家に帰るよりも、会社にいる方が楽。家庭のことを考えるよりも、仕事のことを考える方が楽しい。だって、会社にはとりあえず居場所があるけど、家にはないから……。
あなたはこんなふうに感じたことはないだろうか?
世間では、もっぱら「イクメン」「ワークライフバランス」「ノー残業デー」と、仕事だけの生き方を見直そうという動きが盛んなのに、どうにもそういう波に乗れない人。
「仕事にすべてを捧げるなんて格好悪い」「仕事だけの人生なんて気の毒」なんて言われたところで、仕事だけをやっていたいと願う人。
長時間労働とうつ病や過労死との関連が高かろうと、女性の社会進出に伴って共働きの家庭が増加していようと関係ない。
残業を好み、深夜まで会社に残って働く人々
「とにかく仕事をさせてくれ。一に仕事、二に仕事、三、四がなくて五に仕事!」と、仕事だけの人生を求めてしまう人がいる。
いわゆる、ワーカホリック。残業を好み、深夜まで会社に残って働く彼らは、疲弊するどころか、働けば働くほど元気になっていく。そんな彼らにとってワークライフバランスは“邪魔なもの”でしかない。
「なぜ、国や会社から帰宅命令を出されなくちゃいけないんですかね。会社で仕事をしている方が、楽だっていう人もいるってこと分かってほしいですね。僕は仕事が大好きです。だから仕事漬けになることがちっともイヤじゃありません。趣味もないし、仕事が趣味みたいなもんなんです。正直、ノー残業デーとか地獄。自由に働かせてほしいですよ。会社だって本当はその方が助かるはずです」
こう語るのは、中小企業に勤める48歳の男性、A氏。彼のように「家のことにはできるだけかかわりたくない。本当は仕事だけをやっていたい」と願っていたり、独身であっても「家に帰っても寝るだけだから、会社で夜遅くまで働きたい」と思っている“真性ワーカホリック”は意外に多い。
ワーカホリックという言葉を最初に世に提示したのは、米国の医師、ウェイン・オーツである。彼はワーカホリックについて、「働かなくてはいられない状態であり、生きていくためにさらに大量の仕事を要求する人(あるいは状態)」と定義した。日本では一般的に、「長時間労働を好むため残業時間が多く、職務満足度の高い人」を指すことが多い。
欧米では、ワーカホリックは侮辱的な表現として用いられることが多いが、日本では高度成長期に「ワーカホリック=仕事に一生懸命な人」と好意的に受け止められ、その価値観をいまだに引きずっている人が少なくない。
「残業で徹夜した」などと周囲に吹聴し、寝る間も惜しんで頑張っている自分が大好きな人で、残業時間の長さを競い合い、長ければ長いほど「よく働いているなぁ〜」と満足感に浸っていくのだ。
家に帰っても居場所がない
そんな“残業大好き”な彼らは、平日の夜に早々に家に戻ったところで、やることもなければ、妻や子どもたちと話す話題も見つからない。家には帰ってみたものの、そこには自分の居場所はもはやないことに気づかされる。その結果、ストレスの雨が会社ではなく、家庭に、しかも自分の頭上だけに降り注ぐのである。
前出のA氏は次のように続ける。
「仕事は論理的に考えれば、何とかまとまります。うまくいかないこともあるけど、解決策はある程度の効果が出るし、期待したような結果も見える。だから、やりがいもある」
「でも、家庭はそういうわけにはいかない。家庭は解決できないことばかりです。問題は山積。子どもは突然、学校に行かなくなるし、女房は文句しか言わないし。それに、会社もひどいですよ。つい最近まで、仕事一辺倒の働き方をさせてきたのに、今さら『家庭を大切に!』なんて言われたところで、失った10年はどうやったって戻ってこない」
この男性はワーカホリックだったから、家庭に居場所をなくしてしまったのか? それとも、家庭に居場所がないから、ワーカホリックになってしまったのか?
いずれにしても、残業に快感を覚えるワーカホリックにとって残業ができないことは、大好物の食べ物を取り上げられたようなもの。しかも、その代わりに「これをお食べ」と差し出されたデザートは、辛くて、しょっぱくて、口に入れることすらできないものだった。
そこで今回は、好んで残業し、かつ職務満足度も高い“ワーカホリック”について、考えてみようと思う。
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博士(Ph.D.、保健学)・東京大学非常勤講師・気象予報士。千葉県生まれ。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。主な著書に『「なりたい自分」に変わる9:1の法則』(東洋経済新報社)、『上司の前で泣く女』『私が絶望しない理由』(ともにプレジデント社)、『







