「武田斉紀の「行きたくなる会社のつくり方」」

第10回 それでは「権限委譲」ではなく単なる「丸投げ」です

権限委譲したつもりでも現場が元気にならない3つの理由

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2010年8月30日(月)

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「丸投げ」では結果責任を負わされるだけ

 経営者の口ぐせの一つに、「うちの社員は考えない。もっと自ら考えて、行動してくれればいいのだが」というのがある。皆さんも聞いたことがあるだろう。しかし状況を突っ込んで聞いてみると見つかるのは、そもそも社員に考える自由を与えていないという事実だ。

 上から命令が飛んでくる。「お前たちも考えろ」と言われるので考えて提案したら、「違う」と怒られる。なぜ違うのか、理由の説明はない(聞きたくても聞ける雰囲気でもなかったり)。やがて上の方針も何となく分かってきて、命令に対して「こうした方がもっと良くなりませんか」と考えて提案すると、「言われた通りやっていればいいんだ」と返ってくる。これでは誰もが考え、行動することをあきらめる。

 そんな状況を見た外部のコンサルタントは「現場にもっと任せましょう」と経営に提案する。「権限委譲(エンパワーメント)」だ(エンパワーメントについて、言い換えとして国立国語研究所は「権限委譲」を当てており、大手ビジネススクールのグロービス・マネジメント・スクール(GMS)も現状同義として扱っている)。

 経営や上司は「分かった、であれば権限委譲してみよう」と言いだし、「さあ任せるから考えてみなさい」と部下や現場に号令をかける。けれども社員は一向に自ら考えも、行動もしない。いつまでたっても「権限委譲」の浸透した組織は生まれない。なぜか。

 最悪なのは「丸投げ」のケースだ。「任せたからね。自由に考えられて行動できていいでしょ。その代わり結果だけは頼むよ」。上司が自分の仕事と結果責任を放棄している。上から結果を問われたら上司はこう答えるだろう。「権限委譲の方針に従って部下に任せたのですが、結果を出さないのですよ。権限を移した以上、彼らの責任です」と。

 だったら上司であるあなたの仕事は何なのだ?

 「丸投げ」された部下はたまらない。結果責任を負わされるだけなら任されない方がいい。貝になって、指示通りに仕事をこなすことに徹した方が、まだ幸せだ。果たして上意下達の組織で、会社は時代の変化を乗り切れるのだろうか。変化は現場から起こっているはずなのに。

 私自身はとても貝にはなれそうもない。大人人生の半分を占める仕事時間を、貝になって過ごすなんて半分死んでいるようなものだ。その会社はどんどん『行きたくない会社』になっていくだろう。上から言われた通りにやるだけの毎日をたとえ過ごせたとしても、人は元気にはなれない。社員に活力のない状態は、会社にとっても、日本にとっても良くないはずだ。

 「丸投げ」は論外としても、社員が一向に自ら考えも、行動もしないのは、それを阻んでいる何かがあるからだ。今回はその話をしたい。

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著者プロフィール

武田 斉紀(たけだ・よしのり)
企業理念コンサルタント
ブライトサイド コーポレーション代表取締役社長

武田 斉紀1986年東京大学卒、同年リクルート入社。人事部を経てHR事業部へ。大手から中小まであらゆる規模、あらゆる業種の企業を対象に、採用・組織作りやブランド構築を支援する。全社表彰、MVPほか各賞を受賞。その後マーケティングの新規事業立ち上げに参画、軌道に乗せて2002年に退職。期間限定でベンチャーの立ち上げに参画した後、2003年9月に企業理念の共有浸透を専門とするコンサルティング会社、ブライトサイド コーポレーション(正式名称ブライトサイド株式会社)を設立、現在に至る。
日本一のコピーライター集団「TCC(東京コピーライターズクラブ)」会員。
著書『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(PHP研究所)、『新スペシャリストになろう!』(PHP研究所、海外でも発売)、『行きたくなる会社のつくり方』(Nanaブックス)。
全国で講演多数/一般企業、経営者交流会、官公庁、都道府県などの自治体、学校。
ホームページ:http://www.brightside.co.jp/
■過去のコラム
「社長の話がわかりやすい会社は伸びる」
「武田斉紀の「企業理念は会社のマニフェスト」」
「武田斉紀の「よく生きるために働く」」
「武田斉紀の「行きたくなる会社のつくり方」」



このコラムについて

武田斉紀の「行きたくなる会社のつくり方」

あなたの会社では、個人と組織のいい関係が築けているでしょうか。21世紀の日本の多くの企業は、高待遇も終身雇用も用意するのが難しくなっています。
個人は高待遇、好条件で会社を選んだとしても、考え方や方針が合わないと、行きたくなくなるし、長続きしなくなる。逆に、何らかの「行きたくなる」さえあれば続けられます。
互いが「いい関係」を意識しないことには、会社の活力はどんどん失われます。では、「行きたくなる会社」をつくるには、個人と組織のいい関係」を築くには、どうすればよいのでしょうか。このコラムシリーズでは、その二つの答えを探していきます。

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