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あえて掲載しなかった「幻の最終章」 ――寿司屋で教えられたジャーナリストの矜持

『グーグル秘録』のケン・オーレッタ氏に聞く[エピソードII]

  • 土方 奈美

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2010年6月28日(月)

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 5月中旬、『グーグル秘録』のプロモーションのためケン・オーレッタが来日することになり、出版社の方々と一緒に夕食を、という話になったのだが、日程はぎりぎりまで決まらなかった。なにせ彼の夜の予定がいっぱいだったからだ。

グーグル秘録 完全なる破壊』(文藝春秋) ケン・オーレッタ著、土方奈美訳 1900円(税別)

グーグル共同創業者であるラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンをはじめとする経営トップや社員に150回ものインタビューを敢行。テレビや新聞、広告など“伝統メディア”の有力者に対する取材も交えながら、「グーグル化される世界」をまとめている。

 敏腕出版プロデューサーの夫人とともに、5日間ほどの滞在の間にノーベル文学賞も近いと噂されるアノ人気作家や、ソニー会長兼社長のハワード・ストリンガーと会食をしたそうだ。『グーグル秘録』にも登場するストリンガーとは、彼がCBS社長からソニーに転じるはるか以前、CBSニュースのファクトチェッカーだった時代からのつきあいという。2人が会食した数日後、ソニーはグーグルやインテルなどと組んで今秋ネットテレビを米国で発売することを発表したが、恐らく神戸牛をつつきながら、そんな話も聞いていたのだろう。

 『グーグル秘録』には、当時ソニーCEO(最高責任経営者)だった出井伸之にオーレッタが「iPod(アイポッド)に脅威を感じるか」と尋ねたところ、出井が「アップルはものづくりを知らない。1~2年以内に音楽産業から手を引くさ」と語るくだりがある。こうしたエピソードを満載できるのも、20年以上にわたってメディア業界を追い続けてきた、ジャーナリストとしての積み重ねがあればこそなのだ。

新聞は、スーパーマーケットのようなもの

 『グーグル秘録』の中で、冷静な観察者に徹してきたオーレッタが、熱くなる場面が1カ所だけある。グーグル共同創業者の1人であるサーゲイ・ブリンに、オーレッタが本の出版について報告した時だ。

 「誰も本なんて買わないよ。ネットで無料公開しちゃえば?」とからかったブリンに、オーレッタは聞き返す。

 グーグルのビジネスモデルから判断すると、君は書籍の中に広告を掲載すれば、収入が入ると思っているのかい? でも出版社が前払い金を払ってくれなければ、作家はどうやって経費を賄う? 誰が原稿の編集とそのコストを引き受けるの? 内容を精査する弁護士の費用は?

 普段は一瞬にして相手を武装解除させてしまうような、穏やかな空気を漂わせるオーレッタの突然の剣幕に、ブリンは圧倒されたのだろう。「普段は饒舌なブリンは黙りこみ、話題を変えようとした」という。

 既存メディアの仕組みを非効率だと決めつける前に、無料でコンテンツを公開することにどれほど甚大な影響があるか、きちんと考えてみたらどうだ――。恐らくオーレッタは、ジャーナリズムの危機を招いた当事者の1人として、またその打開を担う者の1人として、ブリンに自覚を求めたかったのだろう。

 「優れた新聞は、様々な選択肢を揃えたスーパーマーケットのようなもの」というのがオーレッタの持論だ。新聞は読者に「何かを買え」と強制することはないが、民主主義社会における、人間性豊かで見識のある市民となるために必要な情報をすべて揃え、彼らの目の前に提示するものなのだ。

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