「御立尚資の帰ってきた「経営レンズ箱」」

意訳? アリストテレスの「論の進め方」

多面的なモノの見方を習慣づける

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2010年9月3日(金)

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「経営レンズ箱」はこちら(2006年6月29日〜2009年7月31日まで連載)

 毎年夏の終わりに参加させていただいている合宿勉強会がある。「古典」を媒介にした高度な知的交流の場であるアスペン研究所のスタイルに倣い、経済や経営と直接的には関わりのないリベラル・アーツ(教養科目)を、碩学の方々から教えていただくという、なかなか贅沢な機会だ。

 今年は「不確定性」をテーマにし、様々な分野からこの問題を考えるという仕立てだったのだが、その中で、「ニコマコス倫理学」を中心にアリストテレスを取り上げた講義があった。

 事前に何冊かの本を読んでから出席することが求められていたのだが、恥ずかしながら、アリストテレスの原典(もちろん翻訳ですが)は、正直手ごわすぎて、歯が立たなかった。勉強会での議論にも全くついていけなかったらどうしようか、と心配しながら、こわごわ出席した次第。

様々な視点・視座を列挙する

 ところが、『哲学の原風景』『哲学の饗宴』(NHKライブラリー)という一般向けの名著でも知られる荻野弘之上智大学教授の手にかかると、アリストテレスの著作が、すっきりと腑に落ちる(ように思えた、というのが正確なところ)。

 『哲学の饗宴』の中でも、

突進してきたイノシシに、オックスフォードの学生が読んでいたアリストテレスの本を突きつけたら、イノシシが頓死してしまった。

 というアリストテレスの難解さを伝える逸話が紹介されている。

 私にとっても、「ニコマコス倫理学」は、サンスクリット語のお経もかくや、と思えるほど難解極まりなく見えたのだが、講義を伺ってみると、すっきりと整理された読みやすい文章に思えてくるほどだったのには、正直びっくり(ちなみに、アリストテレスの「著作」とされるものは、彼の講義用の個人的覚書をもとに、弟子を中心とした人たちが、書籍として読んで分かるように欠落した部分を書き足したものなので、一般人にとっては読みにくくて当然とのこと。これを聞いて、少し安心しました)。

 さて、その講義の中で、アリストテレスの「論の進め方」の特徴のひとつとして、ある事柄について様々な視点・視座からの見方を列挙していくということが挙げられていた。あまりできの良くない生徒の理解なので、受け取り方がずれているかもしれないが、要は、可能な限り物事を多面的に見てみる、ということだろうかと思う。

 人間に関わる様々な事象は、自然科学の対象と異なり、論理とデータですべて分析・検証できるわけではない、と考える。あるいは、ソクラテスのように、議論のプロセスの中で相手側の論拠をいったん受け止め、「対話」を通じて一つひとつその正否を検証していく。こういう立場に立てば、多面的なモノの見方を常に自らに課すということは、現代の経営の場でもたいへん有効なことに違いない。

中国と日本の世代別所得を読み解く

 さて、勉強会を終え、日常業務に戻った後も、こんなことを反芻しながら考えるに至ったのには、ちょっとしたきっかけがある。

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著者プロフィール

御立 尚資(みたち・たかし)

御立 尚資

ボストン コンサルティング グループ日本代表。京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経て現在に至る。様々な業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A(合併・買収)などの戦略策定、実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを数多く手がけている。著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社、2003年)、『使う力』(PHP研究所、2006年)、『経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社、2009年)など。



このコラムについて

御立尚資の帰ってきた「経営レンズ箱」

コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。
「経営レンズ箱」】2006年6月29日〜2009年7月31日まで連載

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