「「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」」

第42話「製造業に馴染まない会計基準なんかで決算が組めるのかしら」

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2010年7月28日(水)

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これまでのあらすじ

 ヒノハラ社長の団達也は、シンガポール大学時代の親友ジェームスとリンダと久しぶりに東京のホテルで会うことを約束していた。そこには、経理部長の細谷真理も同席した。ジェームスはロンドンの投資銀行をクビになった後、上海の投資会社で新しいスタートを切っていた。上海ではリンダが「李団 有限公司」という自身の会社を立ち上げ、達也との自動車部品ビジネスを実現するための準備をしていた。

 達也のビジネスモデルは、「金子順平が開発した製品を日本で量産し、上海にあるリンダの会社に輸出。リンダは親戚一族のルートを使って、中国の主要メーカーに販売する。資金はジェームスの会社に出資を頼み、3年後をメドに株式公開する」というものだった。

 日豊自動車では、低価格のガソリンエンジン車「メイ」の発表が決まった。しかし、目標の性能を実現するためには、エネルギーロスをさらに減らさなくてはならなかった。開発担当役員の湯浅はヒノハラに協力を求め、ヒノハラでは部品の開発に全力を注いでいた。金子は1カ月でガソリンエンジンの燃費効率を高める電子部品の設計図を作成した。また、リチウム電池の能力を飛躍的に高める電子部品の開発のために、1カ月以上も研究室に泊まり込んでいた。ヒノハラでは、いつの間にか金子が開発しているこの部品を「KO1」と呼ぶようになった。

 達也は日豊自動車向けの開発製品が完成したらすぐに、ヒノハラを日野原太郎に譲り、真理と金子とともにMTCで新ビジネスを始めようと考えていた。

ヒノハラ研究室

 「この車、もうじき500キロです」

 金子はそう言って胸を張った。目の前の自動車は、トレッドミルのようなローラーの上を走り続けていた。

 「30分間高速充電しただけです。ボクの計算ではあと200キロはいけるはずです」

 「実際に道路走行する場合も1回の充電でこんなに走れるんですか?」
 と達也が聞くと金子は「実験してはいませんが、600キロくらいなら大丈夫と思います。東京から大阪までの距離ですから、実用ではまったく問題はないと考えています」と答えた。

 「大事な話があるんです」
 突然、達也は真面目な顔になった。

 「ヒノハラのすべての株式を、太郎さんに譲ることにしました。金子さんが発明したガソリンエンジン用の省力用部品の注文は、今後一気に増えるはずですから、ヒノハラの経営は当分安泰です。それから、金子さんのもう一つの発明、つまりK401ですが、この特許をMTCの名前で申請してもいいでしょうか? ボクはこの製品で世界と戦いたいと思っているんです」

 「もちろんです。そんなことより、これからもずっと団さんと、真理さんと一緒に仕事ができるなんて、夢のようです」
 金子は気持ちが高ぶるのを抑えて言った。

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著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」

 主人公の団達也は、シンガポール大学ビジネススクールで学んだ後、恩師の経営コンサルタント、宇佐見秀夫の薦めで中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。達也は、当時専務の間中隆三らによる不正が常態化、粉飾決算が行われていた。経理課長に就任した達也は、経理部員の細谷真理とともに数々の不正を明るみに出し、間中らを追放した。
 経理部長になった達也は、ジェピーCFOとして会社の再建に着手した。その直後から隠れ負債が発覚し、工場には仕掛かり在庫の山。資金繰りに窮したジェピーは、銀行からも見放され倒産寸前だった。
 ジェピーを救ったのは、かつての級友、ジェームス。ジェピーは、同じく級友のリンダが勤めるアメリカの大手電子部品会社UEPCの傘下に入って新たな道を歩み出した。
 創業者未亡人の大株主、財部ふみの遺言で達也の手にはジェピーの株式が渡ることになったが、達也はそれを手放し、自分の手で会社を立ち上げようと決心した――。
 管理会計が専門の現役会計士である著者による、“読む管理会計”シリーズの第3弾。ストーリーを追いながら、経営に役立つ管理会計の最新の理念と実践的な知識が身につきます。
第一シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」
第二シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理部長、団達也が行く」

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