今回は、多くの読者が悩まされてきたであろう、また、現在も我が子の問題として悩みの種になっているかもしれない、悪名高き偏差値を取り上げてみる。
これまで、平均値と標準偏差を学び、それらを用いて色々な分析が出来る事を示したが、もう一つの応用が偏差値である。偏差値は一般用語として社会で用いられているにもかかわらず、一体それがなにを表すのかに関して理解している人は意外に少ないように思われる。その理由の一つが、このシリーズで繰り返し述べている、標準偏差の直感的理解の欠如からきているのだろう。
偏差値とは何か
まず、次のような状況を考えて見よう。全国的な学力テストで、数学と英語の全国の平均点が60点の時に貴方の点は両方とも50点であった。貴方のパフォーマンスは平均以下であることは明らかなのだが、同程度に悪いのだろうか。

Aの分布を数学の分布とし、Bの分布を英語の分布とした場合、相対的な貴方のパフォーマンスは英語と数学では雲泥の差がある。図1を見ると、Aの分布(数学)の場合、貴方の点より低い人がかなりいるのに対して、Bの分布(英語)の場合、貴方より点の低い人はあまりいない事が分かるであろう。この違いは標準偏差の違いから来るのである。思い出して頂きたいのだが、標準偏差は平均的なバラツキ度や平均的な中心からの距離を表している。この二つの分布による違いを数字的に表わそうとするのが、いわゆるZ値というものである。Z値を数式で表すと次のようになる。
| Z | = | X ー μ | (1) | |||||
| σ |
貴方の点をXとし、全体の平均点をμとすると、Z値は貴方の点が平均点からどの位はなれているかを、標準偏差の単位で表したものである。これを上記のBの分布、つまり英語の点の分布にあてはめてみると、次の計算のように貴方のZ値は−2ということになる(図2を参照)。
| Z | = | X ー μ | = | 50 ー 60 | = | ー 10 | = | ー 2 |
| σ | 5 | 5 |
マイナスという事は、貴方の点が平均以下であることを示している。そして2ということは平均から2単位の標準偏差が離れている事を表している。
この場合、正規分布の表から、Z値が−2の時は平均から貴方の点までの間に47.72%の人がいて、平均以上は50%の人がいるわけであるから、貴方の下には2.28%の人しかいない事になり、大変心配な結果になった。なお統計的には標準的な正規分布によっておおわれた面積は1とみなされるので、領域は小数点で表される。つまり、面積が確率と符合するようになっている。

ところが、英語の点の分布(図1でAの分布)では標準偏差が10なので、貴方の点50点は次の計算のように、
| Z | = | X ー μ | = | 50 ー 60 | = | ー 10 | = | ー 1 |
| σ | 10 | 10 |
となり、全体の平均値から1標準偏差離れているだけであり、正規分布表から、平均値と貴方の点との間には34.43%の人がおり、貴方以下の人は15.87%もおり、あまり極端に悪いわけではない事が分かる(図3を参照)。

以上のように平均点が同じでその上、平均点からの距離が同じ10点であっても、標準偏差の違いによって相対的パフォーマンスが非常に異なる事が分かる。
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