• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

地域に根ざした「就業実習」――知的障害者の戦力化《後編》

キリン堂

  • 高嶋 健夫

バックナンバー

2010年6月28日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

(「カイゼンで能力を引き出す――知的障害者の戦力化《前編》」から読む)

 大阪市に本社を置く中堅ドラッグストアチェーンのキリン堂。関西を地盤に、228の直営店をはじめグループ全体で311店舗(2月現在)を展開し、「地域コミュニティーの中核となるスーパードラッグストアを社会インフラとして確立する」という経営ビジョンを掲げ、地域密着の店作りを推進している。

 昨年9月、そうした経営理念を実践する1つの試みとして、地域の障害者福祉施設と連携して、知的障害のある人たちを週1日のパートタイム店員として受け入れ、就業実習の場を提供するというユニークな取り組みをスタートさせた。「どのようなやり方なら実現できるか」。関係者が知恵を出し合い、運営方法も、契約方式も前例のない独自のスキームをゼロから編み出したのである。

 舞台は枚方山之上店、主人公は木南祐介店長――。

 大阪のベッドタウンである枚方市はドラッグストア各社がしのぎを削る激戦区で、キリン堂にとっても7店舗を集中出店している重要戦略地域の1つ。枚方山之上店は昨年3月にオープンした新しい店で、店舗面積は約170坪と小規模ながら、駐車場を完備した単独立地の郊外型路面店である。

知的障害者が接客する

 ここに毎週木曜日の朝9時半から昼12時半までの3時間、知的障害者3人が介助者の福祉施設職員1人とともに「出勤」して来る。メンバーはいずれも、社会福祉法人フォレスト倶楽部(本部枚方市、上野精順理事長)が運営する地元の共同作業所「ぱうんどケーキ村」(石川泰代管理者)に通う障害者たち。自主性を重んじるぱうんどケーキ村ではこの取り組みを始める際に希望者を募ったところ、10人の通所者が手を挙げた。そこで、その中から毎週3人ずつが交代で勤務する「グループ就労」の形を採用した。

 実際の仕事は、ユニフォームの赤いエプロンを着用し、ほかの店舗スタッフと一緒に朝礼に参加、その日の目標や注意事項を確認するところから始まる。

 最初に行うのは、店の入り口に立って「いらっしゃいませ」と声かけをしながら来店客に買い物カゴを手渡す業務。これを30分から1時間くらい続けた後は、いったんバックヤードに下がって、店頭を飾るポップ広告の製作などに当たる。印刷された広告素材を透明なバウチに入れるといった軽作業が多いそうだ。これが1時間から1時間半程度。それから再び店に出て、陳列棚の商品の補充と整頓、いわゆる「前出し」作業に汗を流す。最後に、終礼を行って今日の良かった点と反省点を各人が発表し、「お疲れ様でした」となる。作業を3つに区分けしているのは、集中力を切らさずに仕事ができるようにとの配慮からだ。

 流通業界は障害者雇用に比較的前向きな業界で、大手企業の多くは知的障害のある人も積極的に雇用している。しかし、商品在庫の管理などバックヤード業務を担当させているところがほとんどで、店舗に配属するケースはまだまだ少ない。

 キリン堂もまた特例子会社「キリンドウベスト」を持ち、約15人の障害者を採用しているが、清掃などの店舗メンテナンスが主な業務。週1回実質2時間程度の限定的なものとはいえ、“店舗スタッフ”として受け入れたのは今回が初めてだ。大きな挑戦と言える今回の取り組みを後押ししたのは、「地域コミュニティーに貢献する」という経営の座標軸だ。

 実は、ぱうんどケーキ村は枚方山之上店のすぐ目の前、狭い幹線道路をはさんだ向い側のテナントビルの1階にある。まさに、スープの冷めない距離に立地する“お向かいさん同士”なのだ。この近さが、実験的なスキームを実現させた大きな要素になっている。

どうやって「工賃倍増」を実現するか

 事の起こりは2008年の暮れ、大阪府障がい福祉室自立支援課が実施している「大阪府工賃倍増5か年計画(2007~11年度)」事業の一環として、1人の経営コンサルタントがぱうんどケーキ村を訪問したことに始まる。

 やって来たのは、大阪・天満橋にある経営コンサルティング企業、フラン社長の竹川智子さん。竹川さんは福祉用具や地場産品のマーケティング・販路開拓戦略を専門分野とし、大阪府、和歌山県、滋賀県、三重県、静岡県など地方自治体と連携して、多数の地場中小企業の経営指導を手掛けてきた実績を持つ。

 同事業は、障害者自立支援法の施行に伴い、いわゆる授産施設に通う障害のある人たちの所得を引き上げるのが目的。竹川さんは、実施主体である大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合(通称エル・チャレンジ、塩見健一郎理事長)の委嘱を受けて、ぱうんどケーキ村の“経営テコ入れ”のために派遣されたのである。

画像のクリックで拡大表示

 最初に相談されたのは、毎日焼いているパンやケーキ類の売り上げをどうやって増やすか。工房と店が一体となった造りとなっているため、店舗部分は間口1間程度、ほとんど1坪ショップほどの広さしかない。

 これでは、店売りを増やすことは難しい。そこで、病院の売店での委託販売や、福祉活動に理解がありそうな事業所での職域販売といった方法を考え、周辺を営業活動で歩き回ったが、なかなか色よい返事がもらえない。

 打開策を摸索していた時、竹川さんの目に入ったのが、対面にあるキリン堂だった。

コメント0

「障害者が輝く組織が強い」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「絶対これしかありません」というプランが出てきたら、通しません。

鈴木 純 帝人社長