• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「わさびのにおいで命を救う」を生んだ、障害者のチカラ《前編》

シームス

  • 高嶋 健夫

バックナンバー

2010年8月9日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 障害のある人たちには、健常者が持ち得ない独自の「知見」がある。日常生活で直面する様々な不自由さ、不便さを乗り越えるための創意工夫、健常者とはひと味違うモノの見方・捉え方、さらには研ぎ澄まされた感覚や感性――。

 超高齢社会を迎えた現在、こうした障害者ならではの生活体験や情報・知識は、企業が商品開発を進める際のヒントやアイデアの宝庫であり、新たな価値を創造するための貴重な「社会資源」になっているとさえ言えるだろう。

 本連載では、これまで主に常用雇用という形で障害者の活用を図る取り組みを追ってきたが、今回は少し視点を変え、独自のビジネススキームで「障害者のチカラ」を企業活動に取り込もうという動きをルポする。

 前編では聴覚障害のある女性を社外アドバイザーに起用し、「香り」を使ったオリジナル製品を開発しているバイオベンチャーのシームス(東京・千代田区)、後編では様々な専門知識を持つ“障害のあるプロフェッショナル”を組織化し、「ダイバーシティ・ヴィレッジ」と名付けてクライアント(顧客企業)の商品開発を支援している広告大手、博報堂の専門部署「博報堂ユニバーサルデザイン」を取り上げる。

 いずれも、「企業と障害のある人たちとのコラボレーション」を摸索する新しい試みである。

 昨年4月、“世間の意表を突く”新しいタイプの火災報知器が発売された。火災が起きたことを、「わさびのにおい」を発生させて知らせる「臭気発生装置」というものである。開発・発売したのは、独自の香りビジネスを展開するバイオベンチャーのシームス(本社東京・千代田区)だ。

 大手メーカー製の市販の住宅用火災警報器(住警器)と組み合わせて、親機である火災報知器が作動すると同時に、子機である臭気発生装置が信号を受け取り、わさびのにおい成分を室内に拡散させる仕組みだ。主な販売ターゲットは聴覚障害者。加齢によって聴力が衰えた高齢者も含めて、一般の「警報音」が聞こえない、聞こえにくい人は国内に約600万人いると推定されている。そうした人たちのために、音だけでなく、光や振動で知らせる火災報知器はそれ以前からあったが、においによる火災報知器が商品化されたのはこれが初めて。視覚、聴覚に代わる、いわば「第三の感覚」である嗅覚に着目した画期的な新製品なのである。

レム睡眠の状態でも目覚める

 シームスでは2003年頃から「就寝時でも目覚めるにおい」の研究開発に着手。開発目標を「刺激臭でありながら、人にも環境にも安全なにおい」に置いて研究を進め、最終的に、鼻を突き刺すようなわさび独特のにおい成分である「アリルイソチオシアネート」の活用にたどり着いたという。

画像のクリックで拡大表示

 発売前に滋賀医科大学で臨床試験を行ったところ、健常者と聴覚障害者合わせて約50人の被験者のほぼ全員が就寝中でもわさびのにおいを嗅いでから1~2分で気づき、しかも「深いレム睡眠の状態でも自然に目が覚め、起きてからも冷静に行動できるという結果を得た」と漆畑直樹社長は説明する。

 希望小売価格は親機とセットで5万2500円。家庭用の火災報知機としては高額ながら、一般住宅への設置を義務づけた改正消防法の施行で、住警器の設置が進んでいる絶妙なタイミングで発売したこともあって話題を集め、新聞、雑誌、テレビの取材が殺到。発売後1年半近く経った現在も、マスコミの取材は引きも切らずに続いている。

 シームスは2000年11月、「イー・ワンジャパン」の名で創業。翌年6月に「ピクセン」に社名変更、さらに2006年10月に現在の社名となった。創業以来一貫して追求しているのが、「バイオミメティクス」による香りビジネスの展開だ。

コメント1

「障害者が輝く組織が強い」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

もっと事業を効率化して、料金を下げて、消費者に貢献しないと業界はだめになってしまう。

和田 眞治 日本瓦斯(ニチガス)社長