「資源ウォーズの世界地図」

透明度8位のカナダと17位の日本、どちらがクリーン?

鉱山会社が「国家の名声を傷つけるリスク」になる

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2010年7月9日(金)

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 今、世界の発展途上国において、一国のリーダーや政府要人の利権に絡む汚職など腐敗が蔓延しており、それが政争、紛争、貧困、環境破壊、人権侵害、児童労働・奴隷労働といった問題を引き起こしている。

 ドイツに「透明性インターナショナル(Transparency International=TI)」というNGO(非政府組織)がある。このTI、世界180カ国政府の透明度を10点満点で評価して毎年ランキングを発表している。

 2009年のランキングによると、透明度トップはニュージーランド、第2位がデンマーク、第3位スウェーデンであった。カナダが第8位に対して日本は第17位であった。

ランキングには現れない問題

 カナダも日本も180カ国中トップ10%に入っており透明度は高いほうだ。ただ、このランキングには大きな問題がある。なぜなら、例えばある企業が他国へ行って資源の権益を取得して開発契約を締結する時に、贈収賄などによって腐敗(corruption)に関与したり、開発に当たって人権侵害や環境破壊などを行っていたりする場合には、相手国の透明度が低くて腐敗度が高いと評価され、企業の所属国には関係ないためだ。

 こういった観点から、カナダと日本を比較すると極端な違いがある。日本のほうがはるかにクリーンだということだ。

 それは次のような理由による。

 カナダがオーストラリアとともに豊富な自国内資源にとどまらず、世界で資源探鉱・採掘を行っている資源産業大国であるため、他国におけるカナダの鉱山会社による腐敗そのほか諸問題への関与の度合いが高くなっているわけだ。

 これに対して、幸か不幸か日本は無資源国でしかも海外における資源の自主探鉱、自主開発のウエイトは極めて低く、原則的に商社任せで、単純買鉱か融資買鉱あるいはマイナーな出資が多い。そのため、日本はカナダ企業のように権益取得、採掘契約、探鉱・採掘に伴う上記のような諸問題に直接関わることは少ない。

 ここで、カナダの資源産業の強大さを示す次のようなデータを紹介しておこう。

TSX(トロント証券取引所)に上場している鉱山会社数(2007年)
  →1373社
TSXにおける鉱山会社の取引株数(2007年)
  →790億株(売買高4829億カナダドル)
世界全体の探鉱活動のうちカナダの鉱山会社が関わった割合
  →43%
カナダに上場している世界の鉱山会社の割合
  →60%
アフリカにおけるカナダの鉱山会社が保有する資源権益の価値
  →210億米ドル
紛争で荒廃したDRコンゴにおけるカナダの鉱山会社の資源権益保有割合
  →20%
2009年11月3日時点のカナダにおける鉱山関係ロビイスト登録者数
  →193人
カナダの鉱山会社が人権侵害の申し立てを受けている国数
  →30カ国
海外でカナダの鉱山会社が規制を受ける法律の数
  →0
  • 出所:
  • カナダ鉱業協会(The Mining Association)、外交と国際開発委員会(Committee of Foreign Affairs and International Development)、カナダ・ロビー活動コミッショナー・オフィス(The Office of the Commissioner of Lobbying of Canada)

 このように、世界の資源を支配している国の1つとも言えるカナダの鉱山会社であるが、国内あるいはオーストラリアなど先進国では法的規制も世論も厳しいので酷い問題を起こすことはできない。しかし、海外それも発展途上国の場合には事情が異なる。法的規制はあまり整備されているとは言えない国の法律に従って活動する。カナダの国内法が適用されることもない。そのため、腐敗した国の指導者層あるいは政府・官僚と権益取得、不適切な開発契約がなされることが多々あるわけだ。

 その結果、劣悪な労働条件、いい加減な環境アセスメントと対策、先住民の強制移住、反抗する人たちに対する人権侵害、ずさんな安全・保安対策などで「資源は呪い」になる。そのうえ、腐敗が原因で不適切な鉱区税と鉱産税そして税優遇措置によって、その国は多額の財政的損失を蒙るわけだ。

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著者プロフィール

谷口 正次(たにぐち まさつぐ)

谷口 正次

資源・環境ジャーナリスト。1960年九州工業大学鉱山工学科卒、小野田セメントに入社。同社資源事業部長などを経て、1994年に秩父小野田常務、1996年専務、1998年に太平洋セメント専務。2001年に屋久島電工社長(太平洋セメント専務取締役兼務)2004年6月国連大学ゼロエミッションフォーラム理事(産業界ネットワーク代表)。主な著書に「メタル・ウォーズ」(東洋経済新報社)、「入門・資源危機―国益と地球益のジレンマ」(新評論)など。



このコラムについて

資源ウォーズの世界地図

産業を支える資源に対するリスクが高まっている。銅やアルミなどの非鉄金属はもちろん、自動車の触媒に必須なプラチナ、次世代電気自動車に使われるリチウムなどのレアメタルも、“資源メジャー”や新興国の国家戦略とも絡み始めている。これまでカネさえ出せば入手できたさまざまな産業のキーとなる鉱物資源の囲い込みが始まっている。このコラムでは、鉱山技術者として世界の現場を踏破してきた筆者が、これからの資源リスクについて解説する。

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