「企業を蝕む

コーチングで若者は育たない

自意識過剰なゆとり世代はゴールを明言して引っ張る

  • 佐藤 紀泰

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2010年6月17日(木)

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 日本企業でも、さすがに人材育成に危機感を抱いているようだ。最近は中堅や若手の育成のために「コーチング」が大流行している。

 だが、人事コンサルティング大手、クレイア・コンサルティングの針生俊成ディレクターは「コーチングでは人材が育たない」と喝破する。論客として知られる針生氏に、人材育成の極意について聞いた。

(聞き手は佐藤紀泰=日経ビジネス編集委員)

 ―― コーチングの問題を指摘されていますね。

 針生 ええ、コーチングでは解決策にならないのですよ。特に若手については。

クレイア・コンサルティングの針生俊成氏

 コーチングというのは上司が若手とか中堅の社員たちの相談に細かく対応し、「君は何をやりたいのか」などと励ましているわけでしょう。しかし、最近のゆとり世代のような若手は自意識が過剰であり、「君のゴールはここだ」と明言して、引っ張ってやらないと。

 日産自動車はコーチングで成功していることで有名ですね。そこでは上司が部下の強みとか弱みをしっかり指摘し、どこに向かうべきかをうまく示して、成功しているようです。最もダメなのは若手の甘い自己認識を放置することです。会社が何を求めているのか、そこをしっかり決めて、理解させるようにしないといけません。

ミドルアップダウンの消滅

 ―― 針生さんの目から見て、日本企業の人材育成での問題点はどこでしょう。

 やはりホワイトカラー職のミドルでしょうか。大企業で最も人材が質的に不足しているのはミドルのホワイトカラーです。これを育てることが簡単ではない。技術者は求められるスキルがしっかり分かります。だから、育てやすい。ホワイトカラーは営業職とか、企画職でしょう。ここは明確な育成方法がないから、難しいのです。

 日本企業の強さはホワイトカラーのミドルにありました。「ミドルアップダウン」という言葉がありましたが、それが消えつつある。以前は米国的なトップダウンがもてはやされたが、それもうまくいかない。ここを何とか解決していかないとだめです。

 ―― クレイアではミドルの調査もされていますね。

 毎年、ビジネスパーソン1000人調査というのをやっています。昨年の調査ではやはり、管理職であるバブル入社組の問題点が明確になっています。

 2005年当時の20歳代の若手向けの調査と比較しても、2009年には「頼りにならない」「面倒を見てくれない」との回答が2〜2.5倍に増えていますよ。昨年ぐらいから、バブル入社組が大量に管理職になっていることが影響しているのでしょう。

 リーマンショック後の景気悪化で、自らの業績目標の達成を優先し、部下の面倒を見ていられないということなのでしょうか。

課長になれないバブル世代が組織に沈滞生む

 ―― バブル世代の処遇は難しい課題になっているようです。

 課長になれれば、良いのですが、バブル入社組は大量採用だったので、課長になれない層もたくさんいます。課長補佐のようなポジションにつけられています。そうすると、どうしてもモチベーションが落ちてきますよね。日本の企業の組織において、沈滞感を生んでいます。

 そして、バブル世代の次は「就職氷河期世代」ですよね。この世代も課長になれないバブル入社組を見ています。だから、意欲が落ちている。

 もう1つ特徴的なことがあります。就職氷河期世代は長い間、部下が入って来なかったので、自分で何でもかんでもやる習慣ができています。後輩のゆとり世代に任せるのかどうか。ここで重要なのは自分でやるより、人にやらせることの大切さを上司が理解させられるのかどうか。


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