• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

それはノイズですか? それとも上質さの証ですか?

【五感と期待編その1】音でデザインを再評価してみる

2010年8月18日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 エクスペクトロジー(期待学)とは、「期待する」という意味の“Expect”と「思想」を指す“Logos”という2つの語意を合成したデザインや発想を巡る新しい考え方の概念である。エクスペクトロジーは日本語では「期待学」と訳され、著者がデザインを人間科学的側面から研究する中で最も注目してきたテーマであり、製品やデザインを巡る使い手の期待について研究することを目指す。

 「期待感」や「不安感」は、まさに使い手が製品を使い始める前に必ずと言っていいほどとらわれる感性価値である。エクスペクトロジーはそうした製品や環境、サービスに至るまで、様々な場面で使い手が抱く「使ってみたい」という動機や「使いやすそう」と予感する心理的なメカニズムの有り様に焦点を当てている。

 今回の連載では読者の皆さんにエクスペクトロジーの考え方や技術を、具体的な事例や実験を通じて紹介していく。製品やデザインが目指すべき「期待を超えた上質さ」を作り上げるための気づきを、この連載から得ていただければこんな嬉しいことはない。

 私たちは、常日頃から特に意図することもなく感覚器官や身体をフルに駆使して外界の状況をとらえている。食事の時間は、まさにそうした五感が活性化している典型とも言える時間である。

 食卓に運ばれた美しく彩られた料理の数々に思わず目を奪われ、ほのかに漂ってくる香りに大いなる期待を抱いて箸を出す。そして指先を通して伝わってくる食材の様子から、口に入れた時の感触まで様々な想像が脳裏を巡る。私たちの意識の中で速やかに進みゆく、誰もがよく知る日々繰り返される「期待感」に満ちた食事風景である。

 この一連の食事行為にアイマスクをかけて再び試みてみる。普段、頼りにしている視覚情報が遮断されることによって私たちは一時的なパニック状況に陥る。すると視覚以外の感覚器官が総動員されて、この状況を回復させようと試みる。視覚以外のいかなる五感情報がこの局面打開に有効か、全神経が研ぎ澄まされていく。指先は空間を把握しようとまさぐり、周りの音に聞き耳を立てる。まさに五感における恒常性が機能化し始める。

 エクスペクトロジー(期待学)研究の最初の話題として考えてみたいのが、こうした私たちの感覚器官の恒常性(ホメオスタシス)に着目したデザインの心理面に関わる評価の手法である。五感の相互情報から導き出される一定の心象、そこに対して視線を変えて深掘りすることは、製品やデザインを全く違った意識で評価し、製品を形作る価値をより客観的に判定するヒントを与えてくれるものと考える。

 私はこれらを五感の深掘り評価、通称PIT技術理論(Perspective insight Technology、五感を深耕する五感の恒常性に注目した期待学の研究理論)と呼んでいる。今回はそうした五感の情報の深掘りに注目して、上質なモノづくりがされているかどうかを、その技術の考え方の基本的な理論に沿って解説したい。

目隠しすると、音に敏感になる

 アイマスクをつけて食事を始めた瞬間から、実にそれまでは聞けていなかった様々な「音」が耳に飛び込んでくるはずだ。この聞き耳を立てるという行為に注目して、1つの仮説的実験を試みてみる。数人の被験者に普段使っているティーカップを使ってお茶を飲んでもらう。

 まず1回目は、普段通りにお茶を飲んでもらう。次に、同じ行為にアイマスクをかけて同じように体験してもらう。実験では、彼らがティータイムを楽しむそれぞれの行為と、その行為によって引き起こされるすべての音の風景を映像とともにスケッチさせてもらった。

画像をクリックすると動画をご覧いただけます。(WMV形式)

 カップが幾度となくソーサーに接触する音、ティースプーンを上げ下げする度にカップやソーサーとの間で奏でられる予期せぬ音、カップを置いた衝撃がテーブルに伝わり響く音。意外にもこんな音がしていたのかと、被験者本人でも不思議な感覚にとらわれるほど、様々な音が発生している。

 しかし、私たちは普段のこうした場面において、よほど意識して聞いたもの以外にはほとんどと言っていいほど、音に対する記憶を持っていない。私たちはどうやら自らの都合に照らして、勝手に周囲の音を強調してとらえたり、時にキャンセルしたりしながら生活しているではないかという推測が浮かび上がってくる。

 この実験に参加した被験者から得られた感想によれば、普段同じ行為をしている時には全く気にしていない音が、アイマスクをつけた途端に聞こえ始める印象があったという。また周囲の音を意識して聞くことによって、今までとは異なる種類の音がより強く印象に残ったという談話が収集されている。

コメント8

「エクスペクトロジー(期待学)が生む上質なモノづくり」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

社長に就任してずっと言っているのが ファンダメンタルズの強化。

安形 哲夫 ジェイテクト社長