡大させたり、市場を積極的に開拓したり、大きな戦略転換を実行したり、といった「変革のリーダーシップ」を備えた人材である。

 「経営のプロ」と言われるからには、結果を出すことが求められる。経営の定石を知っていることは、もちろん重要だ。それに加え、その企業固有の組織文化や人材の質を読み取り、内部環境に適応したリーダーシップ・スタイルで、社内人材を実行へと動かしていかなければ、実績など上がらない。外部招聘された外様人材にとっては、極めて難易度の高い仕事である。

 欧米ではずいぶん前から、この「経営のプロ」と呼ばれるビジネスパーソンが存在していた。彼、彼女らは、営業や経理などのプロフェッショナルと同じく、企業経営に特化したスキルを持つプロフェッショナルである。ひとつの会社に終身雇用されるという発想は持たず、能力を生かせる場所を求めて自由に動いていく。

ベンチャーがなぜメガ企業になれたか

 こうした「経営のプロ」をうまく活用し、産業界に大きなダイナミズムを生み出している国がある。それが米国である。最もわかりやすい例は、シリコンバレーのベンチャー企業群だろう。今や世界的に知られるようになったインターネット企業、ヤフーやグーグルも、かつては小さなベンチャー企業だったのである。

 ヤフー、グーグルいずれも、スタンフォード大学の学生が起業したベンチャーだが、創業者が今もCEOを務めているわけでは実はない。創業者は早い段階で、外部の「経営のプロ」へと、その経営をバトンタッチし、企業としての急拡大を委ねてきたのだ。そしてこの取り組みこそが、小さなベンチャー企業を世界的な規模へと押し上げた大きな原動力になったことは、日本でもよく知られているだろう。おそらく創業者ではなしえなかった経営を、「経営のプロ」が実践してくれたから大きな成功につながったのである。

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著者プロフィール

岡島 悦子(おかじま えつこ)

岡島 悦子ヘッドハンター。三菱商事、ハーバード大学MBA、マッキンゼーを経て、2002年グロービス・グループの経営人材紹介会社立上げに参画。2005年より代表取締役。2007年独立、プロノバ設立、同、代表取締役就任。
PE・VCファンド投資先の経営者DD、経営チーム強化コンサルティング等、人材・組織開発に関する株主・経営者のディスカッションパートナーとして豊富な実績を持つ。
経営共創基盤アドバイザー、Globis Capital Partnersアドバイザー、グロービス経営大学院教授。
ダボス会議から「Young Global Leader 2007」に選出されるほか、総務省、内閣府委員等を歴任。
リーダーシップ、キャリアに関する講演多数。著書に『抜擢される人の人脈力』(東洋経済新報社)等。



このコラムについて

岡島悦子の「経営のプロが足りない」

 日本には「経営のプロ」が育っていない。日本航空の破綻は、はからずもそんな日本のお寒い現状を、世界に知らしめることになったのではないか。もちろん、稲盛さんという世界に誇る経営者がおられたことは事実である。しかし、他には説得力のある候補者がまったく出てこなかったのだ。悲しいかな、これが日本の現状である。そしてそれは、日本にとって極めて危ないこと、なのではないか。
 本コラムでは、さまざまな観点から「経営のプロ」について詳しく語っていきたいと考えている。経営の現場に携わる者として、評論家的ではなく、経営のプロを取り巻くリアリティーをお伝えしていきたい。「経営のプロ不在」と嘆いているばかりでなく、短期間に「経営のプロ」のプールを醸成する方法についても提言していきたいと思っている。時に生意気なことを語らせていただくこともあるかもしれない。だが、何より日本の今後を思ってこそ、である。お付き合いいただければ幸いである。

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