これまでのあらすじ
ヒノハラ社長の団達也は、シンガポール大学時代の親友ジェームスとリンダと久しぶりに東京のホテルで会うことを約束していた。そこには、経理部長の細谷真理も同席した。ジェームスはロンドンの投資銀行をクビになった後、上海の投資会社で新しいスタートを切っていた。上海ではリンダが「李団 有限公司」という自身の会社を立ち上げ、達也との自動車部品ビジネスを実現するための準備をしていた。
達也のビジネスモデルは、「金子順平が開発した製品を日本で量産し、上海にあるリンダの会社に輸出。リンダは親戚一族のルートを使って、中国の主要メーカーに販売する。資金はジェームスの会社に出資を頼み、3年後をメドに株式公開する」というものだった。
日豊自動車では、低価格のガソリンエンジン車「メイ」の発表が決まった。しかし、目標の性能を実現するためには、エネルギーロスをさらに減らさなくてはならなかった。開発担当役員の湯浅はヒノハラに協力を求め、ヒノハラでは部品の開発に全力を注いでいた。金子は1カ月でガソリンエンジンの燃費効率を高める電子部品の設計図を作成した。また、リチウム電池の能力を飛躍的に高める電子部品の開発のために、1カ月以上も研究室に泊まり込んでいた。ヒノハラでは、いつの間にか金子が開発しているこの部品を「KO1」と呼ぶようになった。
達也は日豊自動車向けの開発製品が完成したらすぐに、ヒノハラを日野原太郎に譲り、真理と金子とともにMTCで新ビジネスを始めようと考えていた。
ヒノハラ研究室
「この車、もうじき500キロです」
金子はそう言って胸を張った。目の前の自動車は、トレッドミルのようなローラーの上を走り続けていた。
「30分間高速充電しただけです。ボクの計算ではあと200キロはいけるはずです」
「実際に道路走行する場合も1回の充電でこんなに走れるんですか?」
と達也が聞くと金子は「実験してはいませんが、600キロくらいなら大丈夫と思います。東京から大阪までの距離ですから、実用ではまったく問題はないと考えています」と答えた。
「大事な話があるんです」
突然、達也は真面目な顔になった。
「ヒノハラのすべての株式を、太郎さんに譲ることにしました。金子さんが発明したガソリンエンジン用の省力用部品の注文は、今後一気に増えるはずですから、ヒノハラの経営は当分安泰です。それから、金子さんのもう一つの発明、つまりK401ですが、この特許をMTCの名前で申請してもいいでしょうか? ボクはこの製品で世界と戦いたいと思っているんです」
「もちろんです。そんなことより、これからもずっと団さんと、真理さんと一緒に仕事ができるなんて、夢のようです」
金子は気持ちが高ぶるのを抑えて言った。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



公認会計士、税理士、

からのご案内




