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“正社員様”に見下される非正規社員の憂鬱

安易な正社員化ではどちらも救われない

2010年8月26日(木)

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 「私たちが、誰のために働かされているか分かります? 正社員のためですよ。何もしない正社員のために、契約社員は必死で働かされてるんです」

 ある会社で非正規社員として働く女性は、こう漏らした。

 この女性は3年前、出産を機に退職した。その後は育児に専念していたが、人事部のかつての同僚から「もし働く気があれば、契約社員として同じ部署で働けるけど?」と誘われ、会社に復帰した。

 正社員だった時と比べると、年収は2割ほど下がった。だが育児と両立するには契約社員の方がいい。こう判断したそうだ。

 「実はこういう立場になるまで、正社員の怠慢ぶりに気がつきませんでした。正社員でいる時は、残業もしないで自分の仕事が終わればさっさと帰ってしまう契約社員たちを、腹立たしく思ったことも正直あったんです。でも、いざ自分が逆の立場になってみると、契約社員の方が真面目に働いていることに気づきました」

 不安的な雇用形態であるがゆえに真面目に働く非正規社員。そして雇用が保障されているのをいいことに手抜きをする正社員──。こうした正社員の存在は、「職場のフリーライダー(ただ乗り)問題」として近年、注目を集めている。

 例えば台車を動かす場合、人数が少ないと一人ひとりが必死に押さない限り、ぴくりとも動かない。ところが人数が多くなってくると、一人くらい力を入れなくても台車は動く。しかも、誰が手を抜いているのか一見しただけでは分からない。これが、いわゆる職場のフリーライダー問題だ。

 手抜きをしてフリーライダーとなる人は、どんな組織でも規模が大きくなれば出現する。「2:6:2の法則」とも呼ばれるが、上位2割の人が高い生産性を上げ、中位6割の人が並の働きを示し、下位2割の人が“お荷物”としてぶら下がる。

 下位2割のぶら下がりが、自分よりも賃金をたくさんもらっている正社員だとしたら、非正規社員は「ふざけるな!」と愚痴の一つや二つも言いたくなるだろう。

実は非正規社員の方が真面目に働く

 非正規社員という雇用形態が広まった当初は、「昇進や昇給などの機会がないので、手抜きをするケースが多いのではないか」と懸念された。

 ところが実際には、働きぶりを評価されないと契約を更新されないケースもあるので、非正規社員は手抜きをするどころか懸命に働く。一方で正社員は評価が悪いからといって、それだけでクビになることは滅多にない。そのため、正社員の方が手を抜く可能性が高いとする調査結果もある。

 「一度、怠慢が目に付くようになると、何かと気になるようになってしまって。正社員の方が会社のルールを守らないってことが分かったんです。契約社員はルールを守らないと、『意識が低い』『モチベーションが低い』というようにマイナスの評価を受けます。ところが正社員は『ちょっと忙しくて』という言い訳が通る。『だらしのないヤツ』と言われても、評価まで下がることはないんです」

 まさにダムの決壊。彼女の不満は止めどなく続いた。

 「契約を更新してもらうためには、数字で成果を出さなければならない。ですから、限られた時間の中で効率よく仕事をこなさなければなりません。残業代も出ませんし、育児と両立するために契約社員を選択していますから、時間外勤務は物理的にできないんです。一方で正社員は必ず残業代が出る。だらだらと仕事をしていても、会社に居残っていた時間に見合った残業代をもらえるわけです」

 「あ~、それにね。正社員の方が意外と仕事ができないんですよね。若い時から甘やかされているからでしょうか? 大したことをしていなくても、ある程度までは横並びで昇進し、仕事も任されるようになるじゃないですか? 契約社員は採用される時点で、会社が求めるレベルに達していると判定されて初めて採用されますから。その意味では、契約社員の方が仕事ができて当たり前なんですよ。なのに彼らには上から目線で見られる。正社員って、そんなに偉い存在なんでしょうか」

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「“正社員様”に見下される非正規社員の憂鬱」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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