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「日本卓球の中興の祖」が極める指導者の神髄

東京富士大学卓球部《前編》

  • 高嶋 健夫

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2010年7月26日(月)

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 障害者と健常者が初めて一緒に働くことになった時、どちらの側にも不安と戸惑いが襲う。お互いがお互いのことを知らない、分からない。だから、最初は「どのように接したらいいのだろうか」と困惑する。少し慣れてきた後も、行き違いや誤解の種は尽きず、ときに葛藤や軋轢が生まれることもある。

 人事制度のあり方や職業スキルをどう磨くかといった課題の以前に、障害者雇用がうまくいくかどうかは、結局のところ、そうした「きしみ」を乗り越えられるかどうかにかかっているように思える。そのためには、健常者の側も、障害者の側も、双方が努力を積み重ねてコミュニケーションを深め、信頼関係を築いていくしかない。取材を進める中で痛感するのは、このことである。

 とはいえ、言うは易く行うは難し。それは簡単なことではないし、「こうすればうまくいく」という模範解答も、マニュアルもない。だが、何かしらの「要諦」はあるに違いない。

 そんな大命題の解の手掛かりを求めて、女子卓球界の名門、東京富士大学卓球部を訪ねた。ここには現在、2人の聴覚障害のある女子選手が在籍している。3年生の上田萌さんと、2年生の佐藤理穂さんだ。昨年9月に台北で開催された「第21回デフリンピック」(4年に1度開かれるろう者[聴覚障害者]の国際スポーツ大会)の卓球女子シングルスで、それぞれ銀メダル、銅メダルを獲得した。

 2人を指導しているのは、38年にわたって卓球部を率いており、東京富士大学教授でもある西村卓二監督。2004年のアテネ五輪当時の女子ナショナルチーム監督を務め、まだティーンエイジャーだった福原愛選手を抜擢し、その才能を開花させたことでも知られる名伯楽である。

 大学スポーツ界の名門チームで互いに高みを目指し、全身全霊をかけてぶつかり合う師弟たちの軌跡を追う。

 ここを訪ねたのは、ほぼ1年ぶりだった。梅雨の合間の青空が広がった6月下旬の午後、東京・高田馬場にある東京富士大学キャンパス内の体育館で、卓球部は練習中だった。

 10台ほどの卓球台が並ぶ館内で、選手たちは試合形式の激しい練習に汗を流していた。今年度の部員は12人。今年初めて男子選手1人が入部したが、残りは全員が女子選手で、中国からの留学生も1人いる。女子とはいえ、さすがに大学卓球界のトップアスリートたちが集まっているだけに、打ち出されるスマッシュボールのスピードは凄まじい。現場で体感する体育会の練習の迫力に、ただただ圧倒されるばかりだ。

障害者も同じメニューをこなす

 監督の西村卓二さんは、といえば、体育館の片隅で腕組みをしながら、個々の選手の動きにじっと目を光らせている。時折、気になる動きを見つけると、大声で注意を与えたり、「そう、それでいいんだ!」と励ましたりする。注意が叱責となり、激しい罵声に変わる場面ももちろんある。だが、監督から選手たちに発せられる言葉は、意外なくらいに少ない。選手たちの自主性を重んじる西村さんの指導方針の一端が伺える気がした。

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 そんな中、聴覚障害のある上田萌さんと佐藤理穂さんはどこにいるのか、すぐには見つけられなかった。なぜなら、彼女たちもほかの健聴の部員たちと全く同じメニューをこなしており、この時もそれぞれに別れて健聴の選手を相手に打ち込み練習に励んでいたからである。

 壁際に置かれた折り畳み椅子に腰を下ろし、練習風景を見つめていた東京富士大学理事長の二上貞夫さんと挨拶を交わした。「以前ご覧になってから、もう1年近くですか。あの頃に比べると、上田も、佐藤も随分と成長しましたよ。特に佐藤は見違えるように良くなりましたね」と言って、目を細めた。

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