外食業界を震撼させた“牛丼デフレ戦争”
牛丼業界の価格競争が激化している。昨年秋から業界大手のすき家と松屋が相次いで値下げを実施し、牛丼並盛の価格はすき屋が280円、松屋が320円となった。値下げ競争はそれにとどまらず、今年はすき家と松屋が再三にわたる「期間限定値下げ」を実施し、牛丼並盛の価格は、ついに250円にまで低下した。そして今までは「値下げはしない」と静観を決め込んできた吉野家も、客数減をこらえきれずに、「期間限定値下げ」で価格競争に参戦した。
牛丼並盛価格の推移
| 吉野家 | すき家 | 松屋 | |
|---|---|---|---|
| 従来価格(値下げ戦争前) | 380円 | 350円 | 380円 |
| 現在の通常価格 | 380円 | 280円 | 320円 |
| 2010年4月期間限定値下げ | 270円 | 250円 | 250円 |
| 2010年6月期間限定値下げ | 値下げせず | 250円 | 250円 |
| 2010年7月期間限定値下げ | 270円 | 250円 | 250円 |
※各種資料に基づき、著者作成
“250円牛丼”は、外食業界に少なからぬ衝撃をもたらした。ファストフードやファミリーレストランなどの顧客が、一斉に牛丼チェーンに流れたからである。牛丼業界で始まった価格競争は、業態の壁を越えて、外食業界全般に波紋を起こしている。利益率数パーセントの低収益企業がひしめく外食業界で、価格破壊の波が広がれば、致命的打撃を被る企業も少なくないはずだ。こうしてすき家と松屋の低価格攻勢は、直接競合する吉野家だけでなく、外食業界全体を恐怖の渦に陥れたのである。
ほどほどに衝撃的?な250円牛丼
ただし消費者の反応は、それに比べれば穏やかなものであった。牛丼の値下げに対して消費者は敏感に反応したものの、驚きの声はそれほど強いとは言えない。今の消費者は“価格破壊慣れ”しており、企業の採算が取れようが取れまいが、価格は下がり続けるものだと認識している。
数年前、外食・コンビニ業界の各社が500円程度のメニューを次々と投入し、「ワンコイン戦争」と呼ばれたことがあった。だが今では、ワンコインでは高い印象さえある。消費者は200円台の牛丼にもすぐに慣れてしまい、驚きは継続しないと予想される。これがデフレ経済の怖いところである。
このように牛丼デフレ戦争は外食業界を震撼させたものの、消費者は「モノの値段は安くなって当然」と平静に受け止めた。総体的に見れば、250円牛丼の衝撃は「ほどほど」といったところなのである。
価格破壊は第2幕へ
日本の消費市場でビジネスを行う企業にとって、牛丼デフレ戦争は“対岸の火事”とは言えない。消費者物価指数の推移を見ると、1990年代後半から2000年代初頭まで消費者物価の下落傾向が続いた(1997年は消費税率引き上げのため異常値となっている)ことが確認できる。この時期、小売業界や外食業界に価格破壊の第1波が押し寄せたのである。1995年にはマクドナルドが「80円バーガー」で価格破壊を仕掛け、1999年にはユニクロの「フリース旋風」が業界を席巻した。

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セレンディップ・ラボ代表取締役。日本総合研究所主席研究員などを経て現職。経営コンサルティング業務の傍ら、鋭く“現代を斬る”著作を発表しているほか、個人投資家としても活躍中? 日経ビジネスオンラインで「

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