「「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」」

最終回「単独決算にもIFRS適用することになったらどうするか。彼女はそこまで考えていた」

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2010年8月4日(水)

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これまでのあらすじ

 ヒノハラ社長の団達也は、会社を日野原太郎に譲り、自身はヒノハラを辞めて新しい事業を始めようと考えていた。

 達也のビジネスモデルは、金子順平が開発した製品を日本で量産し、上海にあるリンダの会社に輸出し中国の主要メーカーに販売。出資はジェームスに頼み、3年後をメドに株式公開するというものだった。

 達也は、リチウムイオン電池の性能を高める金子の発明「KO1」を、達也と真理の会社MTCで特許申請することを考えていた。

シンガポール

 リンダとジェームスと別れたあと、達也と真理は夜のオーチャード通りを歩いた。達也にとってシンガポールは、いい意味で緊張感のない気の休まる街だ。しかし、真理はやるせない思いでいっぱいだった。

 「くやしい」
 そう言って真理は突然立ち止まった。大きな目には涙があふれていた。言葉も分からない。得意のつもりだった会計もダメ。それでも、新会社のCFOになるつもりでいた。達也に付いていけば何とかなると思っていた。お笑いと言うほかない。

 (あの人の言う通りだわ)

 と、真理は思った。リンダのことだ。この際、身を引くべきなんだろう。ここには私の居場所はないんだわ。そう思うと、無性に悲しくなった。

 「真理ちゃん」
 達也は真理の肩をやさしく抱いた。

 「もし、きみが英語が話せないことや、国際会計の知識が少ないことに負い目を持っているとしたら、それこそ自分を買いかぶっているんじゃないかな」

 真理には達也が言わんとしていることが理解できなかった。
 「リンダはね。きみの何倍もの努力をしてあそこまで成長したんだ。彼女は弱音を吐かない。あの完璧な日本語も、大学に入ってから勉強したんだし、会計だって、金融を勉強するためにシンガポール大学ではじめて学んだんだ」

 「でも、あのひとは頭がいいから…」
 真理は寂しげに言った。

 「それは違う。何かをモノにしたければ時間がかかることを覚悟しなくてはならないんだ。もしきみが彼女より能力的に劣っていると思うなら、彼女の2倍でも、3倍でも勉強量を増やせばいい。それだけのことさ」

 「でも…」
 「じゃあ、ひとつ例を挙げようか。きみはIFRSの勉強を始めた。同じように、リンダも勉強を始めたんだ。彼女はIFRSがメーカーに配慮がないことに気づいた。連結決算ならまだしも、単独決算にもIFRS適用することになったらどのように対応すればいいのか。リンダはそこまで考えていた」

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著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

「熱血!会計物語 〜社長、団達也が行く」

 主人公の団達也は、シンガポール大学ビジネススクールで学んだ後、恩師の経営コンサルタント、宇佐見秀夫の薦めで中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。達也は、当時専務の間中隆三らによる不正が常態化、粉飾決算が行われていた。経理課長に就任した達也は、経理部員の細谷真理とともに数々の不正を明るみに出し、間中らを追放した。
 経理部長になった達也は、ジェピーCFOとして会社の再建に着手した。その直後から隠れ負債が発覚し、工場には仕掛かり在庫の山。資金繰りに窮したジェピーは、銀行からも見放され倒産寸前だった。
 ジェピーを救ったのは、かつての級友、ジェームス。ジェピーは、同じく級友のリンダが勤めるアメリカの大手電子部品会社UEPCの傘下に入って新たな道を歩み出した。
 創業者未亡人の大株主、財部ふみの遺言で達也の手にはジェピーの株式が渡ることになったが、達也はそれを手放し、自分の手で会社を立ち上げようと決心した――。
 管理会計が専門の現役会計士である著者による、“読む管理会計”シリーズの第3弾。ストーリーを追いながら、経営に役立つ管理会計の最新の理念と実践的な知識が身につきます。
第一シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理課長、団達也が行く」
第二シリーズ【「熱血!会計物語 〜経理部長、団達也が行く」

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