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顧客満足と業務効率化、二兎追うものは二兎を得る!

2010年7月5日(月)

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 サービス産業は顧客満足を生産している。顧客が満足しなければ、そのサービス産業は多くの顧客を集めることができない。もし顧客を集めることができなければ、その企業は経営することも、成長することもできなくなり、いずれ市場から退場しなければならなくなる。このため、多くの企業では、顧客満足を高めるために、飲食店であればメニューに工夫を加え、旅館であれば施設を改修する。多くの食品スーパーマーケットでは、特売セールを展開する。このような努力を、多くのサービス企業が行い、日々、顧客満足を高めようとしている。

そもそもサービス産業の生産性向上は可能なのか?

 製造業に比べ、サービス産業の生産性が依然として低く、この20年間で見ても、その伸び率の上昇もほとんど見ることができない。一方、このサービス産業は、急速に我が国の経済活動の主役に踊り出始め、社会の中で重要性が増しているにもかかわらず、生産性が向上していかなければ、これまでのように豊かな生活を人々が享受することはできない。このことを前回は指摘した。

 しかし、サービス産業の現場が抱える大きな課題は、生産性の向上がそもそも可能なのかどうかということである。そして、もし可能であるならば、その方法論はどのようなものなのか。それをはっきりさせることができなければ、製造業の生産現場でこれまで行われてきたように、サービス現場で働く人々は生産性向上に取り組むことができない。

 多くのサービス産業の現場では、これまで顧客満足を高めるためには、顧客を厚くもてなす必要があると信じてきた。つまり、多くの手をかけ、より良いサービスを提供しなければ、顧客は満足しないということである。

 これを「生産性」という観点から見れば、顧客満足を高めるには、より多くの資源を投入する必要があるということである。このことは、もしサービスの提供現場で資源の投入量を減らして業務の効率化を進めれば、顧客満足も同時に減衰してしまうという意味でもある。つまり、この顧客満足の実現と業務効率化の推進には、二律背反の関係があるという現実を、サービス産業が持っているというのである。この二律背反の関係は一見すると非常に分かりやすい。

 例えば握り寿司店を考えたとき、カウンターで寿司を握る職人の数が、店舗で接客できる顧客数を既定してしまう。もし1人の職人が接客する顧客の数を増やしたとして、これまで通りに職人が寿司を握るのであれば、顧客は自分の寿司が出されるまでより長い時間待たなければならなくなる。この待ち時間が長くなれば、顧客の不満は徐々に蓄積していく。つまり、生産性を向上させようとした努力が、顧客の満足を低下させ、結果として生産性の向上という結果を得られないのである。

 この寿司店で見る二律背反の関係は、おもてなしのサービスを提供する旅館でも同じように見ることができる。各客室で宿泊客をもてなし、お茶を入れ、食事を提供し、そして布団を敷く仲居が対応できる客室の数は限られる。到着や出発、食事の時間を、宿泊客によって異なれば、より少ない人数の仲居で対応できるかもしれないが、宿泊客の予定を、旅館側の都合でコントロールすることはできない。従って、現実的には多くの旅館では、1人の仲居が担当する客室の数は2つ程度となる。

 旅館にとって客室の数が、宿泊できる客数を既定するだけでなく、必要な仲居の数も既定してしまうのである。このような状況にある旅館にとって、もし仲居の数を減らせば、寿司店と同じようなことが起こり、やはり顧客満足を減衰させてしまうのである。

 この寿司店や旅館で見るように、サービス産業の生産性向上への取り組みが同時に顧客満足を下げ、結果として生産性を下げてしまうのである。

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「顧客満足と業務効率化、二兎追うものは二兎を得る!」の著者

内藤 耕

内藤 耕(ないとう・こう)

サービス産業革新推進機構代表理事

世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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