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“切りたい社員”を生む、オトナの勝手と新人の甘さ

「やりたいこと」症候群が不幸を増幅する

2010年7月15日(木)

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 新卒切り──。またもや物騒な言葉が出てきたものだ。

 一部の報道によれば、入社したばかりの新入社員に、理不尽な要求を突きつけたり、上司が罵声を繰り返し浴びせたりして、新入社員が自主的に辞める状況に追い込むケースが目立っているという。

 NPO(非営利組織)法人の労働相談センターにはこの4月以降、「この業界に向いていない」「協調性がない」などの理由で、解雇通知や退職勧奨を受けた新入社員からの相談が10件以上あったそうだ。

 こうした新卒切りが横行している背景には、景気の回復を見込んで多めに採用したものの、予想が外れて慌てて人件費の削減に走る企業の姿勢に加えて、一昨年に「内定取り消し」が社会問題となり、厚生労働省が悪質な企業15社の公表に踏み切ったことがあると見られている。「内定切りはできないから、入社直後に自主的に辞めてもらおう」というわけだ(出所はこちら)。

 もし、これが事実だとすればあまりにひどすぎる。せっかく入った会社で、こんなむごい仕打ちを受けたら、心に大きな傷を負う。入社して半年間は、その後のキャリア人生に大きく影響を及ぼす大切な時期であるだけに、許されることではない。

「仕事をさせる以前」の新人君たち

 ただ、報道をそのままうのみにするのも、少々危険な気がしている。何というか、一人の人生を大きく左右する問題であるだけに慎重に言葉を選ばなくてはならないのだけれど、新卒切りは、派遣切りや内定切りといった調整弁としての“切り切り対策”とは、性質が異なる部分を秘めているようにも思うのだ。

 例えば大学などでも、成績の評価を不服とする学生が、パワーハラスメントならぬ「アカデミックハラスメント(略称:アカハラ)」を訴えて、裁判まで持ち込むケースがある。若い世代に顕著に見られる過剰なまでの自己防衛やら、核家族やら、少子化やらで、自分と違う世代から言われる一言に、必要以上に過敏になっているケースも存在しているのではないか。

 それに「だって、切りたくなるような新人ばっかりなんだもん――」と上司たちが嘆きたくなるほど、問題の多い新人だっている。

 電話が鳴っても、「あの~電話鳴ってますけど……」などと、自分からは一切取ろうとしない。会議用の資料のコピーを頼むと、どうしたって読めないだろうと誰もが思うサイズに縮小コピーしてくる。資料に間違いを見つけても「僕の仕事ではないので」とそのままにする。

 こうした「仕事をさせる以前」のレベルの新人に手を焼いている上司たちの話を聞く機会の多さといったら、半端じゃない。40代以上の社員が2~3人集まれば、大抵は「信じられない新人君たちの行動」で話題が盛り上がる。

わずか3カ月で退社した青年の理由

 いや、だからといって上司が新人に暴言を吐いていいと言っているわけではないし、問題がすべて新人にあるわけでもない。上司たちも上司たちで、何でもかんでも学校教育のせいにして、自分たちで新人を育てることを放棄する。

 新卒切りと呼ばれているものは、すぐに責任、責任と騒ぎたがる世間や、世の中全体に余裕がなくなっている現代ならではの出来事なのかもしれない。

 従って、新卒切りという言葉を使うことも、この問題を扱うことも、かなり慎重でなければならないと思っている。なので、これから紹介する事例については、単なる新卒切りとは考えないでいただきたい。

 A君、23歳。一浪の後、某有名私立大学に進学した礼儀正しい好青年である。

 彼はこの春、某旅行代理店に就職した。ところが、私が彼に会った6月末には既に辞めていた。「やりたいことができない」というのが理由だった。

 今年度の大卒の就職率の低さはご承知の通り。過去最悪だった1999年度の91.1%に次いで2番目に悪い91.8%である(厚生労働省と文部科学省発表)。

 これほど厳しい就職戦線をくぐり抜けたにもかかわらず、わずか3カ月で辞めてしまったのだ。

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「“切りたい社員”を生む、オトナの勝手と新人の甘さ」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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