「社員には知らしむべからず」の会社が多い現状
仕事で経営者に会うと、「うちの社員には経営者感覚がない」「会社の状況が分かっていない」というため息を聞くことが少なくない。そんな時、私は「社員の皆さんが経営情報に触れられる機会はどれくらいあるのですか」と質問を返す。
世の中にはまだまだ「社員は由(よ)らしむべし、知らしむべからず」という会社が多いと感じる。説明するまでもないかもしれないが、これは中国の論語にある孔子の言葉を引用したもので、もともとの意味は『大辞泉』(小学館)によると、「為政者は人民を施政に従わせればよいのであり、その道理を人民に分からせる必要はない」というものだ。
「経営者感覚を持て」とは、社員一人ひとりも会社の経営を担う一員であるという自覚を持てという意味で使われる。そのためには経営の状況が分からないといけない。経営情報が必要なのだ。
IR(Investor Relations:企業が株主や投資家に対し、投資判断に必要な情報を適時公開・広報すること)が半ば義務付けられている上場企業はもちろんのこと、経営情報を積極的に開示(ディスクロージャー)する会社も増えてきてはいる。
しかしながらIRをはじめ経営情報の開示には、膨大な労力と費用が必要だ。いったん公開の方針を決めてしまうと、自社に有利な情報だけを流すわけにもいかなくなる。それは、いささかでもすねに傷を感じている経営者には気が重い話だ。
社内で経営情報を共有するとなるともっと大変になる。投資家と違って一般社員の誰もが経営情報をいきなり読めるわけではない。一時的に数字の見方などを研修などで教えたとしても(それだけでもかなり大変だが)、日常的に触れていないとせっかく覚えた知識も忘れてしまいがちだ。
中途半端に伝えたり、一部のおめでたい情報だけを伝えても、社員からはかえって誤解や不信を招くことになる。結局はわざわざそんな手間までかけて、社員と経営情報を共有するまでもないとなっているのが実情だろう。
情報は恣意的に伝えられるのではなく、基本的にすべて公開されていることに価値がある。
一方では、「社員はそもそも日々の仕事をするうえで、経営情報など欲しがってはいない」という意見もあるだろう。現場からすれば「かえって面倒くさい」「経営情報を共有する時間があったら目の前の仕事をしたい」というのも本音だ。こうした様々な理由で、「社員は由らしむべし、知らしむべからず」の会社が圧倒的に多い現実が続いているのではないかと思う。
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1986年東京大学卒、同年リクルート入社。人事部を経てHR事業部へ。大手から中小まであらゆる規模、あらゆる業種の企業を対象に、採用・組織作りやブランド構築を支援する。全社表彰、MVPほか各賞を受賞。その後マーケティングの新規事業立ち上げに参画、軌道に乗せて2002年に退職。期間限定でベンチャーの立ち上げに参画した後、2003年9月に企業理念の共有浸透を専門とするコンサルティング会社、ブライトサイド コーポレーション(正式名称ブライトサイド株式会社)を設立、現在に至る。







