「「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」」

第38話「購買部はコストダウン要求が厳しいけど、研究開発部はザルなんだ」

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2010年6月30日(水)

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これまでのあらすじ

 ヒノハラ社長の団達也は、日豊自動車とヒノハラとの間に不正なカネの流れがあるとにらんで、経理部長の細谷真理に調査を依頼した。

 真理は日豊自動車の研究開発部門への納品書と、高級バーの請求書に不正のにおいを感じていた。

 一方、日豊の松田義一社長は、アジアで競争力を持つ、低価格のガソリンエンジン車を開発するよう、専務の湯浅に命じていた。

 達也のシンガポール大学時代の親友、ジェームスは上海の投資会社で新しいスタートを切っていた。上海では、やはり大学の同窓であるリンダが「李団有限公司」という自身の会社を立ち上げ、達也との自動車部品ビジネスを実現するための準備をしていた。

 達也のビジネスモデルは、「金子順平が開発した製品を日本で量産し、上海にあるリンダの会社に輸出。リンダは親戚一族のルートを使って、中国の主要メーカーに販売する。資金はジェームスの会社に出資を頼み、3年後をメドに株式公開する」というものだった。

ヒノハラ経理部

 「不正取引かどうか断定はできませんが、気になる取引がありました」

 そう言って真理はA4の紙1枚にまとめたサマリーを達也に渡した。達也はその資料に丹念に目を通した。

 「ヒノハラは研究開発部門にも部品を納品していたんだね。でも変だな。なぜ、ヒノハラの製品を研究部門が購入するのかな」

 すると、真理はすかさず用意したコピーの束を達也に渡した。
 「これが納品書の控えです。内容を見てください」

 納品書には何種類もの部品の名称が印字されていた。だが、その内容をよく見るとそれらはヒノハラで製造されたものではなく、すべて他社からの購入品だった。

 「ヒノハラが専門商社から仕入れて、日豊自動車に納品していたんです」

 それらは試作品を作る際に使う電子部品や小型モーターなどで、どれも汎用品だが、あまり量が出ない特殊部品で、単価の高いものばかりだった。

 「ところで、ヒノハラは開発部へは年間いくら売り上げているの」 と、達也が聞いた。

 「約20億円です」
 「そんなに多いんだ…」

 達也はその額に驚いたが、すぐに思い直した。日豊自動車は年商5兆円の会社なのだ。おそらく研究開発部門の予算は1000億円を超えるだろう。20億円など、たいした金額ではない。

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著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」

 主人公の団達也は、シンガポール大学ビジネススクールで学んだ後、恩師の経営コンサルタント、宇佐見秀夫の薦めで中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。達也は、当時専務の間中隆三らによる不正が常態化、粉飾決算が行われていた。経理課長に就任した達也は、経理部員の細谷真理とともに数々の不正を明るみに出し、間中らを追放した。
 経理部長になった達也は、ジェピーCFOとして会社の再建に着手した。その直後から隠れ負債が発覚し、工場には仕掛かり在庫の山。資金繰りに窮したジェピーは、銀行からも見放され倒産寸前だった。
 ジェピーを救ったのは、かつての級友、ジェームス。ジェピーは、同じく級友のリンダが勤めるアメリカの大手電子部品会社UEPCの傘下に入って新たな道を歩み出した。
 創業者未亡人の大株主、財部ふみの遺言で達也の手にはジェピーの株式が渡ることになったが、達也はそれを手放し、自分の手で会社を立ち上げようと決心した――。
 管理会計が専門の現役会計士である著者による、“読む管理会計”シリーズの第3弾。ストーリーを追いながら、経営に役立つ管理会計の最新の理念と実践的な知識が身につきます。
第一シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」
第二シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理部長、団達也が行く」

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