「常盤文克の「新・日本型経営を探る」」

上海万博で考えた日本に足りないもの

「格差」が中国を経済大国に押し上げる

バックナンバー

2010年7月30日(金)

1/3ページ

印刷ページ

 先日、中国で開催されている上海万博を見学してきました。まず驚かされたのは、そのスケールです。東京ドームに換算すると約70個分に相当する328ヘクタールもの敷地に世界各国のパビリオンが建ち並ぶ。場内には電気バスが縦横無尽に走っています。会期中には計7400万人が来場する見通しで、これは、1970年の大阪万博の6400万人を上回る数字です。

 驚かされたのは規模ばかりではありません。IT(情報技術)のレベルの高さは過去に類を見ないものでした。どのパビリオンに行っても、デジタル技術を駆使した展示が目につきます。上海万博とは何かと聞かれたら、高度な映像技術の「デジタル万博」と言ってもいいくらいです。

 中でも圧巻だったのは中国館です。清明節の祭りで賑わう人々の様子を壮大なスケールで描いた北宋時代の画家・張択端の絵巻「清明上河図」が、長さ約130m、高さ約6.5mの巨大スクリーンに映し出されていたのです。この巨大スクリーンに映し出された絵巻は、まさに生きているようだと言っても過言ではありません。人も馬も力車も、川に浮かぶ船も、往時の様子が目に浮かぶように、生き生きと動いていました。

 ほかにも別室では、中国が1980年代以降に経済的な急成長を遂げた様子や、20年後の2030年に向けて中国が目指す社会の姿が次々にスクリーンに映し出されていました。中国が数千年の歴史の中で蓄積してきた英知と、その集大成となる未来図や豊かな暮らしのイメージを一気に見せられると、これこそ国の威信をかけた展示という印象を受けました。

上海万博は中国人のライフスタイルを変える

 中国館だけでなく、中国の企業や団体などによるパビリオンの展示も、デジタル技術を駆使したものが大半でした。中国はこの万博を、最先端の技術を持つ国であることを世界に誇示する機会ととらえているのでしょう。これらのハイテクを駆使した展示は、間違いなく今後の中国の経済や文化に強い影響を与えるはずです。

 この様子は大阪万博を思い起こさせます。ドーム型の施設や動く歩道、モノレール、パノラマ映画、無線電話など、これまでになかった技術が登場し、誰もが目を見張りました。ファストフードや缶コーヒーが登場したのも、この頃です。これらは確実に、その後の日本人の生活文化を変えてきました。

 同じように、上海万博で中国人が見たり感じたりしたものは、中国の社会や人々の生活を大きく変えていくきっかけになるのではないでしょうか。

 来場した中国人の熱気にも圧倒されました。何しろ地方から数百台もの観光バスに乗った見学客が大挙して押し寄せ、35度前後の暑さの中で時には3〜4時間も並んで欧米や日本などのパビリオンを見学しているのです。不思議そうな好奇心に満ちた眼差しを展示物に向け、時に感動の声を上げていました。

 その熱意というか執念にも似た感情には、旺盛な知識欲だけでなく、自分たちも豊かな生活を享受したいという夢や希望、また強い意思を感じました。それらを目の当たりにすると、中国はまだまだ成長していくのだろうと痛感させられます。

 上海の市街を歩いて百貨店やスーパーマーケットをのぞくと、その繁盛ぶり、急成長ぶりにも改めて驚かされました。中国のGDP(国内総生産)は2ケタ近い成長率で伸び続けており、今年は確実に世界2位になると言われています。また、エネルギー消費量は米国を抜いて世界一になりました。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント20 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

常盤 文克(ときわ・ふみかつ)

元・花王会長
1957年東京理科大学卒業、花王入社。スタンフォード大学留学後、大阪大学にて理学博士。花王で研究所長などを経て、76年取締役。90〜97年まで社長、2000年まで会長。現在は企業の社外取締役、アドバイザリーボードメンバーなど幅広く活躍。著書に『モノづくりのこころ』(日経BP社)、『コトづくりのちから』(同)、『ヒトづくりのおもみ』(同)、『反経営学の経営』(共著、東洋経済新報社)、『いま・ここ経営論』(共著、同)など多数。

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内