―― 藤野英人さんの著書『もしドラえもんの「ひみつ道具」が実現したら』は、例えば竹とんぼのような道具で空を飛べる「タケコプター」が世の中に登場したら、人々の生活がどう変わるか、企業がどのようにビジネスチャンスを見出すか、それは株式市場にどのような影響を与えるかといった視点で経済の仕組みをまとめています。
奇想天外な事象ではありますが、でも不思議なことに身近な印象も持ちます。そもそも、なぜ「ドラえもんのひみつ道具」で経済を語ろうと考えたのでしょうか?
藤野 英人(以下、藤野) 構想そのものは5年ほど前からありました。もともと私は経済、そして投資の本質に迫るような話をしたいと思っていたのです。日本人って、経済や投資の話をしようとすると、ハードルが高いと遠慮してしまうのか、お金にがめついと思われるのが嫌なのか、敬遠しがちでしょう。でも、アメリカやヨーロッパ、中国など海外の方々と話をしていると、普通のこととして受け入れて理解している。
経済はそれこそ私たちの日々の生活に直結しているのですから、きちんと理解していて損はないはずです。この点で、日本という国はすごく損をしているのではないかと感じていて。
映画「アバター」にヒントを得た
―― そこで、なぜ「ドラえもん」?
藤野 普段は「経済や投資に興味はない」と言っている人こそ、もっと恩恵を受けるべき対象だと考えているのです。そういう人に読んでもらえる本を作りたかった。でも、『藤野英人が語る日本経済の10の課題』なんてタイトルをつけても、たぶん誰も読んでくれない(笑)。
そんな折、昨年に公開されたジェームズ・キャメロン監督の映画「アバター」を観て、「これだ!」と。
―― 多くの人が初めて3D映像を体験して、とにかく話題になりましたね。
藤野 本格的な3D映画という話題性で、観客を呼び寄せました。あの作品には環境や資源の問題、ハンディキャップがある人たちの気持ち、資本主義のあり方といった21世紀における世界の様々な課題がうまく内包されている。何かしらが観た人の心にちゃんと引っ掛かるように作られている点に感心しました。
この方法論が使えると思ったのです。興味を惹くための“アバター”としてドラえもんを位置づけて、ひみつ道具と経済事象をからませることで、難しく思われがちな経済や投資の話でありながら読んだ方が「なるほど」と納得してもらえるような問いかけができるのではなかろうかと。
―― 確かに「がん創薬のバイオテクノロジー企業が20社できたら」というのは現実的な仮定ではありますが、それよりも「タケコプターが世の中に登場したら」という問いかけのほうが、すっと頭に入ってきます。不思議ですが・・・。
藤野 ドラえもんが持っているワクワク感や楽しさ、敷居の低さを利用しようと思ったのです。経済や金融のプロフェッショナルが読んでも納得していただけるレベルでありながら、一般企業の会社員や専業主婦、学生など幅広い層に内容を伝えたいなぁと。
だって、米アップルのタブレット型端末「iPad(アイパッド)」が出ると世の中がどう変わるかということと、タケコプターが出て世の中に何が起こるかということを考える作業って、実はほとんど同じことなんですよ。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



投資信託運用のレオス・キャピタルワークス(東京都千代田区)の創業者・取締役最高投資責任者(CIO)。







