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米国の金融規制改革法案と、コンゴのレアメタル

ハイテク企業に課せられる社会的責任

  • 谷口 正次

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2010年8月4日(水)

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 去る7月15日、米国で金融規制改革法案が上院において賛成多数で可決された。

 金融危機の再発防止に向け、規制を大幅に強化するものである。7月21日にはバラク・オバマ大統領が署名して同法は成立した。

 さて、今回のテーマとした米国の金融規制改革法案とコンゴ民主共和国(DRC)のレアメタルであるが、「何の関係があるのか」と思われる読者の方々も多いであろう。世界のマネーゲームの中心地である米国のウォール街と、中部アフリカのDRCは、あまりに遠い存在である。

途上国における活動に報告義務

 実は、DRCなど資源が豊富にありながら貧困にあえぐ国を対象とした法律が、2300ページに及ぶ金融規制改革法案の中に織り込まれているのである。どのような根拠と内容か、解説してみよう。

 今、世界の発展途上の資源保有国各地で、資源の開発・国際取引に際して、政府要人の腐敗、反対する先住民の拉致・拷問・強姦・暗殺・強制移住などの人権侵害、奴隷労働・児童労働など労働問題、そして森林・生態系など環境破壊が起きており、地域紛争、内戦など深刻な問題とも密接に関係している。その結果、国民は自国の資源によって豊かになるはずが、逆に貧困が助長され、いわゆる「資源は呪い(resource curse)」を引き起こしている。この現状を米国がリーダーシップをとって変えようということである。

 その方策として、レアメタルを使用する企業の原材料資源調達行動ならびに鉱物・エネルギー資源の探鉱・開発企業の途上国における事業活動の、透明性を高めることが効果的であるという判断から、企業に毎年報告義務を負わせようということになったわけである。

 対象企業は、米国の資本市場にアクセスする米国および外国企業となっている。

 報告内容として、一つは、企業が途上国から調達した原材料資源の産出国とその産出地域からのサプライチェーンに関する情報である。例えば、彼らの製品にDRCとその周辺国で採掘された金、スズ、タンタル、タングステン、コバルトが使われているか、もし使われているならそのサプライチェーンを記載せよということだ。

 もう一つは、鉱山会社による、途上国における資源開発に際しては、その権益取得費用あるいは鉱区使用料や鉱産税その他費用として、その国の政府に支払った金額に関する情報である。しかもプロジェクトごとに、そして国ごとに。

「紛争鉱物」は使わない

 その報告先は、米国のSEC(Security and Exchange Commission=証券取引委員会)である。

 SECの使命は、「投資家を保護し、公正で秩序ある、そして効率的な市場を維持するとともに資本形成を促進する」ということとなっている。この観点から、資源産出発展途上国で上述のような問題に関係している事業活動やそのような国から原材料資源を輸入して“ものづくり”を行っている企業は、社会的責任があるので投資家にとってはリスクを抱えていることになるわけだから、投資家の保護のためには透明性をもって情報公開しなければならないという理屈だ。要するに企業の重要なリスクマネージメントの問題だという認識である。

 従って、ウォール街とは当然、関係しているというわけだ。

 具体的な例を挙げよう。DRCは、1998年以降約10年間続いた内戦で600万人が殺害されたと言われている。第2次世界大戦以後、最大の犠牲者数である。そのような内戦の資金源となったのが、東部紛争地域に豊富にあるタンタル、スズ、コバルト、タングステンなどである。

 これらの鉱物は、今も違法採掘とルワンダ、ウガンダなど隣国を経由した密輸が続いている。

 そのような鉱物資源のことを、その取引が人々の苦悩と殺戮を拡大させるのに役立っただけだということから「紛争鉱物(Conflict Minerals)」と呼ばれている。そして、このDRC東部は世界の「強姦首都(Rape Capital)」とも言われているほど、女性に対する性的虐待が激しいのである。

 従って、このような紛争鉱物を使って、携帯電話やパソコンその他電子機器などの製品を作っていないか確認するために米国の数千社の企業に情報公開を要求することになるわけだ。ただし、この法律には罰則はない。しかし、その情報は企業名とともにウェブサイトで公開されることになる。投資家あるいは消費者の自主的判断に任せるわけだ。

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