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episode:61
「だれかがなんとかしてくれると思ってる人間ばかりだから、日本が駄目なんじゃないか。」

  • 阿川 大樹

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2010年7月6日(火)

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前回までのあらすじ

老舗 大日本鉄鋼に旭山隆児(あさひやまりゅうじ)が呼び戻され、第三企画室が設置され1年が過ぎようとしていた。独立した新会社オルタナティブ・ゼロでは旭山社長のもとで働くのは第三企画室室長 風間麻美(かざまあさみ)、次長 楠原弘毅(くすはらこうき)。気持ちを持て余し気味の麻美は、仲間に支えられていることを実感していた。

【登場人物の紹介はepisode:zeroをどうぞ】

「楠原、いま、どこにいる?」

画像のクリックで拡大表示

 午後5時過ぎ、電話で旭山さんから急な招集がかかった。

「製作所です」

 茅ヶ崎南製作所。まもなくガレージ村を正式に会社として立ち上げる。

 受注のための図面を、インターネット経由でどういう形で受け取るか、それを平野社長と津久井さんとで最終調整をしていた。

 風間さんは技術のことはわからないから、工学部出身者として、プロジェクトの技術面についてインタフェース役をしている。といっても大学を出ただけの自分は、津久井さんたちに金属加工のことを、一から十まで教えてもらっているようなものだ。それでも、時々、頭に浮かぶ〈素朴な疑問〉を口にすると、「筋がいい」と褒められたりして、けっこうそれがうれしかったりする。

「すべての予定をキャンセルして、すぐにオフィスにもどってきてくれ」

 すべての予定をキャンセルして。ただごとではない響きだ。

 旭山さんが、急に、しかも、外出している部下を呼び戻してまで緊急の会議を開くなどということは、いままで一度もなかった。

 なにかただならぬことが起きている。それが何であるのか。それはとうてい電話で聞くようなことではない、ということだ。

*  *  *

 オフィスにもどると、風間さんが先にいた。

「あ、楠原くん、お帰りなさい。旭山さん、新しくコーヒー淹れてから始めましょうか」

 風間さんの気の使い方が、かえって事務所の空気を硬くした。

 それでも空調でかき混ぜられた空気にコーヒーの香りが加わると、それだけで心がゆったりとしてくる。白い豆を黒くて熱い液体にして飲もうと考えついた人類って、ほんとにすごい。

 コーヒーサーバーが、会議テーブルについた各人のマグカップを一周するのを待っていたかのように、旭山さんが切り出した。

「ヒッタイト・スチールが、いよいよ大日本鉄鋼を買収しようとしている」

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