「「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」」

第34話「残念なことに外注先の犠牲の上で利益を上げているという噂がある」

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2010年6月2日(水)

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これまでのあらすじ

 日豊自動車の専務である湯浅は、社長の松田義一に、アジア出競争力を持つ、低価格のガソリンエンジン車を開発せよと命令されていた。条件は「材料費割合70%、粗利率30%でリッター25キロ以上走れる車。販売価格は50万円台」という無理難題に近いものだった。

 さらに湯浅は、高校時代の恩師、金子尚三が電話で言ったことを確かめる必要があった。

 購買部の山田部長が、無駄な投資と無駄な在庫を、一次下請けであるヒノハラに強要していたというのだ。湯浅は山田に電話をかけ専務室に呼んだ。

 経理部長の細谷真里は、社長の団達也に言われて国際会計基準のIFRSにのっとって決算書を作成していた。真里は初めて勉強するIFRSの概念がこれまで勉強してきた会計の考え方と違っていることに戸惑っていた。

日豊自動車購買部

 「明日8時にそちらへ行く」

 購買部長の山田克美にとっては、専務である湯浅に直接電話がかかってきて呼び出されただけでも“大事件”なのに、自分に会いに購買部のある川崎部品センターまで足を運ぶと言うのだ。

 あまりに唐突な申し出に山田は心配になってきた。
 もちろん購買部長という立場上、やましいことが全くないとはいえない。会社では禁止されている盆暮れの付け届けや、プライベートなゴルフの誘いがあれば、断ることはしない。

 だが、そんな些細なことで会社に迷惑をかけたことはないし、そもそもせっかくの好意を断る方が無礼ではないか、と山田は思っている。しかも、納期遅れや欠品は断じて許さないし、コストダウン要求は歴代の購買部長の中で最も厳しく、協力会社に恐れられている。

 (オレはこの会社に必要な人間なんだ)
 山田は自分に言い聞かせた。

 翌朝、川崎にある部品センターの玄関前に、黒塗りの社用車が止まった。
 湯浅は車を降りると、山田の部屋に直接向かった。

 「専務。こんなに早くお着きになるとは思ってもいませんでした」

 と言うと、山田は読みかけのゴルフ週刊誌をあわてて閉じて、そっと机の引き出しにしまった。

 「きみの担当は金属部品の購買だったね。ここに来る前に調べたんだが、きみの部門ではコストダウンも計画通りに進んでいるようだし、欠品もほとんどないというじゃないか」

 「部下のおかげですよ」
 山田は作り笑いをして答えた。

 「今回のプロジェクトでもきみの力に期待しているんだ」
 やっと安心したのか山田は安堵の表情を浮かべた。

 「私も、キックオフミーティングで社長と専務のお話を伺い、やる気がわいてきました。ガソリン車も捨てたものではありませんからね」

 すると湯浅は「そこなんだが」と言ってこんな話を始めた。

 「きみの考えは間違いではない。だがね、社会の流れは完全に電気自動車(EV)だよ。トヨタ自動車もEVに本格的に参入したしね」
 それはトヨタがアメリカのベンチャー企業へ約45億円出資した話を指していた。

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著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」

 主人公の団達也は、シンガポール大学ビジネススクールで学んだ後、恩師の経営コンサルタント、宇佐見秀夫の薦めで中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。達也は、当時専務の間中隆三らによる不正が常態化、粉飾決算が行われていた。経理課長に就任した達也は、経理部員の細谷真理とともに数々の不正を明るみに出し、間中らを追放した。
 経理部長になった達也は、ジェピーCFOとして会社の再建に着手した。その直後から隠れ負債が発覚し、工場には仕掛かり在庫の山。資金繰りに窮したジェピーは、銀行からも見放され倒産寸前だった。
 ジェピーを救ったのは、かつての級友、ジェームス。ジェピーは、同じく級友のリンダが勤めるアメリカの大手電子部品会社UEPCの傘下に入って新たな道を歩み出した。
 創業者未亡人の大株主、財部ふみの遺言で達也の手にはジェピーの株式が渡ることになったが、達也はそれを手放し、自分の手で会社を立ち上げようと決心した――。
 管理会計が専門の現役会計士である著者による、“読む管理会計”シリーズの第3弾。ストーリーを追いながら、経営に役立つ管理会計の最新の理念と実践的な知識が身につきます。
第一シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」
第二シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理部長、団達也が行く」

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