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カイゼンで能力を引き出す――知的障害者の戦力化《前編》

日本理化学工業

  • 高嶋 健夫

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2010年6月21日(月)

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 知的障害のある人たちの「働く場」をどう確保していくかは、社会全体が取り組まなければならない喫緊の課題だ。とりわけ、最大の雇用の受け皿となるべき民間の企業セクターにとっては重い宿題と言える。厚生労働省によると、2009年6月現在、法定雇用率1.8%を義務付けられている従業員数56人以上の民間企業で働く知的障害者は5万6835人。漸増傾向にあるとはいえ、約22万人と推計される18歳以上の在宅の知的障害者の4人に1人程度しか企業で働いていない計算になる。

 今回は、「知的障害のある人をどのように雇い入れ、戦力化していくか」というテーマについて、2つの事例から考える。

 1つは、川崎市高津区に本社を置くチョークメーカーの日本理化学工業。ベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』(坂本光司著、あさ出版)で紹介され、鳩山由紀夫前首相が昨年視察に訪れたことで一躍有名になった中小企業だ。今から50年前に知的障害者の採用を開始し、現在では全社員77人のうち、57人が知的障害者という驚くべき雇用率を実現している。そこには、どのような「経営の仕組み」があるのだろうか。

 もう1つは、関西を地盤とする中堅ドラッグストアチェーンのキリン堂。同社は「地域コミュニティーに根付いた店作り」という視点で、近隣の福祉施設と連携し、大阪府枚方市の店舗で知的障害者に就業実習の場を提供する試みを昨年から始めている。

 業種業態も、就業形態も、実践している手法も全く異なる両社だが、「企業は何をやるべきか、何をやらなければならないか」という明確な理念を持っている点は共通している。

 「ここは日本の正しい町工場だ」――。

 東急田園都市線二子新地駅から徒歩で約15分、多摩川との合流点にほど近い平瀬川の護岸に建つ日本理化学工業の本社工場。主力製品である「ダストレスチョーク」の生産ラインに一歩足を踏み入れた途端、こんな感想が脳裏に浮かんだ。

知的障害のある社員に任せる工場

 整理整頓が行き届いた清潔な工場で、配属されている12人の社員が黙々と作業をこなしている。いずれも知的障害のある社員で、一応、ラインの管理を担当する健常の社員はいるが、常駐はしていない。日常的に彼らの作業を監視したり、アレコレと指示を出したりすることも全くないという。完全に任せているのである。

 「集中力を乱されることを嫌がる人が多いのでは・・・」と少し緊張しながら遠慮がちに見学させてもらったのだが、そんな心配は杞憂だった。多くの社員がこちらに気づくと、「こんにちは」と明るく挨拶してくれた。

 中小企業の取材を30年以上続けてきた筆者は、会社の善し悪しを判別する2つの指標を体験的に持っている。それは「清潔な工場」と「従業員の元気な挨拶」だ。この2つが揃っている会社は、ほぼ例外なく「良い会社」である。それは優良企業に共通する特徴であり、景気変動などによって業績に多少の浮き沈みがあったとしても、経営基盤がしっかりと安定しているかどうかを鏡のように映し出す。日本理化学工業には、確かにそれがあった。だから、直感的に「正しい町工場」だと思ったのである。

 日本理化学工業は1937(昭和12)年に設立したチョークの専門メーカー。炭酸カルシウムを原料に、粉が飛散しない無害のダストレスチョークを初めて国産化することに成功し、53年には唯一の文部省斡旋チョークに指定された。現在の資本金は2000万円、年商は約5億5000万円で、その70%をチョークの売り上げが占める。

 川崎市の本社と北海道美唄市に工場があり、2010年5月現在、従業員数は77人。そのうちの74%に当たる57人が知的障害のある人で、さらにその約67%の38人が重度障害者である。本社工場には46人、うち知的障害者33人が勤務している。

 知的障害者の雇用を日本理化学工業が始めたのは1959年の秋。当時は専務だった現会長の大山泰弘氏が、東京・世田谷の青鳥(せいちょう)養護学校の先生の熱心な訴えに応え、2人の卒業予定者を短期間の就業実習で受け入れたのがきっかけだった。

 「仕事が見つからなければ、この子らは一生施設で暮らすことになる。正規雇用が無理なら、せめて彼女たちに“働くこと”を体験させてやってほしい」という先生たちの言葉に動かされ、働いてもらったところ、一生懸命に頑張る姿に従業員が感動。社員の間から「正式に雇ってあげてほしい。私たちが必ず面倒を見るから」との声が上がり、1960年春に正式採用に踏み切った。

 最初の2人が段々といろいろな仕事をこなせるようになると、その後任として次の卒業生を迎え入れる。そんなステップ・バイ・ステップの方法で、少しずつ採用数を増やしていった。採用の条件は「4つの約束」を守ること。

コメント5件コメント/レビュー

知的障害者でなくても飲酒や暴走、よそ見などで危険な運転をする人はいる。下のコメントをしている人は、明らかに知的障害者を差別している。なぜこのような知的障害者に対する無理解・悪意のこもったコメントを放置するのか。(2010/06/21)

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いただいたコメント

知的障害者でなくても飲酒や暴走、よそ見などで危険な運転をする人はいる。下のコメントをしている人は、明らかに知的障害者を差別している。なぜこのような知的障害者に対する無理解・悪意のこもったコメントを放置するのか。(2010/06/21)

この会社の社会的貢献、社長以下の尽力、優れた経営判断には、敬意を表します。しかし、冷静に資本主義の厳しい競争下において、健常者よりも賃金が安い(推測です。誤りであればご容赦)と思われる、人たちを大勢採用することで生き残ることができるという事実があるように思われます。経営と労働の両者の利害が合致しているという意味では、大いに評価されるべき事例です。この点を次号でお話くださると幸甚です。(2010/06/21)

以前住んでいた高津区は良いところです。だからできたのだと思います。この問題を正しく理解できるようにしないと、とりあえず採用はなくならないでしょう。何かあったとき問題なのはその人でグループではないはずです。(2010/06/21)

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