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従業員の作業を支えるバックヤードが加賀屋の強み

2010年8月2日(月)

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 前回の「顧客の期待を先読む『おもてなし』が加賀屋の強み」で、和倉温泉にある温泉旅館「加賀屋」が、自ら提供する商品を高品質な「おもてなし」のサービスに絞り、その価値を最大化するために、客室係が宿泊客のニーズを先読みし、現場作業の要の役割を果たしていることを紹介した。

 今回は、この重要な役割を担う客室係の働きやすい職場環境を、加賀屋が組織的にいかに整備しているかを明らかにしていきたい。

接客時間を確保するための仕組み

 おもてなしとは、一般に「顧客を手厚く世話すること」であり、加賀屋でそれを行っているのが客室係である。つまり、各客室にいる宿泊客一人ひとりを客室係が手厚く世話することができれば、加賀屋のサービスの価値を高まる。

 従って、加賀屋ではこの「接客時間」を大事にし、それを経営上の重要な指標と位置づけ、それをいかに確保していくのかを常に考え、様々な改善活動に現場で取り組んでいる。このような改善活動の結果、大きな成果を出し、その後の加賀屋の成長に大きく貢献したのが食事運搬の機械化である。

 加賀屋は、各客室で食事を提供し、食後にそこに布団を敷く。最近、多くの旅館は、宿泊客のニーズの変化に伴い、食事はレストランで提供し、各客室は布団ではなくベッドが置かれている。このホテルのような合理的なサービスではなく、加賀屋は今も伝統的な旅館のサービスを大規模に提供している。

 食事は会席料理で、多くの種類の料理を、宿泊客の食べるペースで出していく。調理は厨房で行われることから、すべての料理は最終的に厨房から各客室へ運搬される。食事を部屋で提供する旅館の多くは、客室係が料理を手で自ら運ぶ。小さな旅館であれば、この料理の運搬作業はそれほど大きな負担にならないかもしれないが、多くの旅館では可能な限り料理の運搬回数を減らし、料理をまとめて提供できるようメニューを工夫している。

 しかし、加賀屋は客室数が246あり、総宿泊定員数1450人で、年間宿泊客数が22万人に及び、それを650人の従業員で支える大規模な施設を持つ温泉旅館である。料理を出すタイミングは宿泊客一人ひとり異なり、その料理の内容もすべて同じであるわけではない。

 料理によっては、事前に調理し、それを部屋の近くにあるパントリーの温蔵庫や冷蔵庫で保管し、客室係が食事の進み具合を見ながらそれぞれの料理をそこから運ぶことは可能である。一方、焼き物など保管が難しく、調理してから速やかに提供することができなければ、急速にその品質が低下していってしまう料理もある。この場合、厨房での調理、運搬、提供の作業を速やかに行っていく必要がある。

 厨房での調理作業は計画的に進めることができるが、料理の運搬作業は多くの課題がある。また、加賀屋のような大型の施設を持つ旅館では、料理を運搬する動線も長くて複雑である。加賀屋でも、客室係が自ら料理を運搬することは可能であるが、その作業のために接客時間を削らなければならない。しかし、この料理の運搬作業は顧客満足の向上に貢献しない作業であるだけでなく、客室係を疲労困憊させ、価値を生む接客作業を犠牲にしなければならないムダな作業でもある。

 このムダな作業から客室係を解放するために、加賀屋が1989年に施設を拡張するために建設した新棟「雪月花」のために導入したのが食事の「自動搬送システム」である。この自動搬送システムとは、1カ所にある加賀屋の厨房から各フロアへ料理を運搬するロボットである。

新棟「雪月花」には、食事の「自動搬送システム」が導入されている(写真:内藤 耕)

 料理を載せた台車を自動搬送システムが吊り上げ、また廊下を引っ張り、時としてエレベーターに自動的に入り指定したフロアへ料理を運ぶ。もし、この台車を人間が押し、またエレベーターに乗せて各フロアへ持っていこうとすれば、エレベーターは混雑し、また衝突などの偶発的な事故によって食器が破損してしまうかもしれない。食器の破損も確かに大きな損失ではあるが、それ以上に調理作業を急いでやり直す必要があるだけでなく、その間の料理が出てくるまでをムダに宿泊客に待たせてしまうことになる。

 自動搬送システムでは、この料理の運搬作業をより計画的かつスムーズにでき、宿泊客を待たせることを最小限にすることができる。また、料理の運搬を機械化したことで、その作業から客室係を解放し、より多くの接客時間を確保することができるようになった。さらに、より的確に料理を提供できるようになったことで、おもてなしサービスの品質もさらに高めることができるようになったのである。

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「従業員の作業を支えるバックヤードが加賀屋の強み」の著者

内藤 耕

内藤 耕(ないとう・こう)

サービス産業革新推進機構代表理事

世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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