「リーダーの条件 あなたは「勝ち残る組織」を創れるか」

「落としどころ探し」でいいのか?

マネージャーのためのビジネス交渉学

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2010年9月2日(木)

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“落としどころ探し”が、本当のビジネス交渉?

一色正彦・金沢工業大学大学院 客員教授/パナソニックラーニングシステムズ 顧問

 マネージャーのみなさん、これから、初めての顧客との交渉に向かう部下に、こんな指示をしていませんか。

 「交渉で大事なのは、“落としどころ”を探すことだ。まずは、こちらの条件を“高めに”提示して、相手の出方を見て、うまく“取りまとめて”こい。期待しているぞ!」

 交渉の最終段階で、落としどころを探すときもあります。しかし、落としどころは、最初から探すものでしょうか。まずは、“高め”の条件を出し、相手の出方次第という“出たとこ勝負の交渉”でいいのでしょうか。旅行中に露店で安くお土産を買うのであれば、それでもいいでしょう。しかし、これから初めての顧客と会い、長く、良い関係を作ろうとする交渉で、本当にこの方法を選択してもよいのでしょうか。

交渉には、成功確率を上げる方法論がある!

 “交渉学”という研究があります。米国ハーバード大学のロジャー・フィッシャー教授が、1978年に発表した論文に始まる研究です。これは、学者が理想的な交渉を卓上で考えた研究ではありません。実際にあった数多くの交渉事例を分析して、成功確率を上げるための理論パターンを研究した科学的で、実践的な方法論です。Win-Winは、この研究から導き出されたキーワードです。

 国家間の紛争解決の研究から始まり、ビジネス交渉の分野にも広がりました。米国では、ロースクールやビジネススクールなどで教えられている人気授業です。グローバル企業では、交渉力は社員の基本的な能力の1つとして育成・教育されており、最近では、日本の大学でも、交渉学が教えられるようになってきました。ここでは、マネージャーのみなさんに、交渉の成功確率を上げるための“ビジネス交渉学”をご紹介します。

交渉シナリオ準備に必要な3つのキーワード

 まず、交渉で重要なことは、事前にきちんと交渉シナリオを準備することです。準備8割、現場対応2割と考えてください。交渉準備に必要なポイントは以下の3つです。

◆その1、交渉で何を実現したいかを決める!(Mission、ミッション)

 ビジネス交渉のゴールは、合意でしょうか。合意は、目標達成の手段です。交渉準備では、最初に、交渉で何を実現したいのかを設定します。これを交渉学では、“ミッション”といいます。ミッションの設定は、交渉準備の基本中の基本ですが、日本人にはあまり馴染みがなく、難しいものです。私も、交渉学を学習し始めたころ、ミッションの設定に悩みました。

 例えば、新しい顧客に新製品を買ってもらう交渉の場合を考えてみましょう。もともと、なぜ、この顧客に新製品を買ってもらいたいのでしょうか。新製品を買ってもらえば、どの顧客でも良いのでしょうか。あなたの会社の新製品を買った顧客には、どのような価値があるのでしょうか。そして、それは、あなたの会社にとっても価値があるのでしょうか。

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著者プロフィール

一色 正彦(いっしき・まさひこ)

金沢工業大学大学院 客員教授
 大阪外国語大学(現大阪大学)卒。東京大学「先端知財人材次世代指導者育成プログラム」修了。パナソニックに入社し、ネットワーク事業の海外担当として、各国企業との交渉を経験。その後、デバイス事業の法務課長として、事業提携等のリスク分析と交渉シナリオ立案、海外弁護士との交渉等を経験。パナソニックIT教育研究所総括参事として、交渉人材の育成を行うと共に、東京大学大学院、慶応義塾大学大学院、金沢工業大学大学院等において、交渉学研究と人材育成・教育を行い、現在に至る。東京大学大学院非常勤講師、慶応義塾大学大学院非常勤講師、パナソニックラーニングシステムズ(株)顧問、(株)グリア顧問。著書に「ビジュアル解説 交渉学入門」(共著、日本経済新聞出版社)、「日経文庫 知財マネジメント入門」(共著、日本経済新聞出版社)、「新・特許戦略ハンドブック」(共著、商事法務)など。



このコラムについて

リーダーの条件 あなたは「勝ち残る組織」を創れるか

 役職があがり、部下ができ、これまでのように自分の成果だけを追求すればよいわけではなくなった。だからといって、マネジャーがなにを意識し、どう行動すればよいのか――。
 経営戦略やマーケティングの押さえどころを始め、ロジカルシンキング、交渉力、チームビルディングから部下の性格判別まで、単なるマネジャーから一歩踏み込んで、“リーダー”となるための必須ポイントを解説する。

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