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第5回 その時、私には分からなかった彼女の涙のワケ

人が生き生きと働くために必要なこと

  • 武田 斉紀

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2010年7月12日(月)

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目を赤く腫らしながら彼女は言った

 私は会社や組織のあり方について、こうしてコラムで“語って”いるが、実にお恥ずかしい失敗もたくさん経験している。今日はその中の1つからご紹介していこう。

 私は最初に就職した会社を辞めてすぐに、友人の会社を幹部として手伝うことになった。立ち上げて間もない時期で、社長である友人以外は、私ともう一人の男性、事務の女性の4人。営業や折衝で外を飛び回っている男性陣は、書類作りなどの様々な事務仕事を彼女に頼っていた。

 入社して1カ月もしないある日の朝、私は彼女にあらかじめ根回ししておいた企画書の下書き原稿を渡して、夕方5時までに仕上げてくれるように頼んだ。しかし今回は量も多かったので、間に合うかどうか心配だった。何しろ彼女は、3人から様々な仕事を頼まれている。そして彼女の代わりはいない。

 彼女は朝から黙々と私の仕事に取り組んでくれていた。昼間は外にいたので分からなかったが、昼ごはんもそこそこに作業を続けてくれていたのだと後から知った。夕方5時前、私がオフィスに戻ってくると、彼女はプリンターから出したばかりの企画書を手渡してくれた。

 「すごいじゃない、間に合ったんだね!」。私はまず間に合わせてくれた努力をたたえたくて、彼女にそう告げた。そして中を1ページ、1ページめくって確認したうえで、気持ちを込めてこう言った。

 「いい感じだよ、さすが○○さんだね。きれいに仕上がっている。とくにここやここなんか、いいね」

 修正してもらいたいところはいくつもあったが、まずは彼女の仕事を褒めるべきだと私は思ったのだ。

 彼女は私の話を上の空で聞いているように見えた。表情に笑顔はない。それどころか、瞳が次第に赤くにじんでいくのが分かった。私には何が起こっているのか分からなかった。

 目を赤く腫らしながら、彼女は絞り出すようにこう言った。

 「ずっと思っていたんですが・・・私は、武田さんに評価されたいわけじゃないんです」

 特に男性読者の皆さん、彼女の涙のワケがに既にお分かりだろうか。私は彼女の告白にも、まだ事の次第が全くつかめていなかった。

仕事を「どう認められたいか」は人によって違う

 彼女は続けた。

 「A社長(私の友人)は、出来上がった仕事を私が渡した時に、いつも何と言ってくれるか分かりますか?」

 「・・・・・」

 「社長はいつも、“ありがとう、お疲れ様”って言ってくれます。ただそれだけです。でも私はその一言で、救われるんです。頼まれた仕事がどんなに大変な仕事や、単純でつまらない仕事だったとしても」

 私ははっとした。この会社に来て1カ月、私は彼女の仕事に対して、「いいね」とか「すごいね」としか言ってこなかった。彼女が待っていたのは、「ありがとう」であり、「お疲れ様」の一言だったのだ。

 彼女に任される仕事を並べてみれば想像できたことだ。私がいくら「すごい」といったところで、彼女が大きな成長感を得られるはずもなかった。彼女は日々、3人の仕事を確実にこなしながら、みんなに必要とされていることを確認したかったのだ。

 「いつもありがとう」だけで、そのちっぽけな会社は、彼女にとって毎日「行きたくなる会社」になっていた。仕事を「どう認められたいか」は人によって違う。私自身、頭で分かっていたつもりだったが、何も分かっていなかったのだ。

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