前回のコラムに引き続き、今回も中国を訪れて感じたことを書いてみたいと思います。前回の繰り返しになりますが、中国という国の勢い、エネルギーには本当に圧倒されました。
誰もが豊かな生活に憧れ、上を目指して頑張る活気と熱気、そして夢や目標に溢れていました。日本のどことなく満足と不満が入り交じった、沈滞ムードを感じさせる冷めた空気とは対照的です。
日本は高度成長期を経て世界の経済大国になり、人々の生活は昔とは比べものにならないほど豊かになりました。ところが、バブル崩壊とその後の「さまよう20年」を経た現在、何となく閉塞感が漂っています。中国や韓国と比べると、日本の世界における存在感はどんどん薄れてきているように感じます。最近はタイやベトナムも力をつけており、もはやジャパン・アズ・ナンバーワンとばかり言っていられません。
さて、ここで日本はどうするか。改めて日本の強さと弱さの原因を考えてみなければなりません。
まず挙げられるのは、まずまずの満たされた生活の中で、何かを求めて物事に挑戦するというハングリー精神を失い、また同時に集団の中で協働するという組織力を劣化させてしまったことではないでしょうか。
日本企業は世界市場で厳しい競争にさらされていますが、技術・品質はともかく、その切り口はコストや効率、生産性、そして原価や売価、利益といった目先の競争にばかり目を奪われていて、視野狭窄に陥っているように思います。
いま、日本は人も企業も小さな「個」に固まりすぎていて、成長・発展の推進力となる大きい夢とか熱い思いが欠けているのではないでしょうか。これでは、米アップルのiPhoneやiPadに代表される、世の中を変えていくような画期的な製品は生まれてきません。
言い換えれば、「たこつぼ」に入ってしまっているのです。ここから抜け出さないと、もはや世界市場では勝負になりません。たこつぼ状態から脱出する一つの策は、日本人が本来持つ強さである集団の力を取り戻し、これを最大限に生かすことではないでしょうか。
日本人の強さは集団力にあり
そもそも日本が戦後の苦境から這い上がり、世界が目を見張るような高度成長を成し遂げることができたのは、日本人が持つ集団の力があってこそでした。我々は集団で働く時に元気がわき、能力をフルに発揮できる民族なのです。
それでは、この集団力を取り戻すには、どうすればいいのでしょうか。
まず重要なのは、経営トップと社員との距離を縮めることです。高度成長期を思い返してみると、トップと社員との距離は、企業の規模に関係なく、今よりもっともっと近かったものです。例えば、ホンダの本田宗一郎さんは現場を大切にし、社員に呼びかけ、社員の話によく耳を傾けていたといいます。ホンダに限らず、一般にどの会社もそうでした。
トップと現場との「タテの距離」を縮めるには、トップが現場に入るという行動そのものが重要なのではありません。トップが現場の人たちとコミュニケーションを重ねることで、現場の考えや課題などを自分のものとして取り込み、同時に現場に会社が目指す方向やビジョンを伝えることに意味があるのです。
コミュニケーションは大事です。ある調査会社が実施したアンケートでは、コミュニケーションが多いか少ないかによって社員のモチベーションが左右され、会社の業績の良し悪しにも結びつく、という結果が出てきました。
トップをはじめ全員がコミュニケーションを通して、夢や思い、また悩みを共有する。このことによって、上下の信頼感が醸成されます。「よし頑張ろう」と現場の人たちの気持ちも強くなるでしょう。
ところが、信頼感がないまま、ただ「成果を上げろ」とハッパをかけるだけでは、社員の反発を買うだけです。トップと現場とのタテの信頼感を強め、その距離を縮めていくことは、結果として組織の活性化と競争力の強化につながるのです。
無理です。現実は最初のコメントにあった「飲みにいけない人とは1ヶ月ひとことも話さないことも多いです。」が状況ですか。もはや日本人が集団が得意というのは幻想です。残念ながら、「社内協調より社内競争のほうが有効だと経営陣が信じて」成果主義を導入しそれを改めることなく10年過ぎた以上、もはや互いの信頼感はとっくに消滅してしまっています。競争しながら協調しましょうなんて、そんなことができる人は相当人格が練れた人だけです。信頼、信用が切れるのはあきれるほど簡単ですが、つなぎなおすのは不可能に近い。ましてや2年前に派遣切りで更に信頼を更に深く傷つけたばかりでしょう。無理です。(2010/09/01)