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上司の“見えない暴力”、それは故意か、無意識か?

褒めるのもしかるのも困難な時代のコミュニケーション術

2010年7月29日(木)

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 もし、自分が意図せずして他人を傷つけていたならば……、それほど悲しくもあり、残念でもあり、その人に対して申し訳ない気持ちになることはない。

 傷つけられた人は、その相手を“イヤな奴”だと言う。

 何であの人は、自分を傷つけるようなことばかり言うのか? なぜ、自分のことを否定ばかりするのか?

 傷つけられた人は著しく自尊心を低下させ、「自分はそんなにダメなのか?」と思い悩む。最初は「関係ない」と思っていても、イヤな思いが繰り返されると無視できなくなってくる。

 以前、おバカな上司(関連記事:バカ上司とスーパー上司の“意味深”な関係)について書いたが、今回は“イヤな上司”について考えてみようと思う。

バカな上司とイヤな上司の違い

 いつの時代も、いくつになっても、イヤな上司はストレスの種である。ある人材派遣会社が行った調査でも、仕事上で強くストレスを感じるのは、「上司との人間関係」が51%と最も多く、この回答は年齢別に見ても同じで、すべての年齢層で最も多かった(出所はこちら)。

 バカな上司は確かに頭にくるが、その怒りをある程度は発散できる。自分が「あのバカ」と思っている上司は、同僚たちも同じように感じているケースが多く、酒のさかなにしやすいからだ。

 あるいはおバカな上司がいると業務が滞ったり、何らかの目に見えるトラブルが発生するから、おバカな上司のそのまた上司に報告することが可能だ。それですべてが解決するわけではないが、少なくとも1人で思い悩むことだけは避けられる。

 ところが、イヤな上司はそうはいかない。

 最初は怒りにも似た感情があったとしても、何度も否定されるうちに「自分が悪いのかも」と責任をすべて自ら背負い込み、ネガティブな感情をため込んでいく。しかも、イヤな上司は必ずしも業務遂行能力が低いとは限らないので、問題が表面化しづらい傾向がある。

 執拗に部下を罵倒したり、追い詰める言動を取ったりするような、いわゆるパワハラに分類されるイヤな上司は、相談センターなども開設されており、SOS発信を受け止める対策も広がりつつある(決して十分とは言えないが)。

 その一方で、パワハラとは断言しづらいイヤな上司は、相性の悪さだけで片づけられてしまうことも多く、部下たちにとっては慢性的なストレスの種となってしまうのである。

他人を決して認めないイヤな奴

 どこの会社でも1人や2人はイヤな奴がいるもので、大抵そういう人は自己顕示欲と嫉妬心を併せ持ち、周囲から注目を集めている同僚や部下がいると、決まってトゲのある一言を吐いて話に水を差す。

 私も以前このタイプのスタッフに、何度もイヤな思いをさせられた。例えば、大学院を修了した時、皆が「よく頑張ったな」とねぎらってくれている中、その人は「末は博士か大臣かなんて昔は言ったけど、最近は博士もインフレ気味だな」と言い放ったり、私が車を買い換えたと知った時に、「あれは意外と安いんだ」などとわざわざ言うのだ。

 他人を褒めると自分の格が下がると思い込んでいるのか、天と地がひっくり返っても他人を認めたり、褒めたりすることがない。別に褒めてくれなくたっていいけれど、いちいち否定する必要はないだろうし、一言多いんだよ、と心底思った。

 不愉快な思いをするたびに、「器の小さい人間だ、相手にするのは止めよう」と思うのだが、なかなか意識の外に置くことができずにストレスを感じていた。とはいえ、嫌な思いはしても追い詰められるほどではなかったので、最後は「そういう奴だ」とあきらめることができたのだった。

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「上司の“見えない暴力”、それは故意か、無意識か?」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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