日本能率協会の村橋健司・教育・研修副ユニット長は、人事戦略の論客として知られる。今年1月には日本企業1000社を対象にした「人づくり実態調査」もまとめた。人材育成の足かせになっている成果主義の大胆な見直しが必要だと指摘する。
(聞き手は佐藤紀泰=日経ビジネス編集委員)
―― 村橋さんから見られて、日本企業の若手育成での最も大きな問題は何でしょうか。

村橋 やはり成果主義の弊害が大きいでしょう。人を育てる風土になっていない。若手を育てるのは管理職の仕事です。その管理職が「親の目」ではなく「評価者の目」になっている。
成果主義が導入されてから、15年がたちました。人を育てるというより、戦力としてどうなのかとばかり見ている。ここが問題です。
成果主義を導入してからの日本企業は評価者の訓練をやってきた。部下のマネジメントをどうするのか、どう成長させるのか、そこのところの教育はあまり力が入っていないのです。評価のやり方だけ教えてもだめでしょう。
「リスクをとれと言われても」
―― 現在の管理職は1990年前後に大量採用された「バブル入社世代」です。この世代に若い、ゆとり世代を育てられるのでしょうか。
全体的に見ていて、そうしたミドルがだらしない。大量採用されて会社に入りましたが、その後はバブルが崩壊してしまった。「攻めよりも守り」という意識が強いのです。日本企業の中間管理職はこういう意識があまりにも強すぎる。
それで、経営陣とかが、「もっとリスクをとれ」なんていっても、成果主義なのですから、簡単ではない。リスクをとって、失敗すると、責任をとらされる。今のバブル世代の管理職の特徴を一言で表すと、「フルスイングができない」世代です。そこを立て直していかないと。
―― 日本企業の中では成果主義の見直しも始まっていますね。
ええ、一部企業では。揺り戻しが起きています。ただ、日本企業で言えば、最も保守的なのが人事部です。成果主義を導入する時はものすごいパワーが必要だった。そのために、なかなか抜本的な見直しができていない。
個人の目標のうち、せいぜい1割ぐらいが部下の育成でしょう。それでは少なすぎる。部下の弱みとか強みとかをしっかり考えるようにしないと。そのためには部下育成の評価をもっと重視すべきでしょう。
自分のキャリアを伸ばすのは一生懸命だが、部下の育成にあまり熱心ではない。それが日本企業の多くで見られることです。半期に1度の面接とかではなく、もっと短い期間でやっていかないと。
中身もより充実させ、部下へのフィードバックとかもしっかりやる必要があります。日本企業ではサントリーとか、ブラザー工業とかは非常に良いのではないでしょうか。
サントリーでは部下との面談について、人事部とか労働組合とかも、上司と部下の面接についてどのような感じなのかをアンケートなどで調査しています。上司の管理職の部下指導の研修もしっかりしている。
ブラザー工業では優れた情報システムを活用して、部下の面接での情報をしっかり蓄えて、次の上司となる管理職が簡単に部下を理解できるようにしているそうです。
業績向上に寄与しない研修が多すぎる
―― 今年1月には「人づくり実態調査」をまとめられています。
驚いたことがたくさんあります。そこでは人事部に対して、新人とか管理職とか、様々な階層別研修について、その効果を聞いています。すると、多くの研修については6~9割ぐらいが「機能した」「うまくいった」とか答えています。
しかし、人材育成の研修が究極的な目標とする業績向上への寄与について聞くと、全体の4分の1ぐらいの企業しか、「狙い通り」「ほぼ狙い通り」と答えていません。あまりにも業績向上への寄与に自信のない企業が多すぎる。

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