「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」

アラフォー女性と男性上司の“同床異夢”

カツマーじゃない彼女も救う「ワークライフバランス」

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2010年7月8日(木)

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 先日のことだ。ある中小企業の役員を務める男性が突然、ものすごく言いにくそうに聞いてきた。

 「失礼なことは重々承知のうえでおうかがいしたいのですが、40代の独身の女性というのは、やっぱりその何というか、結婚をする気はあるんですよね? いや、その……、要するに結婚することになったら、当然、子どもを産む可能性もあるわけですよね? 別に結婚していなくても産むことはできるんですけど……」と。

 結婚、出産、おまけに40代と、一つ間違えばセクハラ呼ばわりされそうな話題である。それだけに男性は言葉を慎重に選びながら、奥歯にものがはさまったような調子で話す。

 「で、結局、何?」と突っ込みたくなるほどだったが、要するにその男性は「未婚・子なし・アラフォー」の女性部下を部長にしていいものかどうかと悩んでいたのである。

「ガラスの天井」をなくそうとした男性上司

 この男性の会社は、社員数200人の規模。部長になるということは、役員へのレールに乗ることを意味する。結婚していて、既に子どもがいる女性であれば、将来がイメージしやすい。ところが、未婚・子なし・アラフォーの女性の場合、ずっとそのままの状態なのか? それとも突然寿退社があり得るのか? イメージを抱きづらい。

 「私はこれまで女性だからとか、男性だからという理由で、部下たちを区別したり、接し方を変えたりしたことはありませんでした。でも、今回はちょっと悩んでいます。うちの会社でも中堅どころの女性が増えてきて、かなり良い仕事をしてくれています。それで、42歳になる女性の部下を、できれば部長に抜擢したいと思っているのです」

 「彼女は営業成績もよく、うちの会社を代表する一人として活躍できる手腕も人脈もあります。でも、うちの会社で部長になるということは、部下たちに「飯を食わす」ために働けるかって、ことなんです」

 「仕事に対する考え方を変えなくてはいけないし、彼女にそのポジションを任せる以上は、『結婚したから辞めま〜す』では困る。ましてや、『子どもが欲しいから』『子どもを産むから』と言われても、女性に仕事をセーブさせる仕組みも制度も、うちの会社にはありません」

 私はこれまで何回か、「女だから」という理由だけで男性を昇進させたと語るトップ(関連記事:女性部下の昇進を止めた、「僕たちの正当な評価」)や、「女だから」という理由だけで肩たたきに遭った女性たち(関連記事:“女”じゃ、ナゼいけないのですか?)の事例など、“女性の出世を阻む勝手な男たち”について書いてきた。

女性管理職を増やす動きは進んでいるが…

 だが、今回はちょっと違う。「ガラスの天井」をなくそうとする男性上司の迷い、とでもいうのだろうか。彼は、女性部下を出世させたい、と願っていたのである。

 実は最近、この男性のように、「女性を将来の役員に育てたい」と希望している経営者が目立つ。だが、その人数はといえば、圧倒的に少数派だ。

 いわゆる「ガラスの天井」問題は根が深く、役職が上になればなるほど深刻である。日本の上場企業の経営幹部に占める女性の割合は、わずか1.2%という調査結果もある。

 海外と比べると、その割合の低さが際立つ。例えば、米国は28%(米NPO法人「グローバル・ウーメン(Global Women)」調べ)、英国は11.5%だ。2004年に「上場企業での女性取締役の比率を40%以上にすること」を義務づけた法律が制定されているノルウェーに至っては、実に44.2%に達している(出所はこちら)。

 今年の企業の株主総会でも、大企業の経営陣のほとんどが男性であることが話題となった。東芝とパナソニックでは、ある投資家が経営陣に対して、「主要電機メーカーにはなぜ女性や外国人の幹部がいないのか」と質問したそうだ。

 すると、東芝の幹部は、「男女の区別はしていない。今回は適任がいなかっただけで、いずれ女性の役員も出てくる」と回答。パナソニックの幹部も「最高経営幹部には女性はいないが、マネジャー級の女性の数は大幅に増加している」と語ったという(出所はこちら)。

 足取りはゆっくりではあるけれど、女性の管理職を増やそうという動きは確実に進んでいる。だが、その上の経営陣となると難しい。

 背景にあるのは、「女には経営は無理だ」などと根拠のない価値観を隠し持つ昭和全盛時代のトップや、「女は扱いづらい」と漏らす人たちの存在だけではない。今回の男性のように、「抜擢したい」と本心から思っているものの、「本当に大丈夫なのか?」という不安から、なかなか踏みきれないケースもある。

 業界や職種による違いも多く、それぞれの対場で、いろいろな考え方や制約が、「ガラス天井」を複雑にしている。

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著者プロフィール

河合 薫(かわい・かおる)

河合 薫博士(Ph.D.、保健学)・東京大学非常勤講師・気象予報士。千葉県生まれ。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。主な著書に『「なりたい自分」に変わる9:1の法則』(東洋経済新報社)、『上司の前で泣く女』『私が絶望しない理由』(ともにプレジデント社)、『<他人力>を使えない上司はいらない!』(PHP新書604)



このコラムについて

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。

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